高級魚として知られるのどぐろ。脂の乗った身はジューシーかつ旨みが強く、舌にトロける食感は人呼んで「白身のトロ」である。そんなのどぐろの缶詰が売られていたため買って食べてみたところ……


缶詰の中で革命が起きていた。

・のどぐろ様が缶詰界に

貧乏1人暮らしが長かった私(中澤)は、何度缶詰に命を救われたことか知れない。幻の高級魚・のどぐろ様がそんな庶民の嗜みに参加してあそばせるなんて。その寛大なるお心が素敵ですわ!

というわけで、買ってみたわけだ。その缶詰とは『のどぐろ大根煮』。税込537円である

・さすがのどぐろ

缶詰としては高級な部類に入る価格はさすがのどぐろだ。缶詰になってもやはり魚界の貴族。おそらく、大根は水増し要員で入れられているのだろう。貴族を支える農民といったところか。さっそく缶詰を開けてみたところ……


ほとんど大根やないかーーーーーーーい

のどぐろは小さい身が3切れ入っている程度で、大根は輪切りのが1個ドーンと缶詰の半分以上を埋め尽くしている。150gの内容量は恐ろしいほどに大根が支えていた。働くなあ~大根。中世フランス並みのヒエラルキーを感じる

・食べてみた

それはさて置き、のどぐろを食べてみよう。大根がどれだけ頑張っているところで、のどぐろ様がいなければ537円という値段はつかないのである。言わばこの缶詰の主役! その味やいかに? パクリ。

ちょっとパサついてる。煮つけてある出汁はコクがありウマイが、身はジューシーさに欠ける味がした。やっぱりのどぐろと言えど、缶詰と新鮮なものは違うのだろう。まあ、のどぐろ様の顔を見られただけで満足という感じだ。


そう思いながら、ふと大根をかじってみたところ……


お前……


のどぐろよりウマイやないか……!

コクのある出汁が染みわたり噛むとじゅんわりと旨みがあふれ出す大根。その旨みは先ほど食べたのどぐろの比ではない。ウンメェェェエエエ!!

・革命の物語

この缶詰において、誰がどう見ても脇役である大根。のどぐろに比べたら、どこにでもある平凡な存在だ。しかし、そんな大根は少しずつ少しずつ旨みを増しながら、缶詰の中で食べてもらえるのを待っていたのかもしれない。そして、その旨さで今、ついに生まれながらの貴族・のどぐろを倒したのである。

当初は、少し期待外れかとも思ったこの缶詰。だが、その中には革命の物語が詰まっていた。そう考えると、537円はむしろ安いのではないだろうか。缶詰はただの保存食ではない。そこにはそれぞれの物語が詰まっている。そんなことを教えてくれた井上商店(販売会社)に最大限の敬意を。

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.