立ち食いそばに何を求めるか? これが合わないだけで、店の評価は大きく変わってくる。例えば、トッピングのインパクトを求める人は、そばやつゆのみで勝負する店は名店になりえないだろう。

私(中澤)の場合、一番は空気感かもしれない。店から、そばから、客から、にじみ出ている空気感。そんな空気にどこか懐かしさを感じる店を発見したのでご紹介したい。

・小雨がパラつく中でも客足は途絶えない

その店の名は『きそば 鈴一』。神奈川県のターミナルステーション・横浜駅の西口すぐの場所である。小雨がパラつく中行ってみると、カウンターのみの店舗でそばをすするオッサンたちの影。すでに天候にも負けない魅力を感じさせる。

・客が紳士

軒先の券売機で「天ぷら玉子そば(410円)」を購入し、店内に入ると、カウンターの前で食べてたオッサンが体を避けてくれた。紳士である

お礼を言おうとしたところ、紳士は丼を片手で持ち上げる熟練の立ち食いスタイルでそばをすすっていた。なっ!? この紳士にとっては、カウンターさえも蛇足だと言うのか!? 「雨の中カウンターオンリーはちょっと入りにくいな」と思った自分が恥ずかしい。

ともかく、片時もそばから離れたくない様子の紳士。そんな紳士の食事を邪魔するのも無粋なので、会釈だけしてカウンターに食券を渡す。すると、ものの数秒でそばが置かれた。早っ! こっちが焦るレベルだ。

・あふれ出る優しさ

出てきた丼でまず目を引いたのは、鍋蓋のように覆いかぶさるかき揚げ天である。濃い関東つゆにキラめく卵は、白身がうっすら白く色づいてセクシーだ。さっそく食べてみたところ……

ウマイ! 甘めで優しい味のつゆが田舎風味のそばにマッチしており、さっきまでの焦りを忘れさせてくれる。黄身を潰せばその味はさらに優しくトロけるようだ。

・心のふるさと

さらに、たっぷりつゆを吸ったふわふわのかき揚げ天を食べれば、口の中いっぱいに広がる懐かしさ。これは紳士が片時も離れたくない気持ちもわかる。このそばは安心そのものだ。心のふるさとを横浜に見た

東京は田舎者の集まりだと人は言う。私もまさにその通りだと思う。だからこそ、こういったふるさとが都心からアクセスの良い横浜にあるのはプライスレス! 大都会に疲れたら一度立ち寄ることをオススメしたい。

・今回紹介した店舗の情報

店名 きそば 鈴一
住所 神奈川県横浜市西区南幸1-11-1
営業時間 7:00~21:30
定休日 無休

Report:立ちそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼つゆを吸ったふわふわかき揚げ天もなんだか懐かしい

日本, 〒220-0005 神奈川県横浜市西区南幸1丁目11−1