言うまでもないことだが、黒毛和牛は高い。スーパーの肉コーナーで半額になっていても、1パック1000円を超えることはザラ。絶壁のような “黒毛和牛の壁” に阻まれて購入を諦める もどかしさを、多くの人が経験しているに違いない。

そんな黒毛和牛に、あの吉野家が手を出した。安さを売りにするチェーンの代表格とも言える吉野家が、高い肉の代表格とも言える黒毛和牛を使った「すき鍋」の販売を開始するのだ。しかも明日5日から!

・吉野家で初となる黒毛和牛商品

販売開始のタイミングを正確に言うと2020年10月5日午前11時。一部店舗をのぞく全国の吉野家で、数量限定での発売となる。なお、吉野家が黒毛和牛の商品を出すのは今回が初めて。


価格は単品が税別898円で、ご飯や卵・お漬物がついた『黒毛和牛すき鍋膳』が税別998円となる。吉野家の他商品と比べたら高いと思うかもしれないが、吉野家のえらい人(常務取締役:伊東氏)に聞いたところによると、「メインメニューの中で原価率がもっとも高い部類」とのこと。


そう聞いても何ら不思議ではない。なにせ、スーパーで食材を買ってきて黒毛和牛のすき鍋を作ろうとしたら、たとえ1人前でも1000円以内に収めることは難しい。下手したら肉だけでオーバーする。さらに、『黒毛和牛すき鍋膳』は24時間ご飯のおかわりが自由


それで税別998円なのだから、「肉がしょぼいのではないか?」と疑われても仕方がないレベル。というか、私も当初はそう思った。しかし、実際に吉野家主催の試食会で食べたら……


うまあああああぁぁああああ


アホな感想で恐縮だが、1000円以下の和牛すき鍋とは思えないほど、肉が柔らかかったのだ。

ちなみに、先の常務取締役:伊東氏によると、牛肉は「A3からA5くらいのものを混ぜている」らしい。「なんだよ、A5以外の肉も使ってるのかよ!」と思う人もいるかもしれないが、話を聞くとココが1つのミソになっているようだ。同氏は以下のように続ける。


・A5の肉だけを使わない理由

「みなさん、A5のお肉が高級で美味しいと思っていらしゃいますが、A5のお肉だけですき焼きを作ると脂っこくて美味しくなくなっちゃったりするんですよ。だからバランスを取る必要があるんです。このお肉なら、厚みがこれくらいだと食べごたえもいいし、脂が多すぎないし、甘みも感じるというところ。そのバランスを取ることに1番苦労しました。

食肉バイヤーが数年にわたってチャレンジしていたのですが、なかなか美味しく仕上がらないんですよ。和牛をたくさん入れたら入れたで脂っこすぎるという問題がずっとついて回ってまして。かといって赤身にすると硬くなっちゃうし、肉が分厚いと美味しくないし、逆に薄いと食べた気がしないし、という問題がずっと……」


──その試行錯誤の末に完成したのが、『黒毛和牛すき鍋』である。


開発の裏事情を聞くとますます食べたくなる人だっているだろうが、先に述べた通りこれは数量限定商品。吉野家によると、全国で50万食を用意しており売り切れ次第販売終了とのこと。つまり……そうだ。気になる人は店舗に急ぐべし。

ただし、5日の早朝とかに行っても意味がない。念のためにもう一度言うが、販売開始は2020年10月5日午前11時からだぞ。

Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

▼こちらは提供前の状態で……

▼通常は火が通った状態で提供される。肉以外に入っているのは、白菜、玉ねぎ、長葱、人参、絹豆腐、きしめん、お麩。

▼膳(セット)だと、ご飯おかわり自由で税別998円。

▼常務取締役の伊東氏。今の価格に抑えることは「メチャクチャ大変でした(笑)」とのこと。

▼肉の厚みは1.5ミリ。この厚さを決めるのも苦労したらしい。

▼なお、オーソドックスな牛肉を使った「牛すき鍋膳(税別648円)」も同日に発売開始。野菜等は黒毛和牛とほぼ同じだ。

▼ただ、通常の牛すきの方は黒毛和牛に比べて脂身が少な目。お肉の好みによってはこちらの方がいいかも。