鉄道大国・日本。「乗り鉄」「撮り鉄」という言葉があるように、鉄道は交通手段であると同時に一種のカルチャーでもある。退役する車両のラストランにファンが集まる光景などは、さながらスポーツ選手の引退試合のようだ。

そして個性的な車両がたくさんある一方で、個性豊かな「駅」も数多く存在する。ほとんど利用客がいない駅、大自然のなかにポツンと佇む駅、レトロな風景を残す駅……。そんなちょっとユニークな駅で、ぶらり下車。ときに周辺をブラブラ、ときに駅構内を探検。それが新企画「ぶらり秘境下車」だ!

記念すべき第1回は、神奈川県横浜市にある「海芝浦駅」。駅のホームから臨む絶景、そして「改札から出られない」謎とは?

・改札が東芝の事業所に直結

今回訪れたのは、JR鶴見線の「海芝浦駅」。鶴見線は、鶴見駅から京浜工業地帯方面へと延びる短い路線。途中で複数の支線に分岐しており、海芝浦駅は海芝浦支線の終着駅にあたる。鶴見線(特に海芝浦支線)は運行本数が非常に少ないため、訪れる場合は事前に時刻表を確認しておくといいだろう。


さて、タイトルにも書いた「改札から出られない」とは一体どういうことなのか。その点について説明しよう。

海芝浦駅の改札は、東芝の子会社である東芝エネルギーシステムズの京浜事業所に直結している。正確にいうと駅そのものが同社の敷地内にあり、改札から1歩出るとそこは私有地なのだ。そのため関係者以外は基本的に改札から外には出られない。事業所に勤務されている方の通勤用に存在する駅といって、差し支えないだろう。

にもかかわらず、海芝浦駅は鉄道ファンや写真愛好家が多く集まる駅でもある。その理由はだ。海芝浦駅のホームは田辺運河に面しており、正面に鶴見つばさ橋、遠方には横浜ベイブリッジを臨む絶景スポットでもあるのだ。そんな素敵な風景をご紹介しよう。

・電車を降りれば、そこは海

筆者が海芝浦駅に降り立ったのは平日の午後3時頃。よく調べずに東京から向かったこともあり、途中の鶴見駅で1時間近く待つはめになってしまった。繰り返しになるが、時刻表は事前に要チェックだ。とにもかくにも、なんとか到着。


そして電車のドアが開くと……


すぐそこに海が! 海まで0秒!

まさにオーシャンビュー。なかなかどうして、これは想像以上の景観である。

対岸に広がるのは、製鉄所や東京ガスの扇島工場など工業地帯ならではの風景。

鶴見つばさ橋、横浜ベイブリッジもバッチリ見える。そして、時折目の前を横切っていく船とカモメ。どこまでも穏やかな景色だ。時間よ、止まれ……。


・ホーム横には一般利用OKの公園も

ホームのすぐ横には「海芝公園」という公園があり、ここは一般客に開放されている。当駅を訪れる人のために東芝エネルギーシステムズが整備・管理しているスペースで、自販機やベンチが設置されており、海を眺めながら休憩することができる。

筆者と同じ便で駅に到着した人が何人かいたのだが、みんなササッと写真だけ撮って帰っていってしまった。せっかくなので、筆者は少しゆるりとしていくことにした。人生にはこういう時間も必要だ。


海っていいな。リゾート地のようなエメラルドブルーの海も良いけど、こういう生活感のある海も情緒があって好きだな。通っていく船は工業船みたいなのが多いけど、船に詳しくないからよく分かんないや。近くに寄ってくるスズメが可愛いな。俺はお菓子もってないよ。


そんなことを考えながら、ゆっくりと時間が過ぎていく。


・乗車駅証明書の発行を忘れずに

そろそろ帰るとしよう。ところで、前述のように当駅では改札から外に出ることができない。「じゃあ切符はどうするの?」と思う方も多いだろう。

まず、往路の切符は駅に設置されている切符回収箱に投入する。

そして復路については、「乗車駅証明書発行機」なる機械が設置されているので、ボタンを押して「乗車駅証明書」を発行する。降りる駅で乗車駅証明書を駅員さんに見せて、運賃の精算をしよう。無人駅で降りる場合は、事前に車内で乗務員の方に申し出て精算すればOKだ。


ちなみに今回ご紹介した海芝浦駅は、夕焼けの美しいスポットとしても有名らしい。この日は夕方から雲が多く出てきたため、残念ながら真っ赤に染まる海と空を拝むことはできなかった。興味のある方は、ご自身の目で確かめに行ってみてはいかがだろうか。

Report:グレート室町
Photo:RocketNews24.
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▼絶景絶景アンド絶景

▼海芝公園の開園時間は9時~20時30分

▼海を眺めながらボーっとしよう

▼トイレもある

▼帰りの電車の時刻は事前にチェックしておこう

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