去る1月29日晩から翌朝まで岩手県奥州市で日本一の裸祭「蘇民祭」が行われた。蘇民祭は極寒の中、下帯、すなわちフンドシひとつで祭りに臨むの男たちが有名だ。その勇姿については本誌でもご紹介したが、蘇民祭のポイントはそれだけではない。

寒さのなか己(おのれ)と戦う男たちの後ろには彼らを支える地元の方々がいる。祭りの参加者や見学者を癒してくれる「蘇民食堂」だ。

蘇民食堂は、祭り当日、会場である黒石寺(こくせきじ)に設けられた休憩所だ。

1000円で朝まで食べて飲める店や、甘酒やおでんなど単品を扱っているところなどもある。ワラで作られた簡素なたたずまいであるが、中には焚き火があり、入ると芯から冷え切った体は生き返る心地だ。そして何よりほっとさせてくれるのはなのは「寒かったでしょう?」と迎えてくれる地元の方々である。蘇民食堂は雪の中の天国である。

もともと蘇民祭の由来とは、旅をしていた神・武塔神(むとうしん)がある兄弟に宿を求めたところ、裕福な弟はそれを断り、兄の蘇民は貧しいながらも神を迎え入れ精一杯のもてなしをし、その行為に対し武塔神が蘇民の子孫の繁栄を約束したところによるという。

初めての参加者や見学者には少し入りにくいかもしれない。だが蘇民食堂は誰でも歓迎してくれる。蘇民伝説の精神そのものではないだろうか。

なお、祭り前や合間には暖を取りに来ているフンドシ姿の参加者もいる。血気盛んな猛者(もさ)たちとのふれあえるまたとない機会だ。蘇民祭に参加・見学される方はのぞいてみてはいかがだろうか。

photo:rocketnews24.

▼食堂は祭りの参加者や見学者でいっぱいだ

▼心がこもった「手作り甘酒」(100円)、心身共に温まる