絵に描いたような夢があふれる小学校の卒業文集。ある日、私(中澤)の卒業文集を開いてみると、将来の夢のところに「マンガ家」と書いてあった。そう言えばあの頃マンガ家になりたかったなぁ。絵が好きな人にとってマンガ家は一度は憧れる職業だろう

絵が描きたいからマンガ家になる。それは当時、当然の帰結のように思えた。だがしかし、私の知り合いのプロマンガ家はトレースやコピペばかりしている。一体なぜ? そこで本人に聞いてみることにした。

・めったに絵を描かないマンガ家マミヤ狂四郎先生


そのプロマンガ家とは、キャリア18年目のマミヤ狂四郎(37)先生。先生は現在も月3本の連載を抱えているが、実際に自分で描くのは月4〜5コマくらいで、あとは全部コピペや文字や写真で切り抜けるという。なんで絵を描かないんですか?

マミヤ狂四郎「だって、めんどくさいもん」

──じゃあ、なんでマンガ家になったんですか?

マミヤ狂四郎「最初の始まりは小学校の時、自由帳に描いたマンガだったんだ。学校でマンガを描いてたら、みんなが読んでくれるし、褒めてくれたのが嬉しかったんだよ。絵も学校じゃウマイ方だったしね。金賞とか獲ってたし」

──やっぱり絵、好きなんじゃないですか。

マミヤ狂四郎「そりゃあ好きだよ」

──じゃあなんで絵を描かないんですか。

マミヤ狂四郎「俺はイラストや絵画を描いてるわけじゃなく、マンガを作ってるからだ


──と、言うと?

マミヤ狂四郎「例えば、イラストや1枚の絵画で勝負する場合、劇的にウマいか味があるか……そんなガチンコのオリンピックの世界になる。

だが、マンガの良いところは、『ちびまる子ちゃん』や『クレヨンしんちゃん』みたいに絵がそこまでウマくなくても見せ方次第で面白くなるということだ。

『ちびまる子ちゃん』で言うと、マンガ全体のコマ割り、そしてコマの中に描かれた父ヒロシの目線や『ガーン』という表現、セリフのないコマなど、全ての構成力で独特のテンポが出ている。

特にさくらももこ先生は、言葉選びがズバ抜けてウマイ。俺は絵が上手いマンガよりも、絵にリキ入れてないのに面白いマンガに惹かれたんだ

──なるほど。しかしながら、それと絵を描かないことは別問題のように思います。なんで絵を描かなくなっちゃったんですか?

マミヤ狂四郎「あれはデビュー1年半くらいの頃かな……」

──いちおう理由あるんですね

マミヤ狂四郎「当時は俺も絵を描くのが楽しくて、頑張って描いてたんだ。しかし、当時俺が描いてたマンガって、アダルト雑誌に載ってる4ページくらいの潜入ルポマンガとかなのよ。ヤバイところに潜入するみたいな。漫画中に入る写真も多めで。となると、そこまで絵、頑張る必要なくない?」


──それは一理ありますね。

マミヤ狂四郎「それで試しに、絵を全部コピペでやってみたんだ」

──思い切りましたね。

マミヤ狂四郎「そしたらそのマンガがめちゃくちゃ面白くなってさ。力が抜けてるっていうか。絵に力を入れなくていいんだって思い始めたら、内容や構成、文章に力を入れられるようになった。それで、俺の道コレ(コピペ)かなーって思ったんだよ」

──なるほど。

マミヤ狂四郎「だから、1カ月4コマとか5コマでも、描くのがめちゃくちゃ辛い時あるもん」

──週刊連載の作家さんに謝れ

マミヤ狂四郎「たとえば、“このキャラ出して” とか人に言われて出したキャラとかは辛い。魂が入ってないキャラは全然動いてくれないし。あと流れ上どうしても描かなきゃいけない……けど描きたくないコマとか、そういうのはめっちゃ辛かった」

──そんな先生にとって、マンガとは何ですか?

マミヤ狂四郎「自己表現の方法。描けなきゃ真っ黒に塗りつぶしても良いし、コピペしても良い。ウマくやる必要は全くない。ただし、読者をコントロールするというか、描く時に目線や感情を意識するのは大事だね。そこが楽しいところでもある」


──ありがとうございました! マンガ家として独自の道を突き進むマミヤ先生。そんな先生の最新作は、『Mac Fan』『BugBug』『GetNavi』で読むことができるぞ!! もし、気になった人はチェックしてみよう!

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.