外国人から「日本のここが好き」と言われたら……日本人なら誰だって悪い気はしないだろう。むしろ、嬉しいと感じる人が多数派に違いない。人によっては、乾き切った心の中に “甘々のアイスクリーム” が大量投下されたような気分になるはずだ。

だが……。ここ数年、あまりにもそういう趣旨のテレビ番組が多すぎる、と感じるのは私だけだろうか? 外国人が出てきて「日本の文化は素晴らしいです」「日本人は親切です」「日本に来てハッピー」……などなど。読者のみなさんは、そのような “甘々系” のテレビ番組を見てどう思っているのだろう?

受け取り方は人それぞれだろうが、私の個人的な好みを言わせてもらうならば……好きじゃない。内容にもよるけれど、あまりに “甘々系” の番組は「これ、日本版の北朝鮮国営放送かよ」と思ったりもする。

もちろん、外国人が日本にポジティブなことを言ってくれたら、私だって日本人の1人として悪い気はしない。場合によっては、うれしく感じる。ただ、一部の “甘々系” テレビ番組の演出がどうしても自分に合わないのだ。


──そのような事情があるので、私は当サイトで彼のことを紹介することに躊躇(ちゅうちょ)していた。なにせ、彼は日本のことがめちゃくちゃ大好き。記事にすれば、それも “甘々系” になってしまうのでは? と危惧していたが、この時期こそ彼の意見にハッとさせられる人が多い気がする……という気持ちから、以下で紹介したい。


・ハバナ在住のキューバ人

まず、私が彼(トニー)と知り合った経緯から話をしていこう。今から約4年前、私はハバナにあるトニーさんの家に数日泊まっていた。なぜ泊まったのかといえば、キューバでは民泊が盛んで、トニーさんの家も部屋の1つを民泊用に使っていたからである。

そんなトニーさんは、日本のヤクザ映画が大好き。高倉健さんへの愛と知識は、私がとうてい太刀打ちできるレベルではなかった。そして日本語もペラペラ。「日本語は映画で学んだ」と言っていたので、キューバでヤクザ映画の凄さを思い知らされたわけだが、もっとも印象に残ったトニー語録はそれじゃない。

その発言は、私がトニーさんにある質問をした後に飛び出した。私がなんて聞いたかというと……


「トニーさん、日本のことをめちゃくちゃ好きでいてくれているけど、逆に日本の嫌いなとこってある?


それを受けてトニーさんが言ったことを、私は今でも覚えている。これだ。


日本人ってよく「忙しい」って言うよね? そこ。「忙しい」とよく言ってる日本人を見ると、「何に追われて生きてるの? そんなに余裕がない人生で楽しいの?」と思ってしまう」


ハバナ滞在中、私はトニーさんと色々な話をした。その中で上の発言を今でも忘れられないのは、私自身が聞いてドキっとしたからだろう。確かに、忙しい忙しいって、私たちは何に追われて生きているのだろう? 

特に、師匠も走ると言われる12月。私を含めて多くの日本人が忙しい忙しいと言っているだろうが……優先順位は、本当にそれでいいのか? 忙しさにかまけて、1番大切なものがおろそかになってないか? そうやって何かよく分からないものに追われて年をとり、死ぬ人生で本当にいいのか?

というか、そのうち「今の状態でいいのか?」と考える余裕さえ無くしてしまうのではないか? ──そんな怖さと、「忙しい」と言いがちな自分への戒めの意味から、この記事を書いた。

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

▼私がキューバを訪れたのは2015年の6月。アメリカとの国交が正常化する直前なので、きっと今は変わってるだろうな……。

▼こちらが、その時に訪れたトニーさんの家。居心地が良くて何泊もした。※写真は当時のもの

▼そして、私が日本に帰国した後もトニーさんとのやり取りは続き……

▼この時期には年賀状がメールで来る。なお文面がローマ字なのは、トニーさんの家のPCが日本語入力に対応していないため