日本中に数えきれないほど存在する飲み屋。そのすべてを回ることはきっと不可能だろうが、1軒でも多くいろいろな店に行ってみたいと思うのが のんべえの性(さが)である。そこで今回は、全国と比べるとやや小規模ながら、その夢を実現させてみたい。

東京・阿佐ヶ谷で毎年開催されている「阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り」は、参加するたくさんの店舗を好きに はしご酒しようという、ユルくも気合いが入った街イベントだ。チケットを買えば何軒回っても1杯目が無料だというので、こちらも気合いを入れて参加してきたぞ!

しかし、まさかあんな探偵のようなミッションを課されることになるとは……。

・阿佐ヶ谷で はしご酒

本題に入る前に、「阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り」についてもう少し詳しくお伝えしよう。2019年5月14日から16日まで開催されるこのイベントには、阿佐ヶ谷の飲み屋がなんと100店舗も参加している。チケットを買った参加者は、これらの店舗を自由に はしご酒できるのだ。

・チケットによる違い

イベントチケットには3種類ある。詳しくはイベント公式サイトをご覧いただきたいが、ザックリ説明すると以下のような感じ。


1日券(4000円):参加店舗で1杯ずつ飲める + どこかの店舗で食べられるおつまみ券1枚
ちょいのみ券(2000円):のみもの券5枚
おかえりごはん券(1500円):よるごはん券1枚 + のみもの券2枚


今回私(あひるねこ)は、どこに行っても1杯目が無料の “1日券” を購入した。腕に巻かれるリストバンドが参加者の証だ。が、個人的な感覚では、夕方からガッツリ飲むなら “1日券”、仕事帰りなら “ちょいのみ券” で十分なような気がしたぞ。その理由は後ほど説明しよう。

・予想外のゲーム

さて、“1日券” に付いてくる “おつまみ券”、その内容はくじ引きによって決まるという。だがしかし……。何が出るかな♪ と取り出した紙には、予想とは違った謎のメッセージが書かれていた。


「ヒントを手がかりにお店を見つけてください」


は?


マジか、なんか探偵ごっこみたいのが始まったぞ。どうやら記された施設名や通りの名前をヒントに、自分で店を探し当てろということらしい。ちょ待てよ、こっちはけっこう腹減ってんすけど……と思わないこともなかったが、配布されたマップを見れば割とすぐ分かったのでよかった。この時は。

・いざ、はしご酒

さっそくお店に向かってみると、そこにはすでにいい感じになっている のんべえ達の姿が。もらえるお酒は店舗によって違うので、何が置いてあるかも楽しみの一つだ。友人はビール、私は日本酒の『八海山』でまずは乾杯。

そしてすかさず “おつまみ券” を提示! すると……マ、マジかよ!! おお、駅から離れた店まで来た甲斐があったぜ……! すす、すすすす……


寿司キターーーーーーッ!!

そこは酒屋の奥にある角打ちのお店だったのだが、この日は職人さんが来て寿司を握っていたのである。ラッキーラッキィィィィイイイ! 言うまでもなく寿司と日本酒の組み合わせはシュプリーム(至高)であり、これにより一気に勢いづく我々。


マップを見ながら……


気になるお店に入っていく。

そうしているうちに分かったのは、このイベントは量を飲むのが目的ではないということ。名前は知っていたけど何となく入りづらかったり、行く気はなかったけどたまたま近くを通りがかったり、そういったお店との新たな出会いを楽しむ。これこそが醍醐味なんだろう。

・ぜひ開拓を

先ほど「仕事帰りなら “ちょいのみ券” で十分」と書いたのは、つまりこういうことである。時間に追われながら焦って駆け回るより、初めての飲み屋をのんびり5軒回る方が絶対楽しめるし、何よりその方が阿佐ヶ谷らしくていいではないか。

・夜は更けていく

話を戻そう。途中、『殺人ハイボール』なる物騒なドリンクにも遭遇したぞ。ちなみにこのハイボール、ジョッキが運ばれた後、そこにさらに足されていく。


ウイスキーが……!

「ストップって言ってください! いやぁ、今日は死にたがるお客さんが多いっすねぇ」と笑う店員さん。待て待て、ていうかこれ……もはやただのウイスキーやないかッ!!

などと愉快な夜を過ごしながらも、私には先ほどから……いや、チケットを買った時から。ずーっと引っかかっていることがあった。そう、友人が引き当てた “おつまみ券” のヒントである。

・難易度が高い

私が引いた分は先述の通りだいぶ分かりやすかったが、こちらはなんというか……ミッションかよ、とでも言いたくなるようなお題なのだ。もう少し、もう少し具体的なヒントがあってもよかったのではなかろうか? いくらなんでも難しすぎるだろう。


「壁画のあるお店」は……。

え? ヒントそれだけ!? ムッズッッッ! その壁画が外にあるのか中にあるのかも分からないではないか。試しにスマホで検索してみるも、参考になるような情報は皆無。阿佐ヶ谷に詳しい知人全員に LINEしてみても、誰も正解が分からないのだ。

ていうか、阿佐ヶ谷でバーをやっている知人も分からないって……難易度高すぎるだろ! ミッションかよ!! 結局我々は、該当エリアの店に入ってはここか聞き、入っては聞きという作業を繰り返すことに。そしてその結果、まさかの展開を迎えたのである。

・非合法な存在

何軒目かに入った店舗も、探し求める「壁画のあるお店」ではなかった。するとそこの店員さん、我々を見かねたのかこんなことを言い出したのだ。


「あ、待ってください。カンニングペーパー見てきますよ


……カンニングペーパー?


なにやら白い用紙を持って出てきた店員さん。参加店舗にだけ配られるものらしく、リストを見ながら我々に「えーとこれは……〇〇っていうお店ですね」と、親切丁寧に教えてくれたのだった。マ、マジか……。もっと早く聞いときゃよかった。

・悲しみ

結論を言うと、その正解の店舗は微妙に遠く、終了時間もギリギリだったため行くことを断念した。念のため書いておくが、時間内に間に合わなかった場合や満席だった場合、“おつまみ券” は5月25日まで使用できるそうだ。だから無駄にはならない。が、しかし……。

・懇願

「阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り」さんよ……これだけ言わせてくれ。このミッションいらなくね!? 普通にくじ引いて「このお店です」でよくね!? それか、もうちょい難易度低めでよくねェェェェェェエエエ!? あ゙あ゙あ゙あ゙食いたかったァァァァァアアアア!


こうして私は、のんべえが集う街・阿佐ヶ谷に完全敗北を喫したのだった……。

・でもまた行く

とは言え、初めて参加した はしご酒イベントを大いに楽しんだのは事実である。が、正直言ってまだまだ酒が足りん。あの膨大な数の飲み屋を一晩で回るのは無理ってなもんだ! というわけで、今晩もまたあの街に繰り出そうと思います。まだ見ぬ壁画をこの目に焼き付けるためにも……。

参考リンク:阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り
Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.

▼お店に行くとスタンプを押してもらえる。後日そのお店でカードを提示すると、ドリンク1杯が無料になるぞ。

▼もらえるお酒は店舗によって違う。

▼イベント限定メニューを用意しているお店も。

▼『紀土』の純米吟醸が飲めるお店もあった!

▼はしご酒最高。