あなたのお気に入りの飲食店が「閉業」に追い込まれようとしている。行きつけの定食屋も、息抜きで行くカフェも、家族で行く焼き肉屋も、このまま外出自粛が続けば もう2度と行くことができなくなるかもしれない。原因はもちろん、憎き新型コロナウイルスにある。

この緊急事態に飲食店は「お持ち帰り」や「デリバリー」などのサービスを模索している。私もそういうサービスを利用して好きな店を守りたい・支援したい気持ちは山々なのだが、いかんせん近所の店でないと支援しにくい──というのが現実だ。

そんななか、ある人気ラーメン店がインターネットで購入できる「前売り食事券」の販売を開始した。これはナイスアイデアではないか……!?

インターネットを介した「前売り食事券」の販売に乗り出したのは、東京と神奈川県に店舗を持つラーメン屋『麺匠 八雲』。当サイトでも取材したことがある人気店なので、興味のある読者はそちらの記事をごらんいただくとして……

さっそく、同店の「前売り食事券」が販売されている特設ページへアクセスしてみると、2000円分(販売価格:1800円)、5000円分(4400円)、10000円分(8600円)のものが選べるようになっている。

それぞれ200~1400円分お得となり、使用期限もない。さらには「ご支援」というボタンから、文字通りお店に支援金を送ることもできるようだ。


このシステムを見て私は「……これだ!」と膝を打った。


・これは「ナイスアイデア」

飲食店側の目線に立つと、「食事券を売り上げればお金が入る → 家賃や人件費が支払える → 閉店に追い込まれない(持ちこたえられる)」 ……ということになる。

客側の目線に立てば、「食事券を購入する → 好きなお店が閉店から免れる(可能性が高まる) → 新型コロナが収まったら お店で食事券を使う → おいしい」 ……ということに。


 

誰も損していないし、むしろ得している!

経済も少なからず回っている!

まさにWin-Win……いや、Win-Win-Winではないか!


 

自分でも「常連」と名乗れるような懇意のお店があれば、食事券を買わずとも「支援金」だけ送るのもアリだろう。「これだ! このシステムなら自分のお気に入りのお店が守れる!」と目からウロコが落ちた次第だ。

ちなみに同店が前売り食事券を販売する特設ページは「BASE(ベイス)」という誰でも簡単にネットショップを作成できるサービスを利用しているとのこと。お店が負担する手数料もほんのわずからしいので、存続が危ぶまれている飲食店には是非とも導入を検討してほしい。


・店主に聞いた「前売り食事券」を導入したワケ

強調しておくが、お持ち帰りや配送サービスに取り組んでいる飲食店を否定しているわけではないし、むしろ応援している。どんな状況でも、どんな形でも、お客に求められた料理を提供する姿勢は飲食業として尊いとすら思う。

が、前述したように自宅と店が離れていると、客としては利用しにくいというのが難点。『麺匠 八雲』の梅澤店主によると、経営者としてはその他のデメリットも頭に浮かんだという。

梅澤店主「お持ち帰りと配送には「容器」や「袋入りの箸」などが必要ですが、衛生面を考えると「袋入りのおしぼり」も必須で、原価がかさみます。しかもロットがあるので最低数で購入したとしても原価消化までの売上を上げなければ利益も出ない。

そこまで準備しても、”買いに来ていただける方は、せいぜい2km範囲ぐらいかな” とも考えたりしました。そうした中でネットやSNSが主流になっている世の中でまずできる事、そしてお客様と店がwin-winの関係になれる事として考えたのが、ネットでの前売り券の販売でした。

ただ、現状(感染拡大にともなう外出自粛)が長期化すると判断した場合は「お持ち帰り」と「通販」の対応も視野に入れています」

──ご自身のSNSで、前売り食事券による今月(4月)の売り上げは「80万円」を目指しているとしていますが、その理由は?

梅澤店主「新型コロナウイルスの影響により売上が大きく下がった中で、自分の給料は取れなくても従業員の給料は必ず確保したい。その最低限である金額として80万円という売上目標を設定しました。目標額に達し次第、今月分の「前売り食事券」の販売を一旦停止します」


・苦渋の決断で今も営業中

本日4月10日、東京の小池都知事は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため休業を要請する事業者を正式に発表。対象事業者にラーメン店は含まれていないものの、多くの同業者が続々と休業 / 時短営業を決断している。

梅澤店主「正直、国からの援助や補償があればすぐにでも自粛要請に従い、休業したいのが本音。ですが、大きな蓄えがあるわけではなく、休んでは店も資金的に底をつき閉店せざるをえなくなるため、現在は店を維持するために辛くも営業をしている状況です。

感染予防の対策としては1時間ごとに扉の取手やテーブルの除菌消毒をしているほか、店内の換気などもしています。スタッフについてもマスク着用・手洗い・出勤前の検温などを徹底しています」

・飲食店を応援

休業、時短営業、お持ち帰り、配送……。飲食店側からしたら どの手段をとってもリスクやコストがかかり、もはや何が正解かわからない状況だろう。そんななかでも「前売り食事券」は “正解” とは言わないが、比較的に客がお店を応援しやすい形ではないかと、いち消費者として思う。

「あの店、また行きたいな。コロナが収束したら絶対にまた行くし、どうせその後もまた行きまくるから、今のうちにちょっと前払いしてもいいな」

──そんな風に思うお店、誰にも1つや2つはあるハズだ。(食いしん坊な私は、両手で収まりきらないほどある)。「前売り食事券」を販売する飲食店が今後 増えることに期待したい。

参照元:麺匠八雲 期間限定ウェブショップ、Twitter @YAGUMO_RAMEN
Report:ショーン
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]