我慢。今回紹介するテクニックに必要なのはそれだ。「今すぐ食べたい」という欲求に耐えて、耐えて、耐え続けなくちゃいけない。初めてだと、これがキツイ。容器から漏れ出る牛丼の匂いに、理性が破壊されそうなこともあるだろう。何のための放置かと疑うこともあるだろう。冷め切ったらどうしようと不安になることもあるだろう。

だが、それらの誘惑や疑いに打ち勝てば……牛丼がいつもと違う顔を見せてくれる。その顔は実にクールで、味わい深い。つまるところ、ちょっと冷めているが、味が染み込んでいる。それをひと口頬張ったら、「耐えるだけの価値があった」という思いで胸がいっぱいになるはずだ。

「そんなことない。牛丼にしろ何にしろ、出来たてが一番うまいに決まっている!」と思う人だっているに違いない。その意見は否定しないが、牛丼弁当の場合はしばらく放置すると、タレがシミシミになって最高なのである。

──と、つい知ったような顔をして語ってしまったが、実は私もこのテクニックを知ったのはごく最近。30年ほど牛丼を食っているにもかかわらず、今までずっと知らなかった。


・吉野家の中の人が教えてくれた

きっかけは、吉野家の中の人。私が「中の人がお気に入りのアレンジを教えて」と質問したところ、答えてくれたのだ。本人の許可をいただいたので、メールを一部紹介すると……

「つゆの染み込んだ、ちょっと冷めた牛丼が美味いという社員も多い。あとは、若手では、家にあるラー油・マヨネーズ派・ブラックペッパーなども」


これを読んだ翌日、私は吉野家に走った。それ以降、持ち帰りの牛丼弁当をしばらく放置することは私の習慣となり、『ちょい寝かせ牛丼』とまで呼ぶようになった。そして今では、『ちょい寝かせ牛丼』は私のランチルーティーンの重要な一角を担うまでになっている。

・アレンジについて

また、メールに記載されていた「ラー油・マヨネーズ派・ブラックペッパー」も、もちろん試した。

感想は、「想像通りの味」といったところだろうか。個人的には、ラー油とブラックペッパーはアリだが、マヨネーズはジャンクすぎて合わなかった。まぁ、このあたりは好みによるかと思う。


・放置時間について

それから重要なのが放置時間である。吉野家では、牛丼弁当の消費期限を2時間としているので、それ以上寝かせるのは賢明ではない。では具体的に何分程度がいいのか? 私の意見を言わせてもらうと、今の季節で常温に放置するなら1時間前後がベストな気がする。ただし、放置する部屋の温度や湿度、季節などによって変わってくるから一概には言えない。

お察しの通り、放置しすぎたらマズくなってしまうし、早すぎたら普通に食べるのと変わらない。このあたりのさじ加減が難しいところで、私の場合は容器に手を当てて、牛丼と会話をするようにしている。いつも大体こんな感じだ。


もういいかい?


まぁだだよ。


もういいかい?


まぁだだよ。


もういいかい?


まぁだ……



いただきます!


結論。冒頭に書いた通り、我慢が大事。そしてこれが本当に難しい……。


参考リンク:吉野家
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

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