当初「iPad3」もしくは「iPad HD」という名前で販売されると見られていた、アップルの次世代タブレット端末「新しいiPad」(以下:iPad)の販売が、2012年3月16日午前8時に開始された。

日付変更線の関係で、日本は世界最速の販売開始となったのだが、販売初日は本当に「盛り上がった」と言えるのだろうか? 同社製品と比較して振り返ってみよう。

銀座アップルストアに1番最初に並んだ人物は、発売日の4日前からお店の前にいたそうだ。初代iPadの1番乗りは同店に2日前から並んでいたそうだ。iPad2のときには、東日本大震災の影響で販売開始が1カ月ずれ込み、なおかつ正式なアナウンスは前日夜であったために、1番乗りは前日から並び始めた。これまでのタブレット端末の、販売開始時の行列人数は以下の通りである。
 
・銀座アップルストア前、販売開始時の行列人数(当時の報道内容から推定)
初代iPad 1200人
iPad2 400人
新しいiPad 450人
 
となっている。これらの数字から、初代iPad発売時のインパクトがいかにすごかったか理解頂けると思う。また、iPad2のときには震災の影響と、正式なアナウンスが遅れていた。それにも関わらず、一夜にして400人が詰め掛けている。

販売時の状況は、今回がもっとも安定していたはず。しかし爆発的な動員には至らなかったのだ。東京・新宿の大型量販店の店頭には、同日夕方近くになっても在庫(すべてのモデルではない)があった。堅調な滑り出しとは言いがたいように思うのだが……。初日にしては盛り上がりに欠ける。一体なぜなのか? 記者(私)は次のように考察している。
 
1.控えめなネーミング「新しいiPad」
冒頭にもお伝えしたが、同機は「iPad3」という名前で登場すると思われていた。ところが、発表日に「New iPad」という呼称が同社CEOのティム・クック氏から繰り返され、世界中のネットユーザーは名前なのかどうかさえも判断しかねた。控えめなネーミングから、消極的な印象を与えたのかもしれない。
 
2.日本で4Gネットワークがつかえない
今回の目玉はやはり次世代高速通信(4Gネットワーク)対応ではないだろうか。しかし、現段階で4Gは使えない。日本では3G回線でしか新しいiPadは使えないのだ。なんのための4Gモデルなの? と思わざるを得ない。それならいっそ国内でも使えるようになってから、購入しようと考える人もいるはずである。
 
3.iPad2よりも高性能だが、iPhone4Sに劣るカメラ
たしかにカメラは高性能になった。5メガピクセルでiPad2よりも、繊細な画質を再現している。しかし、iPhone4Sの8メガピクセルに劣っている。カメラだけを見た場合に、進化したとは言いがたい。
 
4.タブレット端末は結局携帯電話ではない
当然かもしれないが、タブレット端末は携帯電話ではない。したがって、用途は限定的。必須のものではないのだ。仕事で持ち歩くという人もいれば、家に置きっぱなしという人もいるだろう。おもちゃにするには少々高額、実のところ購買層は限られているのかもしれない。
 
上記の考察から、新しいiPadの販売初日はいまひとつ盛り上がりにかけたと感じる。海外のアナリストによると、同機の予約数は記録的なもの(具体的な数は明かされていない)とのことだ。全世界での販売台数は、推定で本年中に6000万台以上になると見られている。はたして、この予測は正しいものになるのだろうか、それとも……。

いずれにしても、日本では4G回線が利用できないことには、何とも言えないのではないだろうか。

Photo:Rocketnews24


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