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「人間工学キーボード」を疑っている素人が 、独特すぎる “マイクロソフト社製” を初体験してみた

2020年3月8日

人間工学。筆者のような知識のない素人にとって、この言葉が持つ「何やらすごそう」感は途方もない。「人間工学に基づいた商品」などと言われようものなら、及びもつかぬ頭脳の持ち主によって想像もつかぬ創意が凝らされているのだろうと戦慄せずにはいられない。

しかしその一方で、一抹の疑念も捨てきれずにいる。例えばPC用の製品である「人間工学キーボード」だ。通常のものとは違い、キーが波打つように配置されていたりする独特なキーボード群。取っつきづらさが尋常ではない。あれらは本当に使いやすいのだろうか。

そんな人間工学へのアンビバレントな気持ちを抱える筆者の目に、つい先日、衝撃的な商品が飛び込んできた。

それがこちら、マイクロソフト社製の人間工学キーボード「Sculpt Ergonomic Keyboard for Business」である。Amazonのキーボードランキングにおいてあまりに異彩を放っていたため、怖いもの見たさならぬ怖いキーボード触りたさで反射的に買ってしまった。

何せデザインがひときわ独特なのである。普段使っている通常のキーボードが、変哲のない直線的な設計であるのに対し……

こちらの人間工学キーボードはキーの配置が曲線的に波打っているのに加え……

キーボード自体もまるで尾根のように山なりに隆起している

極めつけに、キーボード中央付近に入っている謎の裂け目である。今のところ「マイクロソフト、絶対に遊んでないか?」と思わざるを得ない。

裂け目周辺のキーがやたら大きかったりもしているし、人間工学キーボードをよく知っている人にとっては普通の商品なのかもしれないが、素人からすると変哲レベルが異常値に達している。使いやすいようにも、身体への負担が少ないようにも見えにくい。

ちなみに公式サイト記載のキーボードサイズは長さ392mm×幅228mm価格はAmazonで6209円となっている(2020年3月6日現在、ワイヤレステンキー含む)。この辺りは通常のキーボードと比べても大きくかけ離れてはいないものの、総合的な奇抜さはやはり拭えない。

眺めているだけで所有感は変な風に満たされているが、買ったからには使いたい。というわけで、当初の予定通り使い心地を確かめてみることにした。

キーボードの裏にあるフタを外し、USBアダプタを取り出す。これをPC側に差せば、無線接続が可能になる。

準備はあっという間に整った。あとは文字を試し打ちするだけだ。はてさて、一体どんな使用感をもたらしてくれるのか。そんな軽い調子でキーボードに指を置いたところ、その瞬間、違和感が走った。

それは快い違和感だった。楽なのである。本当に、キーボードに指を置いただけで気付かされた。劇的とまでは言わないが、手や手首、肩への負担が通常より明らかに少ないことに。見た目だけで判断していた自分の認識は誤りにすぎなかったことに。

何故こんなにも快適なのか。キーを打ち込み始めると、段々と「楽さ」を生む要素が浮かび上がってきた。

まず要となっているのは、曲線的なキー配置だ。この設計のおかげで、キーボードに接する手は自然と「ハ」の字型になる。すると肩が縮こまらずに開き、力を抜いてリラックスした状態でタイピングに臨めるのだ。

さらにはキーボード自体の隆起がすさまじく良い仕事をしている。使う前まではむしろそのせいで疲れそうにすら見えたが、実際には手や手首に寄り添うように吸いつき、上手くそれらを支えてくれる

筋肉の緊張が普段より和らいでいるのを感じるし、手前部分のクッション性のあるパームレストも手伝って、キーボードに寄りかかるような心地で打ち込める。ほとんど手を投げ出しているような感覚だ。

今となっては、裂け目周辺のキーが大きいことにも頷ける。手が隆起の頂点に近づくほど負担が増してしまうため、そうさせないようにキーサイズを大きく取ってあるのだろう。隆起の頂点にキーが存在しないのも同様の理由と思われる。

人間工学以前に、キータッチの軽さや静音性の高さといった基礎的な部分を押さえてくれているのも嬉しい。使うほどに発見のあるキーボードだ。

ただ、もちろん欠点もある。前述の通り、キー配置が全体的に波打っていたり中央付近で間隔が空いていたりと独特であるため、慣れるまでタイプミスは避けづらい。通常のキーボードと比べると、どうしてもクセは否めない。

また細かい部分ではあるが、Enterキーが若干小さめであったり……

ファンクションキーがボタンのような感触をしていて、微妙に硬かったりする点も気になった。

とはいえ、それらの欠点は致命的とまでは感じなかったし、欠点を上回る快適さがこのキーボードには詰まっていると思う。これほどの使い心地とは本当に想像だにしなかった。人間工学に謝らなくてはいけない。

最後にあえて付け加えるなら、裂け目が入っている理由はついに謎のままだった。単なる地続きのスペースでもよかったのではないか。マイクロソフト、ここに関しては絶対に遊んでる。

ともあれ、結論としては十分にお勧めできる仕上がりとなっている一品だ。常用するのではなく、身体の調子が悪い時だけキーボードをこれに変えるといった使い方もアリだと思うので、多くの方に気軽に触れてみてほしい。

「何やらすごそう」ではなく、「確かにすごい」。筆者の脳裏にはそんな実感が打ち込まれ、新たに保存されている。

参照元:マイクロソフト「Sculpt Ergonomic Keyboard For Business」Amazon
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

▼キーボードにはワイヤレステンキーが付属している。独立しているのが結構使いやすい

▼キーボードの高さ調節用のアタッチメントも付属している

▼パームレストの下にはめ込むと、だいぶ高さが増す。筆者はアタッチメント無しの方が使いやすかった

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