首都プノンペンから南に230キロ。タイランド湾に面したシアヌークビル(コンポンソム)は、静かなビーチが広がり、乾季にはバックパッカー風の外国人や家族連れで賑わう、カンボジアきっての行楽地だ。

数年前、このひなびた港町にも外国企業によるリゾート開発の波が押し寄せ、そして今、ブームは絶頂期に……。貧乏くさい街並みが徐々に垢抜け、成金風のいでたちで高級車を乗り回す「怪しいビジネスマン」を見かけることも多くなった。

中でもダントツに数が多いのが、意外なことにロシア人。島ひとつ買い取って建設中の巨大リゾート計画を始め、カジノ、レストラン、クラブ……町の至るところで商売を始め、今じゃロシア語のフリーペーパーまで発行されている。もちろん、ガラの悪さもダントツだ。

今回訪れたのは、町の中心からだいぶ離れた林の中で、強面のロシア人ファミリーがひっそり経営するナイトクラブ。昼間なので併設のワニ園だけが営業中(ところで、なんでワニ園?)。千手観音が見下ろす駐車場には、オレンジのハマーH2をはじめ、いかにもなヤクザ車が勢揃いしている。

ひときわ目立っていたのが小型車ほどもある三輪バイク。ボディは昔の戦闘機を思わせるリベット留め(よく見ればステッカー)。後部座席は二人掛け。コックピットには「レース時のみ使用」と書かれた謎のカバー付きトグルスイッチが並び、電飾つき。ウィングにはCCCPな赤い星が!

このド下品なバイクのオーナーに是非、話を聞きたかったが、ワニ園のカフェで談笑中のロシア人グループを眺めるに、どう好意的に考えても全員カタギではなさそう。本当はいい人たちなのかもしれないが、確かめる気になれなかった。
(取材・文=クーロン黒沢