安いものだと数百円から、高いものだと100万円以上もするワイン。やや乱暴に書くと、ワインは「熟成」することで味や香りが変わるお酒だ。ただ、熟成するにはある程度の時間が必要になるし、そういったワインは値段も張る。熟成ワインを飲むのも楽ではないのである。

そこへ登場したのが、超音波によってワインを熟成できるという夢のマシン『Sonic Decanter(ソニック・デキャンタ)』だ。なんとこの機械、若いワインでもたった20分で熟成したヴィンテージのような味と香りになるのだとか。マジかよ! それが本当なら革命だろ!! というわけで、実際に買って試してみたぞ。

・けっこう高い

数年前にアメリカで発表され、ワイン通の間で話題になったという『ソニック・デキャンタ』。日本でも買うことができるらしいのだが、お値段は3万4800円となかなかの金額だ。これは、迷うな……迷う。正直、ちょっと胡散臭いしなぁ……でも……ええい! 買ったれぇぇぇえええ!!

・超音波でワインを熟成

うむ、買い申した。後悔はしておらぬ。さて、この『ソニック・デキャンタ』は、特許技術である超音波でワインを熟成させるマシンだということは先述の通りだ。超音波の振動により、細かい気泡でワインを攪拌(かくはん)して酸素を抜くため、ワインが劣化しないのだという。なるほど、よく分からん。

・安ワインで味の違いを検証

それより気になるのは、本当に20分でワインの味が変わるのか? という点である。もし安ワインでも熟成したような味になるのなら、これはちょっとした革命ではないか。そこで、今回はセブンイレブンで買ってきた500円の赤ワイン『ロス・モリーノス』で検証することに。

・ステップ1

それでは熟成開始だ! まず本体に冷水を入れる。超音波エネルギーをワインに伝えるためである。

・ステップ2

冷水を入れたら、ワインをボトルごと本体にセット。機械は一般的な750ミリリットルのボトルが収まるサイズになっている。この時、コルクなどは抜いておいた方がより効果的とのことだ。

・ステップ3

あとはボタンを押すだけで自動的に熟成が始まるぞ! 終了のチャイムが鳴るまでの20分、震えて待つべし。

熟成中は、ジジジーーーーーーという音がまあまあの大きさで鳴っている。ワインの表面も若干震えているようだ。現在このボトルの中では、本来なら数時間、数年間かかる熟成工程が猛スピードで進んでいるのだろう。科学ってすげえ。

・熟成前・後を飲み比べる

待っている間にご説明しよう。今回は、熟成中のワイン以外に、もう1本まったく同じ銘柄のワインを用意した。当然こちらは熟成はせず、買ってきたままの状態だ。この2本のワインを飲み比べ、本当に味が変わっているのかを検証してみようと思うぞ。……お!? ちょうど熟成が終わったようだ。ヤバ~イ、緊張するゥゥゥウウ!

・検証スタート

検証するのは私、あひるねこ。そして、毎晩ワインを飲んでいるという違いの分かる男・Yoshio の2名だ。さっそく2本を別々のグラスに注いでみたが、見た目はほとんど変わらないようである。

それでは実際に飲んでみるとしよう。まずは熟成していない方のワインから。むッ! コンビニで適当に買ってきたワインの割に、なかなかどうして、おいしいじゃないか。500円でこれはコスパ良し! ……いやいや、今はそんなことを気にしている時ではなかった。続いてお待ちかね、熟成ワインの出撃であります。

・熟成の成果は

香りで言うと、熟成した方はしていない方よりも、やや落ち着いた印象だ。熟成前の派手さが影を潜めたという感じか。今度は口に含んでみる。その結果……。

ハッキリ言おう。明らかにウマい。熟成後の方が明らかにウマいと私は思った。その一番の違いは「酸味」である。熟成前のワインにあったトゲのある、かつ安っぽさを演出するような嫌な酸味が、熟成することでかなり抑えられた気がするのだ。また、元々軽めのワインだったのが、いくぶんの重みを感じる。口当たりもまろやかになった。

・まるで違う

感覚的な表現だと、熟成前のワインは上向きの矢印「⤴」、熟成後のワインは下向きの矢印「⤵」といったところか。飲みやすさ的にも後者の方が上だろう。もちろん好みの問題もあるはずだが、私は断然、熟成後の方が好きだ。まるで500円のワインが、1000~2000円台のワインにクラスチェンジしたかのようである。

・2名とも同意見

毎晩ワインを飲んでいる違いの分かる男・Yoshio も、熟成後のワインの方がウマいという判定だった。重くなったことが一番の要因のようだ。「角が取れたみたい」と発言していたことも、併せて記述しておきたい。

・結論

検証の結果、「超音波でワインを熟成できる『ソニック・デキャンタ』を使うと、味は本当に変わる」という結論が出た。断っておくと、「味が変わった」と「おいしくなった」は決してイコールではない。人によって差があるはずだ。しかし、ワイン好きな我々にとって、これは嬉しい発見であった。高価だが、興味のある人は試してみてはどうだろう。

参考リンク:Sonic Decanter
Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.

▼『ソニック・デキャンタ』で赤ワインを熟成させてみた

▼ボタンを押すと熟成スタートだ

▼個人的に、もっとも違いを感じたのは「酸味」である

▼「どちらが熟成なのかはよく分からないけど、こっち(熟成後)の方が好み」という意見もあれば、

▼「違いがあるのは分かるけど、熟成前の方が自分は好き」という意見もあった