bahwan1

世界中で大ヒットを飛ばしたジブリ映画『千と千尋の神隠し』。その『千と千尋』について、ある噂が囁かれているのをご存知だろうか? それは、冒頭で千尋のお父さんが食べている “謎のプニプニ” の正体。あのプニプニは「台湾グルメの肉圓(バーワン)」だというのである。

だがしかし! 私・沢井メグは思った。「あのプニプニは私の知ってる肉圓じゃない」と! 気になって調べたところ、衝撃の事実が判明。結論からいうと、プニプニは肉圓ではなかった。繰り返す、プニプニは肉圓ではない!! 詳細は以下のとおりである。

・お父さんが食べているのは『肉圓』?

そもそも『肉圓(バーワン)』とは何なのか? 肉圓とは、台湾のB級グルメで、サツマイモ粉などで作られた皮の中に、豚肉をメインとした餡(あん)が入っているものだ。調理方法はいくつかあるが、蒸したものは、葛餅みたいに半透明でプルンプルン。謎のプニプニっぽいと言えなくもない。

bahwan1

だがしかし! 肉圓の皮にはそれなりに厚みがあり、お箸で持ったところであんなにテロ~ンと伸びたりはしない。千尋パパみたいに「じゅるッ」とすすって食べるものでもない。

私も年に何度も台湾に行くが、あんな肉圓は見たことない。念のため、台北出身や台湾通の友人に聞いてみたところ、「(肉圓とは)まったく思わない!」「バーワンってこんなにデローンとならんでしょ」とのことであった。……やっぱり怪しい。

bahwan2

・台湾メディアも疑問視

「謎のプニプニ=肉圓説」が、広く拡散したのは2014年頃だ。しかし、拡散元となったと思われる日本の記事には根拠が示されていなかった。その点について、台湾メディア『ET Today』は、このように指摘を入れている。

「九份が日本人観光客に人気なのは、『千と千尋』の舞台だと言われているからだ。しかし2013年に宮崎監督がインタビューで(九份が舞台であることを)ハッキリと否定している」

「このことから、プニプニが肉圓であるかどうかも、いまだ証明されていないと言えるのだ」

つまり、信憑性が薄いということ。また、日本の記事では、日本で肉圓が提供されている店が紹介されていたため、「店の宣伝だと疑わない方が難しい」とさえ言っているのだ。これは手厳しい。けど……ますます怪しい。

・ジブリに聞いてみた → 肉圓ではなかった

プニプニは肉圓なのか? 違うのか? こうなったら、公式に聞くしかない!! ということで、スタジオジブリの広報に問い合わせてみたぞ! ジブリサイドも、肉圓説がネットで拡散しているのも把握されているそう。それも踏まえて、とても丁寧な答えが返って来た。

「特定のものではないんですね」

つまり、「特別に肉圓をモデルにしたわけではない」というのだ。……違った。公式の回答は、「謎のプニプニ=肉圓」ではなかったのだ。

では、肉圓説は一体どこから来たのだろう。広報の方によると、九份がモデルという件も含め、“そうじゃないか” という話が断定的に伝わっているようだ、とのことである。また、宮崎駿監督は台湾に行ったこともないという。……そうなのか!

好きな作品なら、「ここが聖地かも!」「これがモデルかも!!」と想像するのは楽しいもの。今回の件はそんなワクワクが、一人歩きしてしまった結果だと言えるかもしれない。

参考リンク:ET Today
執筆:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.

▼お父さんがプニプニを食べるシーンが収められている。台湾メディアも「肉圓?」と報道

▼こちらが蒸した肉圓
bahwan3
▼外は葛餅みたいでプルプル
bahwan1
▼中は豚肉の餡が入っていた
baawan3
▼プルプルしてはいるが、テロ~ンと伸びたりはしない
bahwan2

▼こちらは2013年に公開されたインタビュー動画。3:00~宮崎監督は九份が『千と千尋』のモデルではないことが説明されている