何者かに楽天アカウントを乗っ取られた私(本誌記者)。その顛末は、シリーズ『追跡ネット犯罪(1)』でご報告した通りであるが、楽天市場へ問い合わせた結果、乗っ取り野郎は乗っ取り中に私のアカウントで買い物をしていたことが判明した。

なんという図々しさであろうか。まるで勝手に人の家にあがりこみ、冷蔵庫の中の食材を片っ端から貪り食うような、許しがたい行為である。一体全体、この野郎は何を買ったのであろうか? てめえコノヤロー、何を買いやがったんだ!? その答えが判明しているのでご紹介したい。

・楽天「とりあえずパスワードは初期化します」
楽天側からの、問い合わせ返事メールには、以下のようなことが書いてあった。分かりやすいように、くだけた口調で書いてみるが、内容はそのまんまである。

・2月9日に、あなたの登録メールアドレスが別メールアドレスに変更されてたよ。だからログインできない状況だと思うんだ。
・2月10日に、あなたのアカウントで買い物されてるけど、心当たりある?
・万が一、知らない人が使ったかもしれないんだったら、早めに警察などに相談することをオススメするよ。
・クレジットカード請求に関しては、ウチでは確認ができないので、あなたの方からクレジットカード会社に連絡してね。
・警察などの公的機関からの公的文書に基づき情報提供の依頼があった場合は、協力するから!
・安心して使ってもらえるように、パスワードは初期化しとくね。初期化したらまた連絡するよ。

……とりあえずは、待ちの状態だ。そして約2時間後、またメールが届く。

・パスワード初期化は完了したよ。再設定すればログイン可能な状態だからね。
・登録メールアドレスも、変更前のものに直しといたよ。(つまり私のメールアドレスに戻した)
・登録IDも再設定することをオススメするよ。以前と同じものだと、また入られる可能性があるからね。
・定期的なパスワード変更をオススメするよ。ユーザーIDとパスワードは、漏洩しないように、あなたのほうで適切に管理してね。
・不安だったら、コンピューターのセキュリティを強化してね。報道によると、昨今はコンピューターウイルスとか氾濫してるらしいんだ。
・もしもクレジットカードで注文がされちゃってる場合は、あなたのほうでその店舗に相談してね。
・クレジットカード会社によっては、不正にカードを利用されたら保証される場合があるらしいよ。
・あんまり力になれなくてゴメン。

……要するに、私がなんとかしなきゃならないのである。お父さんに相談したら、「お前がなんとかしろ!」と言われたような、「オレは関係ないからね」と言われたような、少し物悲しい気持ちになったりもしたが、甘えてばかりはいられない。私がなんとかしなきゃならないのである!

・数日ぶりのログイン、購入履歴を見てみると……!!
とりあえずはパスワードやIDの再設定を行い、無事に私のアカウントへログイン完了。ホッ……。なんというか、「ただいま~」である。数時間のあいだ……いや、実際には数日間のあいだ、勝手にカギを変更されてしまった我が家に帰ってきたような心境だ。パッと見、荒らされた形跡はない。だが、「購入履歴」を見てみると……

・乗っ取り野郎はえらい高級な炊飯器と一眼レフを買っていた!
2月10日に買い物してる! 5万円近いキヤノンの一眼レフデジカメ(セット)と、5万円以上もするエライ高級な炊飯器を買っておるぞ! しかも炊飯器の色は赤! 私だったら黒にする。それはともかく、「閲覧履歴」を覗いてみると、さらに生々しい動きが確認できた。

・いろいろ物色、迷いも生じる乗っ取り野郎の動き
まず、乗っ取り野郎は、迷うことなく炊飯器(赤)をポチッとクリック。その判断に一切のブレはなく、炊飯器(赤)のページに直行し購入している。その直後、今度はデジカメを物色し始める。

まずはニコン製のコンパクトデジカメを確認するが、あいにく商品は在庫切れ。次にソニーのデジカメを確認し、在庫はあるが「やっぱ一眼っぽいヤツかな」とシフトチェンジ。その後、いろいろなデジカメを物色し、選ぶこと6機種目、最終的にキヤノンの一眼レフデジカメに落ち着いたというかたちである。

・乗っ取ってから13分ですべては終わっていた
また、アカウントが変更されたというメールが届いた時間から、注文完了した時間を引いてみると…かかった時間は、わずか13分。正確に書くと、9日の23時55分にアカウントの乗っ取りを完了させ、2月10日の0時8分には買い物を済ませている。ちなみに、どこのお店で買ったのかというと、某大手家電量販店の楽天市場店である。

・送付先の名前は私。でも住所が……!!
最も気になるのは、この商品がどこに届けられるのか?ということである。おそらく転売目的だと思うが、この乗っ取り野郎の目的はただひとつ。注文した商品がほしいのである。

ドキドキしながら、送付先の住所をチェックしてみる。名前は私だ。しかし、電話番号が私のものではない。とりあえず非通知でかけてみたが、電源が入っていないという。キャリアはソフトバンクである。そして……

・住所はまさかの大阪府!
まさかの大阪! ナニワ! 私は東京。大阪には縁もゆかりもない、東京生まれの東京育ちである。さっそくその住所をGoogle Mapなどで調べてみる。どうやら架空の住所ではないようだ。しかし、Googleストリートビューでは、その建物周辺だけが、確認できない状態になっている。偶然なのかどうかは不明だが、その建物の前をGoogleストリートビューのクルマは「通っていない」ようなのである。

ともあれ、商品がここへ届くことには間違いない。私の名前が書かれたラベルが貼られたダンボールが、配達業者によってこの建物に届くのである。どんな人が受け取るのか。メチャクチャ気になったが、とりあえず警視庁へ連絡した。ネット犯罪に詳しい部署へつないでもらったのだ。そして結果的に……信じがたい事実を知ることになるのである。

追跡ネット犯罪(3)へ つづく

Report:GO羽鳥

※新着情報
なお、ついさきほど私が入手した情報によると、今回のようなケースでの被害は、ここ半年で増加傾向にあるとのこと。まさに今、流行中の手口なのだ。ちなみに情報元はクレジットカード業者である。読者のみなさんも本当に注意して頂きたい。