普通車かキャンピングカーかを問わず、車中泊は最高に楽しい。その日の気分で自由に行き先を決めて、旅先の非日常感の中で「明日は何しよう」とわくわくしながら眠る。そんな車中泊の目的地として、真っ先に選ばれるのは道の駅だろう。日本RV協会が2019年に行ったアンケートでも、回答者の59.8%が道の駅、続いて12.5%が高速道路のSA / PAを車中泊地として挙げた。

予約もチェックインも要らず、24時間利用可能な清潔なトイレがあり、誰でも無料で滞在できるなど道の駅のメリットは多い。しかし実は、道の駅での車中泊は公式には認められていない


「『道の駅』は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。もちろん、『道の駅』は、ドライバーなど皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設であるので、施設で仮眠していただくことはかまいません」


というのが国土交通省の見解で、つまり「仮眠はOK、宿泊はNG」と解釈できるだろう。ただし仮眠できる時間帯や最長時間などは明示されていないことから、「宿泊との線引き」はかなりグレーだ。

「仮眠とは○時間まで」と定義を決めてしまえば早いのだが、早朝から朝市などで満車になる人気の道の駅から、広大な駐車場を有する地方の道の駅まで事情は様々なので、柔軟な運用ができるようになっているのは大人の対応だと筆者は思う。

ゆえに「レストランや売店を必ず利用する」「施設がオープンする前に早朝出発する」「あえて第二駐車場に停める」など自分なりのルールを決めて利用している車中泊ファンも多いが、中には当然の権利であるかのように駐車スペースを占有したり、トイレで炊事したりという人もいるのが現状のようだ。

こういった状況を憂慮し、有料であっても許可された場所で堂々と車中泊をしたい、というニーズに応えるのが「RVパーク」だ。


・どんな施設?

日本RV協会が定める条件を満たした施設で、北海道から沖縄まで146件(2020年1月19日現在)ある。利用資格は特になく、協会員でなくてもいいし、普通車でもキャンピングカーでも利用できる。施設の認定条件は以下の6つ。

1. ゆったりとした駐車スペースで、一週間くらいの滞在が可能
2. 24時間利用が可能なトイレ
3. 100V電源が使用可能
4. 入浴施設が近隣にあることが望ましい
5. ゴミ処理が可能
6. 入退場制限が緩やか、予約が必須ではないこと

道の駅を選ぶ理由、例えば予約が要らず、トイレがあり、自由に入退場できる点などとかなり重なっていることがわかる。さらに道の駅では敬遠される長期滞在をあらかじめ想定しており、電源使用やゴミ処理ができるなどユーザーの利便性を高めている。

最近では「RVパーク 道の駅○○」と道の駅の駐車場の一角をRVパークにするところも増えているようだ。道の駅に無料で停められるのにわざわざお金を払うの? と疑問に思うかもしれないが、許可された場所を確保できる安心感は大きく、筆者としては大歓迎だ。


・料金は? 使い方は?

上記の認定条件は目安のようなもので、実際の運用状況は各施設によってかなり幅がある。料金も一律ではなく、なんと無料から5000円程度まで様々。筆者の見たところ、多いのは1台につき1泊2000〜2500円といったところだ。電源使用料やゴミ処理料は別料金のところもある。立地条件は多種多様で、海だったり山だったり温泉施設だったり都市部のマンション脇だったりといろいろなパターンがあって楽しい。

予約が必須ではない、というのはホテルのように何日も前から予定を立てておかなくてもよい、という程度の意味で、好きな時に自由に使えるわけではないので注意。当日であっても予定が決まったらすぐに施設に連絡を入れ、到着時刻を知らせることが望ましいだろう。ほとんどの施設は電話でのみ予約や問い合わせに応じている。

チェックイン可能時間は管理している施設(例えば道の駅)の営業時間に準じる。宿泊施設が運営している場合はフロントマンが常駐していて、夜遅くても利用できることがある。

多くの場合、到着したら料金を支払い、利用方法についての説明を受ける。チェックアウトは不要なところもあるが、指示に応じて電源ボックスの鍵や、利用証を返却するケースもある。

運営している施設によっては入浴できたり、レストランを使えたり、アクティビティに参加できたりと、意外な恩恵が受けられるところもある。例えば千葉県の「RVパーク七里川」では隣接する「七里川温泉」(RVパークとは別施設)で炉端焼きを楽しむことができた。


・注意点

RVパークはあくまで駐車場としての位置づけなので、キャンプ場のように野営することはできない。例えば車外で調理をしたり、ペットを放したり、排水を流したりといった行為は禁止だ。アウトドアを楽しみたければオートキャンプ場を利用しよう。

……と言ってもこれも幅があり、例えば「RVパーク スパ泉ヶ岳」では広大な駐車場にウッドデッキがあり、テーブルやイスを広げることができる。仙台市郊外なので夜になると満点の星空が楽しめた。「RVパーク京都南 鴨川RVサイト」のようにダンプステーション完備で汚水の処理ができるところもあるので、調べてみるといろいろな発見がある。


・JAFの会員優待施設にも仲間入り

2019年12月からはJAFの会員優待施設に一部のRVパークが加わったという。140を超えるRVパークのうち対象は24施設とまだ少ないが、今後に期待したい。

道の駅での車中泊にはいろいろな立場、意見があり、明確に「車中泊禁止」を宣言する道の駅もあると聞く。現在の国土交通省の見解には、おそらく「管理者の判断による」というグレーゾーンが含まれており、迷惑行為が横行すれば禁止の方向に傾いていくだろうし、お互いを気遣って利用できれば、車中泊が賑わい創出の一助となることもあるだろう。

相手の立場になって考える、譲り合うなど、社会に生きる人間としての基本を守ってさえいれば、車中泊をする人もしない人も気持ちよく過ごせるはずだ。


参考リンク:くるま旅クラブ「RVパーク」、国土交通省「道の相談室」JAFナビ、日本RV協会「協会ニュース」
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.