米テネシー州に住むエリック・シュミット=マッツェンさん(60)は、私たちが夢見るサンタクロースそのもの。自前の立派なヒゲに大きなお腹、チャーミングな笑顔を持つ彼は、プロのサンタクロースとしてこれまで多くの子供たちに接してきた。

しかしこの度、彼は「もう二度とサンタクロースになれないかもしれない」と感じるほど悲しい体験をしたそうだ。自分の腕の中で、5歳の少年が息を引き取ったのだ。

・サンタクロースに会いたがった少年

『USA Today』など多くのメディアが伝えたこの出来事。数週間前シュミット=マッツェンさんは、地元の病院に勤める看護師から「重症の少年がサンタクロースに会いたがっている。そのままの姿でいいから、今すぐ来てほしい」という電話を受けた。

一刻を争う事態に、彼はサンタクロースの衣装も身につけずに急いで病院に駆け付けた。

・部屋にはサンタクロースと少年だけ

サンタクロースを待っていたのは、集中治療室に入っていた5歳の少年。事態を察したシュミット=マッツェンさんは家族に対して、「状況に耐えきれず泣いてしまうなら、部屋には入らないで下さい。誰かが泣いている姿を見れば、私も泣いてしまって仕事ができなくなります」とお願いしたという。

そして彼だけが部屋に入り、他の人々は外から様子を見守ることになった。

・少年「僕はもうすぐ死んじゃうんだって。どうすればいい?」

シュミット=マッツェンさんは、少年と対面したときのことを「眠りかけているように見えたほど、少年は弱々しかった」と振り返る。

サンタクロースとしてベッドに腰掛けた彼は、「君はクリスマスを迎えられないと聞いたけど、そんなことは決してない! 君は私の1番のエルフだからね」と少年に声をかけた。エルフとは、サンタクロースの助手のことだ。

少年はサンタクロースの訪問を喜びつつも、「でも、僕はもうすぐ死んじゃうんだって。そしたらどうすればいいの?」と問いかけてきたそうだ。対するシュミット=マッツェンさんは「そこにたどり着いたときに “僕はサンタクロースの1番のエルフだ” って言えば大丈夫だよ」と返したのだった。

・「僕を助けてくれる?」と言い、息を引き取った少年

その言葉を聞いた少年は上半身を起こすと、シュミット=マッツェンさんの体を両腕で抱きしめてこう言った。

「サンタさん、僕を助けてくれる?」

彼も少年の体に手を回して、なにか答えようとしたそう。しかし口から言葉が出る前に、少年はそのままの体勢ですでに息を引き取っていたのだった。そのことに気付いた後も、シュミット=マッツェンさんはしばらく動かずにいたそうだ。

『BBC』のインタビューに対して彼は、「少年が息を引き取ったことが分かったとき、天を仰いだ私の目から涙が流れました」と語っている。

・すぐに病室を後にし、涙を流しながら帰路についたサンタクロース

少年の死に気が付いた両親は、すぐに部屋に飛び込んできた。「ダメ、ダメ、待って!」と取り乱して叫ぶ母親に少年の体を預けるやいなや、シュミット=マッツェンさんは部屋を後にし、顔を伏せたままナースルームの前を通り過ぎた。

「こんな悲しいことにはもう耐えられない」と胸が潰されるほどの悲しさを感じた彼は、前がよく見えないほど泣きながら家に帰った。翌日に予定していた自分の孫の訪問も「とても会えそうにない」とキャンセルしたと伝えられている。

・「もうサンタクロースにはなれないかもしれない」と思ったが……

『USA Today』には、シュミット=マッツェンさんの「戦地ですでに色々な経験をしてきたと思っていたが違った。医師や看護師はああいった光景を日々目にしているのだろうけれど、どうやって耐えているのか想像もできない」との言葉が紹介されている。

ショックを受けた状態が何日も続いた彼は、「もうサンタクロースにはなれないかもしれない」とも思ったという。けれどもその後サンタクロースとしてステージに立ったことで、そんな気持ちに少し変化があったようだ。その理由を彼は、こう述べている。

「子供たちの笑顔を見た後に気が付いたんだ。子供たち、そして私自身のために、サンタクロースでいつづける必要があることをね」

※この件の続報はこちら → 「サンタに抱かれて息を引き取った少年」のお話が急展開 / でっち上げだった可能性が報じられる

参照元:USA TodayBBCThe Independent(英語)、Facebook
執筆:小千谷サチ

▼エリック・シュミット=マッツェンさん *画像がスマホ画面からハミ出してしまう場合は、スマホを横向きにしてみてね