誰しも生まれてきた以上、自分を作り出した2人の親を持つ。しかしこれからは、「3人」の親を持つ子どもが誕生してくるかもしれない。言い換えるなら、3人の遺伝子を使って子どもを生む技術が開発されているということ。

では、なぜこのような技術が開発されているのだろうか? それを知るには、まずミトコンドリアDNAについて理解する必要がある。

ミトコンドリアDNAとはその名の通り、ミトコンドリア内にあるDNAのことで、これは細胞核にあるDNAとは違い、すべて母親から受け継いだものである。しかし女性の中には、突然変異したミトコンドリアDNAを持つ人もおり、これは自分の子どもに健康上深刻な問題をもたらすとされている。

そこで研究者たちがそういった問題を抱えるカップルのために、ドナー女性からのミトコンドリアDNAを使って、子どもを生める技術を開発しているというわけだ。

現在開発されている方法は2つある。まず1つめは、「maternal spindle transfer(母体紡錘体移植)」。この方法では、まず女性の卵子から細胞核DNAを抜き出し、DNAが取り除いてあるドナー女性の細胞核にその細胞核DNAを入れ込む。そして、その後男性の精子と受精させる。この方法はすでにサルを使って実験されており、従来の体外受精と同じ出産成功率だったという。

そして、2つめの方法は「pronuclear transfer(前核移植)」。この方法は、女性の卵子と男性の精子を体外受精させた後、受精した卵子の細胞核をDNAが取り除いてあるドナー女性の細胞核に移植するというもの。

昨年ダグ・ターンブル教授とニューカッスル大学の研究者たちが、この方法を使って3人の親を持つ80のヒトの胚を作ったのだが、現在法律上、遺伝的に作り変えた胚を母親の子宮に移植することは違法とされている。

どちらの方法とも、受精した卵子にはドナー女性のミトコンドリアDNAと共に、きちんとカップルの細胞核DNAが含まれている。

また、ミトコンドリアDNAが与える影響は非常に小さく、生まれてくる子どものDNAは、結果として98パーセントはカップル(男女)から、2パーセントはドナー女性からくるとされている。しかし代理出産と違って、ドナーも生まれてくる子どもに遺伝的影響を与えているのもまた事実。

これらの技術に関して、体外受精や胚研究に関するイギリスの独立規制機関「Human Fertilization and Embryology Authority(ヒト受精・胚研究機構)」は次のように述べている。

「今回の母体紡錘体移植と前核移植の技術は、自分の子が深刻または致命的な遺伝性疾患にかかってしまうかもしれない人たち、もしくはこれ以外の方法で自分たちの子を生むことができない人たちにとって、潜在的に有効なものです。また現在示されている科学的証拠を見る限り、これらの技術は危険だとは言えません」

これを受けて、ターンブル教授たちは自分達の研究への是認として喜んでおり、現在ヒト受精・胚研究機構から行うよう指示された実験に向けて、準備を進めているとのこと。

私たちの想像を超える速さで発達していく遺伝子技術。もしかしたら、様々な人のDNAを組み合わせ、親の望み通りの能力・外見を持つ「デザイナーベビー」が誕生するのも、時間の問題なのかもしれない。
(文=田代大一朗

参照元:io9(英文),New Scientist(英文)