人間とは “忘れる生き物” であり “忘れられる生き物” でもある。温かく優しい気持ちを忘れてしまうこともあれば、ツラく悲しい過去を忘れることもできる。人は様々なことを経験すると同時に、忘れながら生きていくものなのだろう──。

それはさておき、私(P.K.サンジュン)はライターをしているワケだが、普段から「あ、これ書こうかな」なんてネタを思い付くことがちょいちょいある。ただ年齢のせいか、すぐにそれを忘れてしまうのだが、先日「あ、これ書こうと思ってて忘れてたヤツ!」と思い出した……そう、駅のホームで。

・駅でのできごと

私は以前「満員電車の中で仁王立ちしているヤツは何なのか?」という記事を執筆した。そのときは “満員電車” そして今回お伝えしたいのは “そこまで混んでいない電車” が舞台である。ガラガラではないけれど「電車の床が見えるくらいの混雑具合」を想像していただけると幸いだ。

つい先日のこと──。帰宅ラッシュが始まりかけた18時頃、私はまさにそんなシチュエーションの車両に遭遇した。ホームで待つ私、そして開くドア。窓から見る限り、車内はそれなりに混んでいるものの、気合いを入れるほどでもない。私はいつも通り電車に乗り込んだ。

……と言いたいところだが、実際はそうならなかった。なぜならドアから2cmほどインサイドギリギリに、50代と思しき男性が突っ立っていたからである。しかもポジションはど真ん中……。さらに言うなら男性は、片手をドアの上のヘリの部分に引っ掛けていた。

・ドアギリギリから動かない男

男性の両脇から見える車内、つまり男性の後方は比較的空いていた……にもかかわらず、男性は微動だにすることなく、ただ立ち尽くしている。残念ながらこういう人は少なからずいる。私は「出た……! あ、これ書こうと思ってたヤツだ」と思い出した次第だ。

ポイントは「車内はそこまで混んでいないこと」そして「ドアの上のヘリに手を引っかけていること」だろう。ギュウギュウの満員電車ならば、ドアの上部に手を引っかけ体を車内に押し込むことはよくあるし、理解できる。だが、男性の後ろには誰もおらず、腕の力に頼る必要は全くないのだ。

大目に見るならば、ドア付近をキープしたい気持ちはわからなくもない。ただその場合、ドアが開いたら1度ホームに出て、通り道を開けることが最低限のマナーだろう。


だが彼は……


樹齢300年の大木の如く……


ただ立っているのだ。


私は「どけよ」とも言えないので、体を小さくして男性の脇を通り抜けたが、本当に意味がわからなかった。腕アピールは「絶対にどかないからな」という意思表示かもしれないし、もしかしたら私には理解できない理由があったのかもしれない。

果たして彼のような人たちは何のつもりでドア前から微動だにしないのだろう? 実は彼がボルダリングのプロで、密かに体が浮いていた……なんてことはなかった。もしかしたら「ドアがメチャメチャ好きでドアになりたい」とか? 真相は不明だ。

執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼こちらは「満員電車の中で仁王立ちする男」の話。