【コラム】カツサンドを食べると今でも20年くらい前に後楽園ホールの2階バルコニーで出会った「健介カットの熱狂的FMWファン」を思い出す(その2)

話を聞けば、彼はまだ高校1年生。たしか当時の私は中3だったので、学年だったら、いっこ上。だけど、歳は私より2つか3つだった。もしかして、その健介カットで学校に行っているのか……と思いきや、実はそうではないらしい。

「前の学校で、ちょっと、いじめられたというか、そんな感じになって辞めたんだ。で、今は定時制の高校に入りなおして勉強しているんだ。プロレスっていいよね。プロレス見てると、元気が出てくるっていうか。特にFMWがいい。大仁田最高だよね。あ、この髪型? 健介だよ。新日本も好きだね」。

……やっぱり健介だった。分かっていたが、やはり健介カットだった。

それはさておき、やがて休憩時間になった。私の便意も限界だったので、先にトイレに行かせてもらった。バトンタッチして、ふたたび私が “場所確保要員” になった。だが、またもケンスケの帰りが遅い。休憩明けの試合が始まっても、まだ帰ってこないのだ。

・ケンスケ「友情のしるしに……」

──試合時間10分経過。そろそろ、この試合も終わっちゃうぞ……という時、やっとケンスケが帰ってきた。手には、なにやらビニール袋を持っている。そして、「友情のしるしに……」というキザなセリフと共に、その袋を私に手渡したのだった。

またカツサンドなのか!? ……と思いきや、中には「写真付きの大仁田厚サイン」と「巨大なFMWステッカー」が入っていた。

なんだかオゴられてばかりで申し訳なく思い、「いや、いいですよ、こんなにたくさん!」と遠慮したが、彼は「いいんだ。FMWファンなら、オレたちはもう友達だ」との姿勢を崩さない。ありがたく受け取ることにした。

・彼は通(つう)だった

ちなみに彼は『超電戦士 (ちょうでんせんし) バトレンジャー』も好きらしく、バトレンジャーのことを「バト」と呼んでいた。「バトがんばれー! バトッ!!」と声援を送る彼を見て、私は「通(つう)だなぁ……」と関心したものだ。

メインの試合は、もちろん大仁田。6メンタッグマッチだったと記憶している。その試合が始まる前、彼は「後楽園だったら、俺はいつもここにいる。見かけたら声をかけてくれ。また一緒に見よう!」と、別れの挨拶を先にしてきた。

・ほれぼれするほどの『大仁田信者』だった

試合中、ケンスケは一生懸命「オオニター!!」と、大仁田のことを応援していた。どこからそんなパワーが出て来るのかと思うほどの熱狂大仁田コールであり、どこに出しても恥ずかしくない、ほれぼれするほどの『大仁田信者』であった。

そして、試合が終わったあたりで、突然ケンスケは「じゃ! またね!!」と私に言い残し、どこかへ消えた。もしかしたら、試合後のリングサイドに行って大仁田厚の「聖水」を浴びていたのかもしれないが、私が2度目のトイレ(大)に入っている最中、大仁田のパフォーマンスは終わっていた。

後日、一度だけ彼の姿を後楽園ホールで目撃した。でも、誰かと談笑していたので、なんとなく声はかけられなかった。今、彼は何をしているのだろう。まだ大仁田のことが好きなのかなぁ……。カツサンドを食べると、今でも “ケンスケ” のことを思い出すのだ。

執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.