大勝利──。自分で言うのもなんだが2018年11月某日、私P.K.サンジュンは奇跡を起こした。そう、あの日本最強クラスのコスパを誇る『サイゼリヤ』で1万円分の料理を食べきったのだ。自画自賛するようで恥ずかしいが、冷静に考えてこれは快挙ではなかろうか?

当然ながら楽な戦いではなかった。むしろ死闘でさえあった。だが私は勝ったのだ、確かにサイゼリヤで1万円使いきったのだ。打倒サイゼリヤの奥義は名付けて『プロジェクトM』──。男とサイゼリヤのガチバトルのもようは、以下でご確認いただきたい。

・サイゼリヤの急所

つい数週間前、我々ロケットニュース24編集部は特命チームを結成し「サイゼリヤで10万円使えるのか?」という企画を実施した。あの時は4人で挑戦したが、結果は惨敗。1人6000円弱しか食べられず、サイゼリヤの手強さを改めて思い知らされていた。だがしかし……。

私はその際「1人1万円なら食べられるかも?」という秘策を思いついてしまった。それこそが「プロジェクトM」──。無敵のサイゼリヤの急所をピンポイントで貫く「プロジェクトM」ならば、ひょっとして1万円を達成できるかもしれない……いや、サイゼリヤを倒すにはコレしかないのではないか? ……と。

・プロジェクトMとは

さて、ここで「プロジェクトM」の全容を説明しよう。サイゼリヤに限らず、もし金額的にも大食いをしたいならば、味は関係なく「物質量的にコスパが悪いもの」を攻めるのがセオリーだ。500グラム500円の料理を注文するより、100グラム500円の料理を注文した方が金額を稼げる。

どのメニューも間違いのないウマさで、しかも激安のサイゼリヤ。そんな中、私が目につけた料理とは、


「ムール貝のガーリック焼き(399円)」


……である。ムール貝が4つで399円ということは、1つあたりの値段は約100円。1万円をクリアするならば、単純にムール貝を100個食べればいい計算だ。しかも味は安定のサイゼリヤクオリティ……もはや「サイゼリヤのアキレス腱」はここしか考えられない。

しかも私は、おそらく前世がラッコだったほどの無類の貝大好きっ子である。過去には牡蠣を70個食べた実績もあり、当然ムール貝も大好物。

サイゼリヤの急所にしてアキレス腱、そしてそれを切り裂く必殺の刃こそ……


「プロジェクトM(ムール貝)」なのだ。

舞台は変わって11月某日──。私はカメラマン兼立会人のYosioと都内のサイゼリヤにいた。サイゼリヤ好きな人ならわかると思うが、サイゼリヤで1人1万円使うことは難関中の難関、ハッキリ言って至難の業である。男の挑戦がいま始まった。

・先制攻撃

まずは「ムール貝のガーリック焼き」10人前とドリンクバーをオーダー。この時点で4180円分を稼いだことになる。先制パンチとしてはかなり効果的、上々の滑り出しではなかろうか。だがしかし……。

15分ほどでやってきたムール貝10人前は……ヤバい。テーブルを埋め尽くさんばかりのムール貝は圧巻で、素人ならばそれだけで戦意喪失する勢いである。そりゃそうだ、単純に40個のムール貝が並んでいるのだから。

ただ、サイゼリヤもムール貝も大好きな私の心は折れない。ガツガツと食べ進めていき、最初の40個は10分かからずに食べきった。イケる……! プロジェクトMならばサイゼリヤに勝てる……!!

