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こんにちは、佐藤です。2015年9月24日に起きたある事件のことを覚えているだろうか。その事件とは、iPhone6sを誰よりも早く購入するはずが、予約店舗を間違えるというハプニングだ。行列一番乗りが不可能であることを知り、購入そのものを断念した……。

・なぜかお詫びが来た!

この珍事を受けて、思わぬところから連絡が入った。連絡してきたのは、クラウド型ビジネスチャットツール「チャットワーク」社である。なぜか担当者はお詫びを伝えてきたのだ。一体なぜ? 担当者は私が行列撤退をした記事を読んだうえで、こう伝えてきた。

・チャットワーク担当者のお詫び

「日頃チャットワークをお使いいただき誠にありがとうございます。このような話題で楽しませていただいたのは大変ありがたいのですが、ビジネスコミュニケーションの効率化を謳っておりますチャットワークをご利用いただきながら、もしや佐藤さまの責任の一端は私どものツールの不備もあるのではと、恐縮している次第です」

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・ツールのせい?

いやいやいや、そんなことを思わせてしまったなんて申し訳ない、本当に大変申し訳ないでござる! 私のバカさは御社に責任はござらんよ、まったく。メールはさらにこう続く。

「ツールにこんな機能があったら、こんな使い方をガイダンスしていたら、こんなコミュニケーションミスはなかったのでは? といった厳しいご指摘がもしございましたら、是非頂戴したいと思い、連絡させていただきました」(担当者メールより)

・申し訳ありません

本当にすみません。まさか私のバカさをシステムが原因と考える人がこの世にいるとは、正直信じられない……。とにかく申し訳ないことをしてしまった気持ちでいっぱいなので、謝りに行くことにした。

・普通のマンション

現地に着くと、一見普通のマンション。こんなところに会社があるの? もっとデカい会社を想像していたのに全然違う。外観からは海外展開を図る会社が存在しているように見えない。このマンションの2・3Fで業務を行っているという。

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・なぜチャットワークを作ったのか

出迎えてくれたのは、同社の専務取締役CTO山本正喜さん。チャットワークの生みの親である。私はひらにお詫びすると共に、かねてから気になっていたことを尋ねた。「そもそもどうしてチャットワークを作ったんすか?」と。

チャットワークとは、チャット機能とタスク管理を合体させたビジネスツールである。このサービスが登場する2011年以前は、チャットツール「スカイプ」を使っていた企業も少なくないはず。しかしスカイプではタスクの管理をしにくく、ビジネスに最適と言えるものではなかった。そこで、山本さんはチャットワークの原型を作り出したのである。

・たった1人でスタート

山本さんが、兄であり社長の山本敏行さんと前身のEC studio社を起業したのは学生のとき、2000年のことだ。その当時開発に携わっていたウェブサービスが失敗し、会社は焦燥感に包まれていたそうだ。そんななかで山本さんは、革新的なサービスを開発したと自負していたという。

山本「良いもの作ったって思って社内で提案したら、あっさり却下されましたよ(笑)。今さらチャットサービスは無理だという理由で。でも諦めずに開発を続けていたら、社内ツールとして利用するならいいってことになったんですよね。ただし、開発は1人でやることになったんですけどね(笑)」

現在多言語にも対応し、アメリカにも拠点を置いて、今後海外でも展開していこうとしているサービスが、まさかたった1人で始まったとは……。しかも開発当初、社内でも賛同を得られることがなかったというから驚きだ。どうやって社内での賛同を得ていったのだろうか? そのやり方はかなり大胆、というか強引。

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山本「開発当初は賛同を得られなかったんですけど、社内のシステムを強引にチャットワークに移行しましたよ。最初は不具合連発でめちゃくちゃ不評で(笑)。いろいろ要望が出たんですけど、それをすぐに反映するように努めていったら、大体3カ月くらいで高評価を得るようになって、次第にみんなも愛着を持ってくれるようになったんです」

事業化への転機は、開発を始めてから3カ月後、つまり社内でも良い声が聞こえるようになった時期に突然訪れた。それは社長の敏行さんがネット番組で紹介したことに端を発する。番組で紹介したところ、にわかにネット上で話題を呼び、敏行さんが乗り気になって事業化のゴーサインが出た。

・いきなり1本化して社名変更、いきなり渡米

ここでEC studio社は大胆な決断に踏み切る。それは、事業内容を整理してチャットワーク1本に注力していくのだ。しかも社名を「チャットワーク」に変更。マジかよ、最初は誰も賛同してなかったじゃないか! 社名まで変えちゃうなんて!! 社名変更の会議は役員3人でたった15分で決めたのだとか。ハンドル切り過ぎじゃないの!?

山本「社員みんながチャットワークに可能性を感じていたんですよね。すでに愛着もあったし。それだけじゃなくて、うちの基本的な理念にもマッチしてたんです。中小企業のIT活用を支援していくことが、もとの理念にあったから、このサービスは結構しっくりきてました。どこでもそうだと思うんですけど、世界に打って出られるプロダクトってなかなか生まれない。この機会に賭けてみようってなったんですよ」

賭けという言葉はまったく同社にふさわしい。社名変更して事業を1本化しただけでなく、社長は2012年にアメリカに移住してしまったのだ。以前から海外での展開を視野に入れており、チャットワークがうまく行きそうであると確信するやいなや、シリコンバレーに引っ越した。なんというスピード感。「世界の働き方を変える」をビジョンに掲げている同社は、着実のその手応えを感じ始めている。

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・働き方を変える

山本「チャットだからといって、IT系の企業にだけ重宝されている訳ではないんです。20~50代が働くある農園では、導入したことにより軽微なミスが10分の1に減ったという事例もあります。また非IT系で売上が1000パーセント上昇したという報告もありました。弁護士さんや税理士さんでも、うまく活用している声を聞きます。少しずつですが、着実に働き方を変えて行けていると思いますね」

今後は海外展開を行いつつ、成長速度を上げてプロダクトのインパクトを大きくすることを課題としているようだ。まさかたった1人で始まった事業が、ここまでの成長を見せるとは。おそらく社員一同、もしかしたら山本さん自身も想像していなかったのかもしれない。

・チャットワークが進化しても……

そんな会社に、無意味に気を遣わせてしまうとは……。いくらチャットワークが進化しても、私が予約店舗を間違える過ちを防ぐことはできないと思うのだが……。本当にすみませんでした……。

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

▼チャットワークの本社は、東京・台東区のかっぱ橋道具街にある
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▼めっちゃデカいカブトムシの看板見つけた
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▼本当にこんなところに会社があるの?
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▼ここ?
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▼以前使っていた3階はミーティングスペースに。現在は2階が実務を行う場所になっているそうだ
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▼専務取締役CTOの山本正喜さん。チャットワークの生みの親である
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