今やSNSなどのネットサービスが社会や個人の人生に大きな影響を与える時代だ。YouTubeの投稿動画がきっかけで一躍注目を浴び、有名になった人は数知れない。元ホームレスのテッド・ウィリアムズさんも、ネットの力によって、一夜にして人生が変わった人の一人だ。

昨年1月、道路でダンボール看板を持ちながら話すウィリアムズさんの動画がYouTubeに投稿されるやいなや、そのディープでメロウな美声が注目され、爆発的な視聴数を記録。一躍有名人となった。日本でも話題になったので、当時のことを覚えている方も多いだろう。あれからの1年間がどのようなものだったのか、追ってみた。
 
・オファー殺到でアメリカンドリーム実現
動画がアップされた直後、メディアは「黄金の声の持ち主」と彼の声を絶賛し、数々の仕事のオファーが彼に殺到した。食品メーカーのクラフト社のCMにも起用されることになった。

自分の才能を武器にどん底からはい上がる、これぞアメリカンドリーム。彼のサクセスストーリーに励まされた人も多かったにちがいない。しかし、実際には全てが突如として良い方向に展開したわけではなかった。
 
・次々と明らかにされる暗い過去
「黄金の声」をしばらく称賛した後、メディアはウィリアムズさんの過去を追跡し始めた。すると、次々と暗い過去が明るみに出た。度重なる逮捕履歴、アルコール依存・ドラッグ中毒であったこと、9人の子どもを放棄したこと。話題は尽きなかった。

称賛モードから一転して、彼の暗い過去が取り沙汰されるにつれ、当初仕事をオファーしていた企業がオファーを取り下げることもあったという。

またメディアが企画した疎遠になった家族との「再会」もぎこちないものとなり、実の娘との激しい口論が警察沙汰になり、LA警察に一時拘束されるというような事件もあった。
 
・乗り越えなければならないアルコール依存
彼がどん底に陥る原因ともなったアルコール依存に関しても、まだ完全に回復していなかった。有名な心理学者にアルコール依存のリハビリセンターに行くように強く勧められたものの、治療経過をメディアのネタにされていると感じ、辞退した。

一つの動画がきっかけでメディアの注目が集中し、一夜にして彼の生活がバラ色になったかというと、決してそうではなかった。彼自身には家族との関係やアルコール依存など、時間をかけて解決しなければならない問題が残されていたのだ。

乗り越えなければならない問題の1つ、アルコール依存に関しては、彼は前述のメディアの企画は辞退したものの、自主的にリハビリセンターに通ったとのこと。
 
・そして今
現在ウィリアムズさんはブルックリンの自宅マンションでガールフレンドとリハビリのコーチと一緒に生活している。現在の住まいを映した映像では、今の状況に感謝し、幸せそうに喜んでいるウィリアムズさんの姿を見ることができる。

「黄金の声」を生かした仕事も継続中だ。最近では、クラフト社がバレンタインのキャンペーンにウィリアムズさんを再度起用した。ハッシュタグ「VoiceOfLove」をつけて投稿されたツイートからピックアップしたものを彼が実際に読み上げるそうだ。

また、彼の自伝『A GOLDEN VOICE』が今年5月に販売されるとのこと。彼自身によって語られるこれまでの人生が一体どのようなものなのか。メディアを通してのみ彼を見てきた私達に、新しい発見をもたらしてくれるのではないだろうか。

消えることのない暗い過去があったとしてもチャンスを与え続ける企業と、彼を信頼する周囲の人からのサポートを得ながら、人生を再建するための彼の挑戦は今も続いている。

(文=佐藤 ゆき
参照元:GOOD(英文)、Youtube OfficialTedWilliams