先日、某大手出版会社のマーケティング担当の方とお話をする機会を頂いた。ネットの中で生きかつリアルな繋がりもネットに多い私にとって、出版会社のマーケの方とお話するのは新鮮で非常に為になる話ばかりだった。今回はその中でも印象に残ったもの抜粋してお伝えしたい。

▽1、ページビューによる競争ではなく、価値の競争が必要だ

これはもちろんインターネットのお話。今まではページビューが絶対の軸として考えられていてそれを追い求め企業は頑張ってきたが、フタを開ければどこも儲かっていない。また今後、日本のインターネット全体のアクセス数は落ち始め、ページビューの奪い合いがメディア間で起きる。必要なのは、ページビューによる競争ではなく価値の競争なのだ。それを分かっていない人は多い。

▽2、「ネットが人の時間を奪った」

「マス媒体がネットに奪われた(取って代わった)」なんて言う人がいるが、それは大きな間違いだ。ネットが奪ったものは、人の時間。分かりやすい例でいえば、昔、電車の中では週刊誌などが読まれていたが、現在はほとんどが携帯電話。携帯電話(主にメール交換)が電車にいる人の時間を奪ったのだ。これから何かビジネスを起こすのであれば、人間のどの時間(帯)を奪うのかを考えるのも大事である。

▽3、雑誌に付録を付ける売り方はどうなのか

雑誌に付録を付けて売れば、やはり読者の感触もよく売れる。ただし、付録を付けない号を突然出すと途端に売れなくなる。つまり何が言いたいかというと、一度付録を付け始めたら、もう付録なしでは売ることができなくなるということだ。

▽4、出版社も新たな収益源を探している。

雑誌は『雑誌の売上』と『雑誌の中の広告』で主に成り立っている。その他にも人気のコーナーを書籍化することで売上をあげることもある。現在、出版業界も新たな収益源を模索している。例えば、複数の雑誌であるカテゴリーだけを横断してまとめて読めるサービスなど。しかし、そうようなサービスをやる上で問題は山積みである。ただひとつ言えるのは雑誌のコンテンツをそのままネットでも見れるようにしなかったことは大正解だった。

▽5、韓国ではフリーペーパーが登場すると雑誌の売上が大きく落ち込んだ。日本は・・・

日本でフリーペーパーブームが起こっても、書店やコンビニなので販売される雑誌などの収益の落ち込みはほとんどなかったが、韓国では、フリーペーパーが発行されるやいなや、雑誌などの収益が大きく落ち込んだ。韓国人は同じ紙媒体なら無料を選ぶのだ。しかしなぜ日本は落ち込みがなかったのか・・・この両国の違いは国民性なのだろうか。

さて、私が一番印象に残っているのは、1番の「価値の競争」という話だ。これは雑誌社のマーケティング担当者が言うのだから相当の説得力だ。雑誌というものは毎号毎号、競合の雑誌とコンテンツの差別化を図り、価値の競争で各々ブランドを確立していく。最終目標は読者にお金(対価)を払って雑誌を買ってもらうことで、常に意識が高い。

一方、ネットの世界ではコンテンツのほとんどが無料で最終目標はページビューがどれだけ取れたか。読者よりもグーグルアナリティクス意識してしまっている。これでは、ネットの世界で「価値の競争」という言葉が出ないのも納得できる。一体今後熟成しきったネット社会は徐々に「価値の競争」にシフトしていくのか、最後にこのマーケの方が「人は進化し続ける」という言葉が印象的だった。