あなたはラーメンがお好きだろうか? 国民食と言っていいほど大人気のラーメンだから嫌いな人はあまりいないと思うが、実は私(P.K.サンジュン)はラーメンがそこまで好きではない。もちろん嫌いではないのだが、昔からある理由でラーメンを心の底から美味しいとは思えないのだ。

これは10年以上前の話。私がラーメンに関する持論を述べたところ先輩が大激怒。2年ほど口を利いてもらえなかった実話である。後からわかったことだが、先輩は超の付くラーメンマニアだったのだ。

・ラーメンがあまり好きではない理由

まずは私がラーメンをあまり好きではない理由から述べたいと思う。ラーメンに限らず、私は温かい麺類、特に汁に浸かった麺類があまり好きではない。理由はただひとつ、麺が刻一刻と伸びていく気がして、極端にいえば「どんどん美味しくなくなっていく感覚」がするからだ。

例えば米粉が原料のベトナムの麺・フォーや、パスタなどは表面がツルツルしており水を弾き返す感じがするからイイ。だが中華麺、さらにいえば細麺はグイグイ水分を吸収してしまう気がして「提供された瞬間がMAXの料理」だと当時は思っていた(今もまあまあ思っている)。

なのでラーメンはあまり好きではなく、それまでラーメン屋に行く機会もあまり無かったのだが、つけ麺ブームの到来で環境は一変した。麺を水でしめるつけ麺は、麺が伸びる感覚がイヤな私にとって理想的な料理であり、ウマいと評判のつけ麺屋には片っ端から足を運んだ。

・物静かな先輩と飲んでいた時のこと

そんなときに事件は起きた。仲間内の5~6人で飲んでいた時のことだろうか。メチャメチャ仲がいいワケではないけれど出会って数年、会えば愉快に会話するA先輩が珍しくその場にいた。何気ない話からみんなでつけ麺の話になり、私はここぞとばかりにつけ麺愛を語り始めた。

最初は和やかな雰囲気だった。仕事の関係で出かけた北海道で奇跡的にウマいつけ麺「あらとん」を見つけた、都内の「○○が超ウマい」などの会話が続く。だがそのうち私が勢い余ってラーメンをディスり始めると、徐々に空気が変わってきた……。

これは後から聞いたことだが、A先輩は1日1回ラーメンブログを更新するなど、大のラーメンマニアだったのだ。特にその頃、都内にチラホラ店舗が増えていた一蘭に心酔しており、ブログ内では「つけ麺は邪道」とエントリーしていたらしい。

最初はおとなしく私の話を聞いていてくれたA先輩だが、先述した持論に加え、


結局、ラーメンって70点満点の料理だと思うんですよね


と発した瞬間、手にしていたサワーのジョッキを勢いよくテーブルに叩きつけ、烈火のごとくキレ始めた。


「ハァァァァアアア? ラーメンあってこそのつけ麺だろうよ! お前本当にウマいラーメン食ったことねーんだよ!! ラーメンが70点満点だと? 一蘭食ってから言え、一蘭食ってから! だいたい麺が伸びるのもお前がチンタラ食ってるのが悪いんだよ!!」


先輩というだけではなく、普段はどちらかというと物静かな人柄だっただけに絶句してしまったが、当時の私は早食いで有名であった(今もかなり早い)。それを知っていた別の先輩が面白がって「サンジュンは食うのメチャメチャ早いよな」とフォロー? してくれたのだが、その言葉を聞いてA先輩は居酒屋を出て行ってしまったのである。

・みんなも気を付けよう

それから2年ほど、A先輩は私を避け続けていた。今では笑い話だが、あの頃は「ラーメンの話でこんなに気まずくなるなんて……」と自分の浅はかさとラーメンを呪った。現在でもラーメンはそこまで好きではないが、八丁堀の「七彩」の煮干しそばなんかは超ウマいラーメンだと思うし、多少の心境の変化はあった(七彩の麺は水分を吸いづらいってのもあるが)。

なぜ周囲の人が「A先輩はラーメンマニア」だと教えてくれなかったのか恨んだりもしたが、思い返せば私の軽率さが招いた結果である。ラーメンの話に限らず、何かをディスる際は “隠れ大好きっ子” がいないとも限らないから、みなさんも十分にお気を付けいただきたい。

執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼今でもラーメンよりつけ麺派だが、七彩の煮干しそばはマジでウマいと思う。

大至もウマいと思う。