ヨーロッパ主要国のスーパーを巡ってみて、「ここの人たちはインスタント麺をあまり食べないのだな」と感じた。インスタント麺コーナーがあるにはあるのだが、大体は2〜3種類が細々と陳列されているのみである。

試しに食べてみると……それは「空腹を満たすためのもの」であるとしか言いようのない内容だ。コンソメを溶かした程度のスープにボソボソの麺が浮かんでおり、具はなし。涙が出るほど味気ない。アジアのインスタント麺がどれほどハイクオリティかを思い知る出来事だった。

そんなある日、パリのスーパーで見慣れたシルエットを発見。日清のエース・カップヌードルである! 食べたことのない味のようだが、まぁカップヌードルなら間違いあるまい。購入し持ち帰った。しかしパッケージをよく見ると、そこには思わず二度見する表記が……。

・そうだっけ?

パッケージにはフランス語で『Nouilles Japonaises』と書かれている。『Nouilles』は『麺』なのでズバリ『日本のヌードル』という意味で間違いはないはず。その下には『PIRIKARA』との表記もあり、ピリ辛味であることがうかがえる。

日本で『ピリ辛味』といえば、和風よりもどちらかというと中華やコリアン風のイメージだ。ここで唯一売られていた『日本のヌードル』が『ピリ辛』とは、少し不思議な気もするな〜。とか考えながら容器側面に目をやると、そこに書かれていたのは……



『No1 des VENTES au JAPON(日本売上ナンバーワン)』


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……そうだっけ?


・確かにピリカラ

「日本でピリ辛味のカップヌードルが爆売れしていることを自分だけが知らない」という可能性に恐怖を感じつつ、とりあえず湯を入れてみることにした。

3分待つルールは日本と同じのようだ。

麺全体が唐辛子色のパウダーで覆われており、見るからに辛そうである。具は唐辛子かな?

スープを飲んでみると……うん、確かに「ピリ辛」だ。しかし、日本では一般的にもう少し辛いものを「ピリ辛」と呼ぶ気がする。これは本当にごくわずかな「ピリ」が、「言われてみれば確かにある」といった程度。

味は日本の『スタンダードカップヌードル』に近い。それならば「ピリ」よりも肉や卵の入っているほうが、個人的にはお得感があるように感じるけれど、もしかするとベジタリアンへの配慮とかがあるのかも?

唐辛子かと思われた具の正体はパプリカのようだ。

すごく唐辛子っぽく見えるけど、やっぱりパプリカ。


・きっとNo1なのだろう

『カップヌードル ピリカラ味』を調べてみると、少なくとも現在は日本で広く販売されていない様子。過去に発売されていたという情報も掴むことはできなかったが……そういう過去がなかったとも、爆売れしなかったとも言い切ることはできない。

また別の可能性として「カップヌードルというものは日本で売上No1ですよ」といった、広い意味で書かれているということもありえる。日本での売上1位は『スタンダード味』らしいが、本家の日清が「パリでは『ピリカラ』で勝負しよう」という戦略を立てたのだから、勝算があったに違いないのだ。

はたまたもう1つの可能性としては「心のNo1」である。パッケージを直訳すると「売上No1」だが、フランス人が読めばもっと深い意味が隠されているということも……? 現にカップにはカップヌードルの生みの親である「安藤百福」の紹介文と似顔絵がプリントされており、 “日本文化を知るための商品” という側面も持ち合わせている。

パッケージの文章をGoogle翻訳のカメラ機能で翻訳してみると、「日本語の『ピリカラ』とは」という説明がある。「ピリカラ」ってよく考えると、なんだか可愛い響きの言葉だ。すでに日本の文化となりつつある「ピリカラ」に、外国の人は興味があるということかもしれない。


……ともかく何らかのランキングで間違いなく「日本売上No1」の『カップヌードル ピリカラ味』である。パリに行ったらぜひ探してみてほしい!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.