現在あるビデオが大きな反響を呼んでいる。そのビデオには、子どもの死を目の当たりにして呆然とする母親チンパンジーが映し出されており、多くの人が子を想う母親の姿に心打たれた。

このビデオはザンビアのチムフンシ(Chimfunshi)という野生動物保護施設で撮影されたもので、子どもの死に直面するチンパンジーをこれほど詳細に撮影できたのはこれが初めてだという。

今回ビデオを撮影した研究員によると、このビデオに出てくる母親チンパンジーは死んでしまった16カ月のわが子を24時間以上抱き運んでいたという。もともとチンパンジーは、常に子どもを身の傍に置きながら育てる動物で、親は2歳になるまで子どもを抱きかかえて育てる。それを考えると、今回亡くなった16カ月のチンパンジーは、母親にとってまだまだ目が離せない存在だったのであろう。

そして、母親がそのわが子の亡骸を地面に置いたところから今回のビデオは始まる。母親はわが子を地面に置いた後、子どもの死を確認するかのように顔や体をさすり続ける。しかし子どもは全く動かない。母親はその死を受け入れられないのか、離れたところからその亡骸をじっと見つめ続ける。そしてあきらめられないかのように、また子どものところに戻ってくる。これを何度も繰り返し、ビデオの最後には、たまらずわが子の亡骸を抱きかかえていく。

この撮影に参加していたクローニン博士は、この後母親は仲間の意見を求めるかのように、自分の群れに帰って行ったと証言する。そして次の日には、もう子どもの亡骸を抱きかかえていなかったとのこと。

今回のビデオは、チンパンジーが死というものをどう受け入れていくのかを映し出しており、その学術的価値は非常に高い。このことについて、クローニン博士は「このビデオは非常に価値があるものです。なぜならこれは人間以外の霊長類が、頭の中で何を考えているのかを私たちに問いかけるものだからです」と述べ、今回のビデオがこれからの霊長類研究に大いに役立つことを示唆した。

また、このビデオを見た人たちが「感動した。やっぱり動物も感情を持っているんだね」、「悲しさに耐えられず、大泣きした」など多数のコメントを寄せており、わが子を慈しむその母親の姿に多くの人が感動したようだ。

確かに今回のビデオは、わが子の死に直面した母親を映す悲しいものだが、それと同時に動物もやはり他を愛するんだと再認識させてくれる温かいビデオでもある。児童虐待など親が自らの子を殺す事件が起こる今、私たち人間は動物から多くのことを学ぶべきではないだろうか。

screenshot:YouTube ResearchChimfunshi

▼こちらがそのビデオ


■参考リンク

DailyMail(英文)