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2016年2月某日。東京・新宿に事務所を構えるネットニュースサイト「ロケットニュース24」。この編集部の男性メンバーは全員喫煙者である。2月18日、つまり今日は「嫌煙運動の日」、そこで彼らは禁煙に挑戦することを決意した。

午前11時から夕方18時までの7時間、1本のタバコを吸うことも許されない。もしもその禁を破ったら、パンチパーマにしなければならない。男たちは無事に7時間を乗り越えることができるのだろうか? これは喫煙の誘惑と、パンチパーマという罰の間で葛藤を抱く男たちの、実話に基づいた魂の物語である……。

11:00

この日は、2週に1回行われるミーティングだった。会場は事務所下のカフェ。普段ならタバコをふかしながら、アレやコレやと話しをするのに、この日は煙をくゆらせることができない。実はこの禁煙チャレンジには、かなり過酷な仕掛けが用意されていた。元喫煙者のナガハシ記者には、タバコを吸ってもらうことにしていたのだ。

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開始前に気合いを入れて、長き7時間に備えたはずのメンバーに緊張が走る。動揺を隠し切れず、編集長GO羽鳥の目はうつろだ。Yoshioはナガハシ記者に向かって「俺に煙を吐いて」とお願いする始末。

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まだ1時間も経っていないというのに、残りの6時間を乗り越えられるのか……。ミーティング終了後、事務所に戻ると早くもサンジュン記者に異変が起きた!?

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サンジュン記者は1本の割りばしを口にくわえて吸うと、「こうすると気が紛れる」と言い出したのだ。まともではない……。彼らが向き合っている相手が、いかに巨大であるか、うかがい知ることができるだろう……。

12:00

開始から1時間が経った。最初の突飛な行動は、いくぶん収まったが「タバコを吸いたい」という気持ちが、身体の内側からジワジワと湧いてくる。

私(佐藤)の場合、頭がぼんやりとして「風邪かな?」と思うような、熱っぽさを感じた。同じような身体的変化を、GO羽鳥も訴えていた。

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事務所の喫煙スペースはベランダということになっている。タバコを吸えない以上、ベランダに出る意味がない。しかしサンジュン記者、中澤記者は落ち着かないらしく、理由もなく出ていた。

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まったく気が休まらないのに、なぜベランダに出てしまうのか? それは、喫煙行動が習慣化されているので、ジッとすることができないからだ。タバコ休憩がなくなる分、仕事に集中できるはずが、逆に集中できなくなっていた。私も同じである。

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13:00

開始2時間、洗礼の時間がやってきた。ナガハシ記者がまき散らす副流煙を、ありがたく嗅ぐのだ。ナガハシ記者はとても気の優しい男である。だが、この時ばかりは鬼のように見えた。何という憎たらしい顔をしているのだろうか?

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ひとりしかタバコを吸わないから、事務所の空気は普段よりもはるかにクリーンだった。しかし禁煙チャレンジメンバーの心は、どんよりとしている。おまけに頭はぼんやりしているので、全然作業効率が上がらなかった。はたして、禁煙は本当に良いことなのか? と疑問がよぎる。

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14:00

ここで再びYoshioに異変が!? 洗礼の時間に受けた副流煙が忘れられずに、単独行動に出てしまう。こっそりとナガハシ記者を呼び出して、1人洗礼の暴挙に出たのだ。みんなで一丸となって困難に立ち向かうはずが、チームに亀裂が生じそうになっていた。終了まで残り4時間……。

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15:00

禁煙時の離脱症状は、それを知らない人にとって想像もつかないことだろう。私の場合は、朦朧(もうろう)とすると共に頭痛を伴うことがある。これがとても苦しい。また口さみしさからガムや菓子を食いまくってしまったりする。メンバーは事務所にある菓子類に手をつけはじめた。

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メンバーのなかでもっとも食の細いGO羽鳥は、コンビニで甘味のモノを買い漁り、口さみしさに堪えている。そして絶え間なく襲ってくる睡魔に苦しめられていた。

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16:00

タバコを吸いたい欲求は、まるで寄せては返す波のようだ。グッと身体の奥底から欲求が湧き、もう我慢できないと思ったら、スッと引いて行く。この繰り返しである。

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そろそろ脱落者が出てもおかしくない、危険な時間帯に入ってきた。ゴールは見えている。しかしそのゴールが、とてつもなく長く感じられた。走っても走ってもたどり着かない。普段よりも時間経過がはるかに遅く感じられる。メンバーの間に焦りが見え始めた。

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17:00

残り1時間という時にハプニング発生! どこからともなく「誰かが吸って終わりにすればいいじゃないか」、そんな声が聞こえたのだ。ここまで共に走ってきた道のりを否定する発言。あってはならないことだ。残り1時間、編集部は重苦しい空気と緊張感が漂った。負けるのか、男たちは……。

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時計の動きは、呆れるほど遅かった。しかし確実に1秒1秒時を刻み、前へ前へと進んでいる。そうだ、歩みをやめてはいけない。たとえその “歩” が遅かったとしても、歩く限り確実に前に進んでいくのである。

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18:00

「タバコを吸いたい」、その欲求を忘れて仕事に向かった時、時計の針はすでに18時を過ぎていた……。男たちはやったのだ、やり切ったのだ。7時間もの長きにわたって、1本のタバコを吸うことなく。また負けたらパンチパーマというプレッシャーに耐えて、最後まで走り切った……。

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無事走り切った7人の男たち。この偉業は、この先もずっとロケットニュース24編集部で語り継がれることだろう。言うまでもないことだが、魂をかけて7時間を耐えきったあとの一服は格別である。皆が口々に、クラクラすると語った。

夢をありがとう。そしてこれからもタバコを愛することを、男たちは誓った……。

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

▼やり切った後のタバコは格別に決まってる!
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▼OASISの名曲「Don’t Look Back In Anger」と共に、この記事をもう一度お読みください。めちゃくちゃ感動します