2003年に公開された映画『スクール・オブ・ロック』をご存知だろうか。この映画は、厳格な規律のある小学校の教師になりすまして、子どもたちにロックを教え、バンドを結成させるという物語だ。主人公のデューイ(ジャック・ブラック)は魂を込めて子どもたちにロック魂を植え付けていく。

この作品にはモデルとなった人物がおり、彼は実際に音楽学校を営んでいた。私(記者)は最近、そのモデルとなった学校のドキュメンタリー映画を知ったのだが、その彼はジャック・ブラックも衝撃を受けるほどのロック馬鹿だった。ロックが足りない生徒にはとことん厳しく指導し、「ぶん殴るぞ!」や「ぶっ飛ばすぞ!」などの汚い言葉を平気で口にし、挙句の果てには「気を抜いたら、一家皆殺しにしてやる」と、トンでもない脅し文句まで言うのだ。

ハチャメチャな指導者といわざるを得ない。生徒が着いてこれなくて、学校は潰れたのでは? と思いきや、彼は現在全米で72校も展開しており、若き才能の開花を手伝い続けているのである。

映画のモデルになった人物は、ポール・グリーン氏(39歳)。彼は現在、レコーディングプロデューサー、映画監督、脚本家、シンガーソングライター、音楽教師、アントレプレナーなど、多彩な活躍をしている。

当然ながら、いきなりそのような肩書きの持ち主になった訳ではない。フィラデルフィアで生まれ育った彼は、15歳で家を飛び出し、10代の頃はバンド活動に明け暮れた。音楽以外に取り得のなかったかれは、大学でギターを教える生活するようになる。時期を同じくして、彼は自身の学校「ポール・グリーン スクール・オブ・ロック・ミュージック」を開校。

大学で学生たちに教え始めた頃、彼は音楽理論を丁寧に教えることを心がけていた。ところが、理論をいくら勉強しても、実際に楽器を持ってプレイするとなると、全然ダメ。彼は頭で教えるだけでは不十分と感じ、週末ごとに生徒を招き、一緒にジャムセッションを開始したのだ。そうしたところ、理論では伝わらないものがあると気付いた。そのうちに、音楽理論がわからないという生徒でも、曲作りに目が向くようになったのである。

彼はこのときの経験を元に、理屈では伝わらないものを音楽を通して伝えていくように心がけたのだ。また、子どもだからと言って生半可の気持ちで接さないようにと、自らを律したのである。

この後に大きなチャンスが訪れた。それはギャラリーを構える彼の友人が、ステージとして利用するように頼まれたのである。それ以来、彼のスクールのメンバーは定期的にライブの出来る会場を得ることとなり、生徒たちはお金をとって演奏をする「プロ」のミュージシャンとして活動するようになったのだ。

彼のスクールには8~18歳の生徒がいる。その全員がうまく演奏できる訳ではなかった。いや、むしろ下手な部類だろう。その下手な生徒でも、お金をとれる演奏をしなければならない。「できない」は理由にならなかった。グリーン氏は「やる気のある奴にはとことん付き合う」と、徹底的に生徒と向き合っていった。もう押し付けだろうが、迷惑だろうが関係ない。「ロック」の名のもとに生徒に厳しい言葉を浴びせまくるのである。

そうして厳しい指導をしていくうちに、生徒たちはメキメキと実力をつけて行き、最終的にドイツのロックフェスティバルに招待され、大人でも舌を巻くような難解な曲を披露してみせた

それからグリーン氏のスクールは有名になり、入校を希望する生徒が殺到。現在全米で学校を展開、各校の選抜を集めてオールスターズが組まれるほどの才能の集まる音楽学校になっている。

なお、この作品は日本で公開されておらず、「ロックスクール~元祖白熱ロック教室~」のタイトルで、ビデオオンデマンド配信されている。それにしても、子どもよりも無邪気で理不尽、ロックだけを原動力に全米で学校を持つに至ったグリーン氏は、まさしく「ロック」と言えるだろう。

参照元:Youtube moviecollectionjp 松嶋×町山 未公開映画を観るTV

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