刺身を食べたい日、というのがある。それもわりと頻繁に。値引きのタイミングに当たればいいが、当たらなくても買うしかない。なぜならどうしても食べたいから。お腹いっぱいほしいけど、刺身は高いからな。1匹買ってさばけば割安なのは分かるけど……めんどくさいし、手が汚れるしサ……。


とか言ってられるのは今のうちである。シーズンなのだろう、最近スーパーでハマチが山積みされていることには感づいていた。それにしてもエッライ安いので、私はてっきり煮物用と思い込んでいたのだ。それがよくよく聞くと「刺身用」で、同じ魚を刺身にしたものも売られているというではないか。

この日売られていたハマチが1匹322円(税込)。セール特価ではない。地域差もあるだろうが、私の実家近くにあるスーパーでは最近これくらいが相場である。そのあと刺身コーナーへ行ってみると……同じハマチのちっちゃい刺身パックが……なんと429円(税込)!! 全体よりも一部のほうが高い! そ、そんな話ってあんのか!?

・さっそく検証

売り場の人に確認すると、1匹売りのハマチと刺身パックのハマチは「間違いなく一緒に仕入れた魚だ」とのこと。我々が普段購入している刺身は、一体いくらの加工代が上乗せされているというのだろう? 恐ろしい気もするが、気になったので両方購入してみることにした。

ハマチをさばくのは主婦歴40年の我が母だ。誤解のないよう言っておくと、私は魚をさばけないわけではない。しかし母は港町の生まれで魚の扱いに慣れているのだ。今回は『検証』だから誤差は1グラムでも少ないほうがいいでしょ? というワケなのであって、決して私は魚をさばけないことはないのである。


母のさばいた刺身とパックの刺身を並べると、一目でかなりの重量差があるのが分かる。



・数字で検証

刺身パックのハマチを計量器に乗せてみると、その重さは91グラム


それに対して丸ごとさばいたハマチは……



圧倒的351グラム!


この時点でパックのハマチと比べて4倍の量である。そのうえ、元々の金額差があるのだ。パックのほうが91グラムで429円、丸ごとが351グラムで322円。ということは計算すると……えーと……。

100グラムあたり471円(パック)と92円(丸ごと)で、金額差5倍以上という結果に! さらにそれだけじゃない……!

身のタップリついた「アラ」でダシをとったお味噌汁まで付いてくるっ……!


今回の検証でステーキ肉なみの金額だということが判明したパックの刺身。庶民の味方たるハマチでこの有様なのだから、タイやヒラメだと一体どんな金額になるのか……考えただけでフトコロが凍えてきそうだ。

さらに分かりやすい数値をいえば、ハマチ1匹分の「刺身」を購入するためには1655円かかるという計算になる。つまりハマチを丸ごと購入することで生まれる利益は1333円。もちろん、刺身パックには容器代やらツマの代金などが乗っているから、厳密にそうなるわけではない。

しかし今回、あえてそれらを無視し、さばく作業の時給を計算してみよう。多少不器用でもハマチ1匹さばくのに20分もあれば十分なはず。ってことは、時給は……なんと3999円! 激アツバイトじゃねぇか!


仕事で疲れた帰り道。今から魚をさばくのは正直めんどくさい。しかし今回導き出された金額を考えると、これは「めんどくさい」で済む次元を超えているのではないだろうか?


・イカでも検証

ハマチの件はもしかするとこの店に限った話かもしれないので、別のスーパーへも出向いてみた。今度はこれまた今が旬の白イカを、1パイ(税込610円)と刺身のパック(税込430円)でそれぞれ購入。イカをさばくのは魚より簡単だ。


パックのイカを計量すると36グラム。


1パイからとれた刺身は201グラム。これはつまり……100グラムあたり1190円(パック)と303円(丸ごと)で、やはり約4倍の金額差。そしてハマチの安さが浮き彫りとなる結果に。


・慣れるしかない

「20分もあれば億を稼げる」という人もいるかと思うので、こればっかりは個人の価値観である。それでもやっぱりめんどくさい……と思うならパックの刺身を購入すればいいだろう。しかし「ただなんとなくパックを買っていました」という人は、ここから1匹買いに慣れていってみてはどうか。


魚の国ニッポン。この先の人生で我々は何キロもの刺身を購入することだろう。自分でさばくことが習慣づいてしまえば、将来の貯蓄額が変わってくるはずだ。

あと、やっぱり家でさばいたほうがおいしいね!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼翌日別のスーパーで同サイズのハマチが214円で売られているのを発見