バンクシーの作品が “自殺をした” と話題だ。2018年10月5日、オークションに出品されたバンクシーの絵『風船と少女』が約100万ポンド(約1億5000円)超で落札された直後に、額縁に内蔵されていたシュレッダーで裁断されたのだ。

バンクシー本人が遠隔操作を行なったと見られているが、この騒動によって作品の価値がさらに上昇するとも言われている。

そんな流れを見て「なら他のバンクシー作品もズタズタにすれば、値が上がるのでは?」と思った人もいた。美術専門家が「絶対にやめて」と警告したにもかかわらず、所有しているバンクシー作品をズタズタにする人が出現してしまったのだ……。

・バンクシーの作品をズタズタにすると価値が上がる?

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バンクシー作品の所有者は、作品をあえて傷つけたりしないで──冒頭の騒動が起こった後、美術品販売サイト『MyArtBroker』は SNS でそう呼びかけた。

なんでもオークション以降、多くの人から『手元のバンクシー作品を裁断すれば、価値がより高まるのか?』といった質問が寄せられたというからだ。同サイトは Twitter でこのことを明かしつつ、以下の警告を発した。


「どうか、どうか、そんなことは絶対にやめてください。オークションで起こったことは、美術史に残るほどの異様な出来事なんです」


あれはバンクシー本人が行ったからこそスゴイのであって、一般人が真似ても、価値が上がるわけがないと主張しているのだ。けれども、その言葉が耳に届かなかった人もいたようだ。

・持っていた『風船と少女』をカッターで切り刻んだ人

英メディア『Mail Online』によると、『風船と少女』の新品同様のエディション作品は600枚存在するという。ある人物も同作品を所有しており、その価値は4万ポンド(約590万円)以上になるとも言われていた。

価値をさらに高めたいと考えた人物は、作品をカッターナイフで切り刻み、『MyArtBroker』に「最低価格8万ポンドで販売したい」と連絡を入れたのだ。だが『MyArtBroker』は「ボロボロになった作品には1ポンドの価値もない」と突っぱねた。

・「欲ってのは、人間に愚かなことをさせるんだな」

同サイトの共同設立者イアン・セイヤーさんは、本件について「限られた数しか存在しない『風船と少女』がひとつ失われた。非常に残念だ」と述べながら、次のように説明している。


「バンクシーは美術界の異端児です。彼ほど、世間の関心を集める術に長けているアーティストは他にいません。彼自身が作品をシュレッダーにかけるなんて異常な行いをすれば、作品の価値に計り知れない影響を与えるのは当然でしょう。彼の行いを真似た人物は、4万ポンドの価値をほぼゼロにまで無意味に引き下げました」


本件はネット上でも話題になっており、「ズタズタの作品が欲しいなら、4万ポンドで絵を買って自分で切り刻めばいいだけ。8万ポンドになる訳がない」「欲ってのは、人間に様々な愚かなことをさせるんだな」などの声が上がっているのだった。

参照元:Mail OnlineLAD Bible、Instagram @banksy、Twitter @myartbroker(英語)
執筆:小千谷サチ

▼「作品を傷つけないで」と呼びかけるツイート

▼シュレッダーで裁断された『風船と少女』