普段何気なく使っている鉛筆。あなたは鉛筆を筆記以外の目的で使用したことがあるだろうか? アメリカには鉛筆を芸術品に変えてしまうすごい能力を持った人がいるという。

米国コネチカット州出身のダルトン・ゲッティーさんは、鉛筆の芯や先端部にさまざまな作品を彫っている。鉛筆の芯に魅せられた彼は、25年間で100点に及ぶ作品を製作

エルビス・プレスリーや全長1センチメートルの小さな小さな教会、チェーンでつながった輪(ちなみにチェーンの部分も黒鉛で作成)などを彫りあげた。どれも顕微鏡でしかハッキリと見えないサイズの作品で、かなり精巧な作りをしている。

イギリスのニュースサイト『デイリーメール』電子版のニュースによれば、ダルトンさんの本業は大工。彼は鉛筆アートにハマッたきっかけをこう話す。

「学生の頃は友人の名前を鉛筆に彫って、プレゼントしたりしていました。その後、彫刻を始めてからは大きな作品を主に作っていましたが、できるだけ小さいものを彫ってみたくなったのです。鉛筆アートを始めた当初は、さまざまな素材を試してみました。チョークとかね。ある時、鉛筆の芯に小さな作品を彫ったらすごいことになるんじゃないか、とひらめいたのです」。

ダルトンさんは、カミソリの刃と針、そして彫刻刀の3つの道具を用いてこれらの作品を制作している。驚くべきことに、ダルトンさんは作品の製作には虫眼鏡などは用いないという。さらに、作品を販売することはしておらず、友人に贈り物としてあげるだけだという。

「説明するのが難しいんですけど、作品を製作していること自体が瞑想をしているのと同じような感じなんですよね。作品を作るときはスタジオにこもり、音楽もかけません。製作に集中するのです」。

ダルトンさんが一番長い時間をかけた作品は、鉛筆の芯で作ったチェーンを2本の鉛筆につなげた作品で、2年半もの歳月がかかったという。「これが一番時間がかかった作品。でも、完成したときはすごくうれしかったよ。見た人はみな、2本の鉛筆が本当につながっているんじゃないかっていう錯覚をおこしたみたいだからね。ははは」

「そのとき取り組んでいる作品こそが、僕の一番のお気に入りなんだ。だから、今まで作ったものの中で、何が一番好きかっていう質問には答えることはできないかもしれない」

作品を作り始めた当初はうまくいかず、イライラしたこともあったという。芯が途中で折れてしまったりして、うまくいかなかった100点以上の作品を集めた箱がある。彼はこの箱を「墓地コレクション」と名づけたそうだ。

「製作途中で壊れてしまった作品を接着剤で貼り付け、発砲スチロールのケースにいれておくんだ。おかしなことをしているように見えるかもしれないけれど、これはこれで楽しい作業なんだよ。何か月もかけて行う作業だから、完成する頃には作品たちは死んでしまっているかもしれないね。でも、壊れた作品に命を吹き込みたいと思っているから……」。

ちなみにダルトンさんは、作品に使う鉛筆を自分で購入することはないそうだ。鉛筆は友人たちがプレゼントしてくるものや、町を歩いているときに自分で見つけたものを拾ってきて使っているのだそう。ダルトンさんが今取り組んでいる作品は、アメリカ同時多発テロをモチーフにした大作。

「テロが起きたとき、ずっと泣いていて何もする気がおきなかった。自分ができることは何かと考えたとき、テロで亡くなった一人ひとりの涙を鉛筆に彫ることを思いついた。3000粒の涙です。2002年から毎日1粒ずつ彫っています。すべて彫り終われば、この3000粒の涙は1粒の大きな涙になる。1粒彫るのに1時間もかからないけれど、3000粒彫るには10年かかるんだ。お金のためにしていることではないけれど、意味のある作業だと思っているよ。いつか英国の美術館で、この作品の展示をしてもらえたらうれしいね」。

なんとも心優しく謙虚なダルトンさん。でも、なぜアメリカではなくイギリスの美術館なのだろうか。疑問が残らなくもないが、3000粒の涙が完成した暁には、ぜひとも取り上げたいものである。

Screenshot from dailymail.co.uk
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