足あとを失うと書いて「失踪」。2017年5月31日、2人組音楽ユニット『三ツ星サラバ』のボーカル HITO さんが失踪していることが、メンバー平牧仁さんのブログにより発覚した。最近バンドマンの失踪多くね? そう気になったので、ここ最近のバンド失踪者を調べてみたところ……失踪しすぎィィィイイイ

・最近のバンド失踪者

『LiLY』ドラム・パンチさん(2017年5月上旬失踪、秋田で発見)
『Base Ball Bear』ギター・湯浅将平さん(2016年2月中旬失踪、脱退)
『MANGA SHOCK』ドラム・アシュラさん(2015年8月下旬失踪、発見)
『Kidori Kidori』ベース・ンヌゥさん(2014年2月下旬失踪、発見されるも脱退)
『the cabs』ギター・高橋國光さん(2013年2月上旬失踪、発見されるも解散)
『放ツ願い』ヴォーカル・前田典昭さん(2012年7月頃失踪、解散)
『baroque』ベース・万作さん(2012年6月下旬失踪、脱退)
『a flood of circle』ギター・岡庭匡志さん(2009年7月上旬失踪、脱退)

──2012年から年1人以上のペースで誰かがいなくなっていた。中にはフェスでお馴染みのバンド名もちらほら。また、聞いたことがなくても、どのバンドもライブハウスシーンでは知名度を持つバンドである。

では、そんな一見成功している方に分類される彼らが突然いなくなるのはなぜなのか? 売れないながらも10年以上バンド活動を続けている私(中澤)が、経験も含めて考えてみた。

・ガチで売れない

音楽ソフトの大手『タワーレコード』がガンガン潰れていることでもわかるように、今は音楽が売れない時代に突入している。私がとあるレーベルにいた頃に聞いた具体的な数値を挙げると、1枚目が3000枚売れたら大ヒットの部類に入るという。

だがしかし、80年代後半デビューのミュージシャンに聞いた話によると「1枚目が3000枚なんてクビレベル」とのこと。そして、そんな業界全体の衰退の煽りを受けるのが、私のような全く売れないミュージシャンではなく、ギリギリでやっていけてた人たちなのではないだろうか。

そう、そのギリギリのラインがどんどん上がっていくのである。レーベルも店も「キツイキツイ」と言うが、作ってる本人たちはもっとキツイ。クリエイターを殺してるのは、マージンで食ってるのにミュージシャンを偉そうに使い捨てる業界の体質だと思う。

・高齢化

もう1つ目につくのが、ミュージシャンの高齢化現象。以前なら、バンドは20代前半デビューが当たり前、25歳でヒットしなけりゃ諦めろという感じだったが、現在はこのラインがもっと上がっている

前述の『a flood of circle』も平均年齢は30歳、最近フェスに呼ばれ出したギターロックバンド『GOOD ON THE REEL』も平均年齢30歳。そういった20代後半から売れ始めた人たちが多く、売れない人たちも辞め時を見失っている。

と、これは自分にも突き刺さる諸刃の剣だが……。ふと冷静になってしまった瞬間が失踪の時なのかもしれない。

・SNSの普及

これまで、わかる範囲で考えてきたが、最もありそうなのが『SNSが普及したために失踪したのがわかりやすくなった』説。SNSのない以前は、誰でも知っている人が失踪しない限りニュースにはならなかった。

対して現在は、知る人ぞ知るようなミュージシャンでも、多数の固定ファンがいれば「失踪」がトレンドに入ってニュースになる。つまり、失踪者数は変わっていないが、それが明るみに出るようになったというだけの話だ。

考えてみると、インディーズシーンでのバンドマンの失踪は珍しいことではない。私の知り合いのバンドマンでも「メンバーが失踪したことがある」という人はいて、バンド界隈では失踪を差して「飛ぶ」という隠語が存在するくらいである。

実は、私も以前やっていたバンドでベースが飛んだことがあるが、その時貸していたオススメCDを3枚も借りパクされた。せめてCD返せ

・飛ぶ時にはひと声かけてから飛ぼう

まあ、そんな感じでよくあることとは言え、ライブなど先の予定が決まっているのに飛ばれる方はたまったものじゃないのも事実。しかも、当事者たちは泣き寝入りするしかない。そこで、もしこの記事を読んでいるバンドマンがいたら伝えたい。飛ぶ時は借りたものを全部返して、ひと声かけてから飛ぼう。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.