「アイドルなんかにハマる理由が全く理解できない……」。5年前まで私(耕平)も、オタク文化に染まりまくった日本の文化を横目に、冷めた目で腕組みしながら、斜に構えていたイタいオッさんだった。

そんな私がふとしたきっかけで、いつの間にかアイドルにハマっていき、生まれて初めてファンクラブに入会し、ついには一人でライブに足を運んだグループがいる。

今回は、そんな薄毛の中年サラリーマンが、初めて一人でアイドルのライブに参戦して気づいたことをレポートしていこうと思う。

・普通のアイドルじゃない。

今回初めて参戦したライブは渋谷にある「TSUTAYA O-EAST」で開催された「PassCode」という、4人組のアイドルグループの対バン(バンド対決)イベントだ。

「アイドルなのに対バン?」と疑問が湧くが、この「PassCode」というグループは普通のアイドルとは一線を画す存在で、世間では『ラウドロック系アイドル』と称されている。

とりわけアイドルイベントよりも、今回のような対バンイベントや、大型フェスに出演する機会が多い、国内では非常に珍しく「カワイイよりもカッコイイ次世代アイドル」として、その評価は海外にも波及している、個人的にイチオシで注目のグループだ。

そんなPassCodeのライブにいつか参戦したいと思っていた私は、職場が東京都内ということもあり、会社を早退してライブが開催される渋谷の「TSUTAYA O-EAST」に一人で足を運んだ。


・道玄坂ラブホ街の怪しいオッさん

私は、今までは家でYouTubeやDVDを見ているだけの、いわゆる「在宅ヲタ」だったので、ファンの交流などは一切ない。しかも、アイドルのライブは人生で初めてだ。

そんな猛暑の中、渋谷駅から道玄坂に続く、通称「ランブリングストリート」を歩き、路地を少し入ったところにある「TSUTAYA O-EAST」に向かう。

そして、会場に到着。

が、みんな気合入りまくりで、入場待ちの参加者は、ほぼオリジナルTシャツの黒1色である……。

そんな中、会社帰りのオッさんが、ポツンと一人。

そして、初めての経験で、しかも一人ということもあり、入場待ちの輪に溶け込めず、スマホ片手にライブ会場前を行ったり来たりで、おそらく10往復くらいしたと思う。

ちなみに、ここ「TSUTAYA O-EAST」は、渋谷でも有名なラブホ街の中心に位置していて、白昼、この場所をスマホ片手にウロウロしているサラリーマンは、仕事をサボって、不純な営みを敢行している輩が多いと聞く。

ただ私も、その挙動不審な行動で、ハタから見たら間違いなく「そっち系」に見られていたことだろう。

そして、どうして良いかわからない状況で、こういったライブ参戦の経験が豊富な友人に、LINEで連絡を試みた。すると……


耕平「今からpasscodeのライブに初参戦する。」

友人「えーマジ? 楽しみだね。物販頑張って」

耕平「つーか43歳のオッさんが会社早退して、スーツでそのまま入ってるんだけど、場違いすぎてライブハウスの周りを、もう10往復くらいしてる……」

友人「Tシャツ着ちまえばみんな同じだよ笑


た、確かに……。おそらく疎外感は、会社帰りのスーツ参戦という、後ろめたさからの感情だ。で、あれば同化すれば良いだけの話。

私は入場の列が引くのを待ち、スーツ姿という服装を逆手に取り、若干、関係者を装い、堂々としながらも、内心オドオドしながら会場に入った。


・いざ戦場へ!

会場に入るなり、友人のアドバイス通り、一目散に物販売り場に駆け込み、オリジナルTシャツを購入!

その場でワイシャツの上からTシャツを着て、同化完了。さらに一人参戦ということもあり、テンションを上げるためにアルコールを注文。

会場は1階と2階に分かれているが、PassCodeのライブは、本物のラウドロックバンド顔負けの激しさで、危険を覚悟しなくてはいけないのは動画を見て事前に知っていたので、さすがに1階の群衆に割って入る勇気はなく、今回は2階から観ることにした。


・生の迫力に毛髪が抜ける

会場の照明が消え、待望のライブが始まり、満員でぎゅうぎゅう詰めの1階の後ろから、曲が始まった瞬間、人が何人も降ってきて、客の頭越しにステージまで運ばれていく!

「な、なんだこれ……」

生で見て、あっけに取られたが、これがPassCodeのライブ名物のクラウドサーフ(後ろからダイブしてきた人を、手で持ち上げて頭上からステージまで運ぶ行為)というもので、あまりの衝撃にテンションを上げるために飲んだアルコールが、トイレも行かずに一気に抜けて、その勢いで毛髪も数本抜けたと思う。

アイドルのライブのはずなのに、会場にアイドルのコンサートで見られるメンバーカラーのペンライトなどは一切ない。曲もゴリゴリの本格的なラウドロックサウンドに、「ピコリーモ」と呼ばれる電子エフェクトボーカル、アイドルらしからぬオラオラな煽り、そして時折見せる強烈なシャウト。

もともとロック好きで薄毛ながら昔はバンドマンの端くれだった私も、この異次元すぎる空間に、我を忘れて完全に心を持って行かれていた。

そして最後の方には、感極まって、人目も気にせず43歳のオッさんが号泣していた……。


・結論

回想すると、初めはスーツ姿という完全に浮いた存在で、どうしていいかわからなかったが、勇気を振り絞って会場に入ってしまえば、そんなことは関係ないことに気づいた。

実際、ライブが始まり2階から見渡すと、私と同じ会社帰りでスーツ姿のファンが何人もいた。

中には明らかに私(耕平43歳)より年配で、見た目はいかにも管理職といった50代と見られる白髪でスーツ姿の人が、1階の激戦区に身を投じて揉みくちゃにされながら、一心不乱に盛り上がっていた。

そう、本当に好きであれば、どんな格好で参加しようが、見た目なんて関係ない。そもそもPassCodeのライブを楽しみにして参戦している熱烈なファンが、私個人の容姿なんか気にも留めてないだろう。


「いったい、何を躊躇(ちゅうちょ)していたんだろう……」と今、振り返ると自分がバカらしくなってきた。


ということで、結論。自分の中の祭り事に参戦するのに、容姿、年齢なんかは関係ないから、雰囲気に流されず、大いに楽しむことをオススメする!

Report:耕平
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.

▼これがラウドロック系アイドル「PassCode」のライブだ! クラウドサーフは、3:19あたり。

▼たまたま同じライブで、これまた同じく2階席から見ていた、音楽レビュー系YouTuber「セゴリータ三世」さんの感想。激しく同意だ!