・ムール貝の逆襲

続けて「ムール貝のガーリック焼き」を5人前オーダー。この時点で6175円、もう目標の半分は超えた。だがムール貝はオーブンで焼いているせいか、提供までにやや時間がかかる。そうしているうちに刺激される満腹中枢……。何より “磯の香り” が私を苦しめ始めた。


「どう? 1万円分食べきれそう?」

「ぶっちゃけ、ちょっとお腹いっぱいになってきてます。というか、これだけ食べると磯の香りが気になりますね」

「しかも意外と大きいんだね、サイゼリヤのムール貝って」

「そ・れ・な! そうなんですよ、想定してたより身がプックリしてるんですよ。サイゼリヤいいムール貝使いすぎでしょ」

・アメリカからの助っ人

私はテーブルに到着したムール貝を黙々と食べ続けた。磯をリセットするために、大好きな「青豆のサラダ」や「シチリアレモンのソルベ」を挟んでみたが、腹の底からあふれ出してくる磯は止められない。ムール貝でも満腹中枢でもない、今の敵は “磯” だ。

「60個食べきったけど、すげえ無口になってるじゃん!」

「……磯の香りがヤバいス。どんだけウマくても同じ料理はさすがに飽きてくるし……

「じゃあ、他の料理を残り4000円分食べる?」

「もう20個は追加しちゃったんで、それ食べてから考えます。てか、口から磯がなくならねえ」

コーラ飲めば?

「……!!!! それいいかもしれない!」


Yoshioの口から飛び出したまさかのファインプレー。強烈な磯の香りもコーラなら……U.S.A.生まれのコーラならばかき消してくれるかもしれない。


というわけでコーラに口をつけると……。




息リフレーーーーーーッシュ!!!


すげえコーラ! 磯が一瞬でいなくなった!! 完全に口に中はアメリカDAッ!

・軌跡の果て

ただし、ムール貝を食べた瞬間に口が磯に逆戻りすることは言うまでもない。追加でやって来た20個は、磯・アメリカ・磯・アメリカ・磯・アメリカ・磯・アメリカ……を繰り返しなんとか食べきった。この時点で8170円、そしてムール貝は80個を完食……。しかし残り20個は果てしなく遠い。

なぜならばコーラのおかげでムール貝は食べきったものの、そのコーラがお腹の中で膨れ上がり、今度は純粋にお腹がハチ切れそうになっていたからだ。磯と満腹の波状攻撃、さすがコスパ最強イタリアン「サイゼリヤ」である、そう簡単には勝たせてくれない……。

だが、空気が読めない上に見ているだけのYoshioは違う。

「すげえ! イケそうじゃん!! マジでクリアできそうじゃん!」

「……」

「これスゴイことだよ! イケるよ、イケるって!!

「…………」

「だってあと20個でしょ? こりゃ勝ったな! イケるよイケる!!

「………………」

「いっちゃえ! イケるってば、あと少しでイケ……」


うるせぇぇえええええ! イケるかどうかは俺が決めるんだよォォオォオオオオオ!!


「あとごめんなさい。もうやっぱりムール貝は無理ス。他の料理で2000円分なんとかします」

ぶっちゃけ、60個くらいの時点でギブアップしたかった。と同時に、1度くらい大食いで結果を残したい気持ちもあった。「サイゼリヤで1万円分食べたことがある」この称号を手に入れるため、私は残り約2000円分を、熟成ミラノサラミWサイズ(598円)やスイーツ(399円)で補い、そして食べきった。


やがて訪れたその瞬間……!


10164円のお会計に成功!


どんなもんじゃいコラァァァァァアアアアアアア!


〇 P.K.サンジュン(2時間9分56秒)サイゼリヤ ●

※プロジェクトMからの10164円


こうして男とサイゼリヤの死闘は幕を閉じた──。

・芽生えた友情

厳密に言えば「プロジェクトM」が完全に成功したわけでないので、完勝ではないだろう。だがしかし「プロジェクトM」がサイゼリヤ攻略の有効な手段であることは間違いないハズだ。もちろん「もう1回やりたい」とはなかなか思えないから、素人が真似することはオススメしない。

最後に、全身全霊で戦ったからこそわかるが、サイゼリヤのコスパはマジで最強だ。同じ国で生まれ、そして同じ時代を生きていることを誇りに思うよ、サイゼリヤ。いつの日か、またリングで会おう──。

参考リンク:サイゼリヤ
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

▼ムール貝のガーリック焼き最高!

▼身も大きいよ☆

[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]