自分がどんなに頭がいいと思っても、どんなに他人の気持ちが分かると思っていても、実際にその人の立場に立たなければ、見えてこないものがある。

例えば、車いす利用者の洋服。普段から車いすに座っていないと、車いす利用者にとっての “洋服の着やすい・着にくいポイント” を実感するのは難しいかもしれない……。そしてこの度、ある車いすの女性が『車いす向けのジーンズ』を発表したところ、「こんなの待っていた!」と話題となっているのだ。

・車いす利用者用のジーンズを!


2007年、21才で自動車事故に巻き込まれ、下半身麻痺となったアメリカのヘイディ・マッケンジーさん。以降、「車いす利用者にとって必要な機能と、素敵なデザインを兼ね備えた洋服が見つからない」と思ってきた彼女は、他の車いすの人々も同じ悩みを抱えているのを知ることになる。

例えば、車いすを使いながら一般に流通しているジーンズを履いていると、背中側がズリ落ちたり、着脱が難しかったり、お尻や腰の高い位置のポケットが使いづらいなどの問題があるのだとか。

・アクセスしづらいお尻にはポケットなし

それから3年後の2015年。マッケンジーさんは、デザイナーのクリスティン・アレクサンドラ・ティッドウェルさんとブランド Alter Ur Ego を立ち上げ、車いす利用者にとって使い勝手が良く、かつオシャレなジーンズを発表した。

伸縮性に優れたスパンデックスが使用されており、腰回りをスッポリと包むハイウェストはゴム状。また、アクセスしづらいお尻にはポケットはなく、代わりに両側のヒザの位置に大きなポケットが付けられている。確かに座った状態だと、この位置のポケットの方が手が伸ばしやすい。

一着80ドル(約9800円)で、男女兼用のデザインのこのジーンズは、他にも以下の様な特徴がある。

・ウェストの背中側の方が長い
・お腹側でサイズを調整可能
・ジーンズを引っ張り上げやすいように、内側にストラップが付いている
・通常よりも長めの裾
・カテーテルにも対応

・マッケンジーさん「誰もがファッションを通じて自己主張できる様に」

もちろん、車いす利用者にとって機能的な衣類だって流通している。しかし、その多くは高齢者向けのデザインだとマッケンジーさんは話す。

「機能的な衣類のほとんどが、高齢者向けです。なので私は、誰もがファッションを通じて自己主張できる様な、オシャレなものを作りたかったんです」

・「こんなデザイン待ってた!」と話題に

このジーンズが発表されたところ、ネット上で話題となり、クラウドファンディング Kickstarter では2万8627ドル(約350万円)ものファンドが集まった。

そしてマッケンジーさんの元には「ありがとう!」「絶対に買うわ!」と多くの人から喜びのメッセージが寄せられ、車いす利用者でない人からも「こんなジーンズ欲しかった!」と言う声が聞かれたとのことだ。

今後も、機能性と素敵なデザインを兼ね備えた、車いすの人々のための洋服を発表していく予定のマッケンジーさん。「人々に自信を与え、社会的な壁を壊していきたい」と話しているのだった。

日本にもアメリカにも、車いす利用者向けのジーンズはすでに存在しているが、オシャレの選択肢が増えるのってヤッパリ嬉しいものだ。

参照元:Alter Ur EgoFacebookMashableKickstarter(英語)
執筆:小千谷サチ