努力ではどうしても超えられない壁を、まるでそこに壁などないかのように超えていく人たちがいる。そんなズバ抜けた才能を指して、驚きと憧れを込めて我々はこう呼ぶ。「天才」と──。弱冠14歳にして、将棋界の最多連勝記録を打ち立てた藤井聡太四段は、まぎれもなく天才の1人だろう。

そんな藤井四段の14歳最後の対局が凄かった。解説者のプロ棋士たちが「マジか……」「なんでこうなるのかね」と絶句するその様子は完全にマンガ! 主人公すぎる!!

・解説がマンガ化

この対局は、2017年7月11日に関西将棋会館で行われた加古川青流戦トーナメントの3回戦。都成(となり)竜馬四段との一戦だ。当初、優勢に攻めていた都成四段だが、藤井四段が形成を逆転し31勝目を収めた。

面白かったのはAbemaTVの解説。この対局を解説していた勝又清和六段と藤森哲也五段が、藤井四段が逆転したことに気づいた瞬間「マジか……」「さすがにこれは都成くん勝ったと思ったんだけどな」と絶句を繰り返し、まったく解説できなかったのである。神の一手かよ! 対局終盤での解説語録は以下の通り。

「マジか……」
「ヤバイ」
「なるほどねぇ……」
「見てる全員が鳥肌立ってる」
「こんなのありか」
「何が悪かったの? 都成くん」
「なんだこれは? 何なんだ?」
「良いものを見たのか怖いものを見たのか」
「これで14歳って信じられる?」
「これは詰んでますね」
「なんでこうなるのかね」
「絶対おかしい」
「さすがにこれは都成くん勝ったと思ったんだけどな」
「チャック開いたら裏から大山先生でてきても驚かない」
「スゴイものを見てる」
「素晴らしい」

──将棋がわからなくても、藤井四段の凄さはビンビンに伝わってくる!

・2人の構図もマンガみたい

ちなみに都成四段は、プロ直前の三段リーグを抜けるのに8年以上を要している苦労人。史上最年少でプロ入りした藤井四段とは真逆であり、2017年に入ってから藤井四段とは3回対局して、いずれも敗北を喫している。

また、最後のインタビューでは、都成四段は「指し進めるうちに模様が良くなり若干指しやすい感じになった。6一銀と踏み込んだ時には勝てると思った」と振り返っていた。

まるで、マンガ『3月のライオン』の宗谷名人と島田開(しまだ かい)八段のような構図を彷彿とさせるこの2人。藤井四段はもちろん凄いが、都成四段も頑張ってほしい。

参考リンク:AbemaTV産経WEST
執筆:中澤星児
イラスト:マミヤ狂四郎