太陽の下、会場を埋め尽くす人・人・人……夏フェスはバンドマンにとって憧れのステージだ。ライブハウスで12年ほど活動してきた私(中澤)にとってもそれは例外ではない。実を言うと超出たいんだ。夏フェス。

しかし、そう簡単に出られるものでもないのが現実。それは12年活動してきて1度もそのステージに立てていないという私のバンド人生が物語っていると思う。そもそも、ある程度売れてないと誘いなんてこないし、歳をとるごとに遠くなる。

そんな夢の舞台・夏フェスに出演することになったのでお伝えしたいマジかよ……! 自分でも信じらねェェェエエエ!!

・4大夏フェスオーディション制覇

2019年、夏フェスに出たくて仕方がなかった私。自分のバンド『フリサト』で夏フェスのオーディションに応募しまくってみた

フジロックの『ROOKIE A GOGO』をはじめ、サマソニの『出れんの!? サマソニ』やロックインジャパンの『ROJACK』、ライジングサンの『RISING STAR 2019』と、有名夏フェスを制覇。若手が集まる激戦区へダメ元での参戦だったのだが……

やっぱりダメだった。この4つの夏フェスでは、音源審査すら通過することはできなかったのである。くぅ~甘くないっす。

選ばれた人たちは、無謀にも挑戦し激しく散っていったオッサンの分も会場を盛り上げていただければと思う。まあ、私なんぞに言われるまでもなくそうするだろうが。

・車の中で

ミラクルが起こったのはフリサトが散った後。リハ終わりに、ドラムを担当している今井貴雅の車に乗せてもらい2人で帰っていた時のことである。何気なく以下のような会話になった。

「そう言えば、最近『si,irene(シーアイリーン)』ってどんな感じなん?」


──『si,irene』は今井がドラムをしている別バンドだ。売れてるかどうかで言うとフリサトと同じくらいだが、ボーカルとギターが外国人で、洋楽っぽいコードやビートに英詞が乗り日本のバンドっぽくない色がある。活動も海外が多く、次のライブはイギリスというのを聞いていたのでちょっと気になっていた。

今井貴雅「今度レコーディングするよ! ただ、ギタリスト抜けるけどな」


「え!? イギリスどうすんの?」


今井貴雅「どうしようかねえ……今考えてる。弾く?」


「え! 誘いが雑」


今井貴雅「いや、ちょっとメンバーに聞いてみな分からんけども」


──近所のコンビニに行くくらいのノリでイギリスに誘ってくるのが今井貴雅という男である。とは言え、ミュージシャンとしてはイギリスでライブしてみたい。なんと言ってもロックが生まれた国だ。これを逃すともうチャンスはないかもしれない。

・イギリス行くだけかと思いきや

というわけで、翌日今井にガチめのノリで「弾くで!」とラインを送ったところ、ふわっとイギリスライブに参加することになった。まあ、きっとそんなに大きなライブハウスではないだろうし大丈夫だろ。誘いも雑だし。

……と思いきや! このイギリスのライブというのが、UKバンド「ザ・ウェディング・プレゼント」が主催して今年10年目になるというフェスだったのである!! その名も『AT THE EDGE OF THE SEA』。開催場所はブライトンで2019年8月10日出演! 夏フェスキタァァァアアア!!

ある意味、フジロックやサマソニのオーディションに受かるよりとんでもないことになってしまった……。どんな場所なのかなどの細かい情報は一切不明だが、チケットはすでにソールドアウトしている模様。

・ミュージシャンはどう生きるか

日本で音楽をやる上で、メジャーデビューや夏フェスに出ることは、ある意味とても分かりやすい目標と言える。だが、それは裏を返せば、型にハマったものを求めがちな結構受け皿の狭い世界だ

そして現在、その狭い枠の椅子取りゲームに勝利しても食っていけないという現実がある。ならば、ミュージシャンはどう生きるべきなのか? その問の答えは人それぞれだろうが、ミュージシャンが真価を問われている時代だと思う。

それはさて置き、ただでさえ緊張する初加入ライブが海外のフェスとかどこの大物バンドだよ。ガンズ・アンド・ローゼズのギルビー・クラークの気持ちが少しだけわかった気がする。

ちなみに、8月13日にもロンドンのライブハウス『Shacklewell Arms』でライブを行うため、気になる方はぜひ。なお、こちらもどんな場所なのかは一切分からないが、ロケットニュース24で培った突撃精神でイギリスに爪痕を残してこようと思う。

参照元:AT THE EDGE OF THE SEASHACKLEWELL ARMS
執筆:中澤星児
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▼si,irene『awful pop song(Official Video)』