落ち着いて行動することはとても大事! 今から紹介するトラブルを通して私が学んだことを端的に言うならば、このひと言に凝縮されるかと思う。もう少し具体的に言うならば、「誰かの主張を鵜呑みにするのではなく、ちゃんと自分で調べろ」ってところだろうか。

そう、「落ち着き」こそがもっとも強力な武器であり、それを手にしている限り大抵のことはなんとかなるのだ。なぜなら、落ち着いていれば「自分で調べる」くらいのことはするだろうから……。

──と言われても、読者の方からすればどういう流れでそう感じたのかが分からないと思うので、以下で私が体験したトラブルの詳細について説明していこう。

・渡航直前にフライトがキャンセルに

個人的な話となって大変恐縮なのだが、私は9月の下旬からイタリアに行く。現時点で予定を完全に決めているわけではないものの、ローマで数日過ごした後にシチリアへ向かう予定。すでにローマ〜東京の往復チケットと、ローマ〜シチリア(パレルモ)の片道チケットは押さえた。

だから今はもう、イタリアが楽しみで仕方がない。ここ最近は「あと10回寝たらイタリア」、「あと8回寝たらローマ」とカウントしているほどだ。もちろん、休日はもっぱらローマの情報をググり、インスタでは「#パレルモ」で調べ……といった具合。当方37歳ながら、修学旅行前の小学生のような状態である。

ちなみに、航空チケットの購入で利用したのは旅行予約サイト(Expedia)。JTBのような旅行代理店を通して買ったのではない。理由は単純に、サイトの方が安いチケットをいくらでも探せるし、ネットでパッと取れて便利だと考えていたからなのだが、まさかあんなことが起きるとは……。


・1通のメール

それは、ローマへの出発まであと1週間ほどになった頃のこと。以下のメールが、Expediaから私の元に届いたのだ。なお、メールには不自然な半角スペースがあるのだが、それは原文のまま記載しよう。


「●●(※航空会社)より、お客様のご旅程に大きく影響する変更が生じた旨の連絡がございました。航空会社が用意した代替便を手配するため、早急にエクスペディアまでお 電話ください。便によっては満席となることが予想されます。

今すぐ エクスペディア までお電話くださ い。
●●-●●●●-●●●●(24 時間年中無休 ※電話番号) までお問い合わせください」


──半角スペースを見て迷惑メールを連想する人もいるかもしれないが、これはれっきとした(?)Expediaからのメールである。断じて、迷惑メールじゃない。なお、メールのタイトルは……



「緊急: ください YUICHIRO WASAI の呼び出しフライトの変更」

……

……

Expediaはめちゃくちゃテンパっているようだ。


・電話をかけてみた

このタイトルからも迷惑メールっぽさを感じてしまうかもだが、何度も言うようにこれは大手旅行予約サイトExpediaから届いたものである。というか、そんなことを言っている場合じゃない。メールのタイトルおよび本文からは、「緊急事態発生!」の匂いが濃厚に漂っているのだから。

私はすぐさまExpedia指定の番号に電話をかけた。そこで行われた会話を要約するとこんな感じである。


「御社から緊急のメールをもらいまして「電話してください」的なことが書かれていたのですが、何があったのでしょうか?」


スタッフ「航空会社から連絡がありまして、ローマからパレルモ(シチリア)のフライトがキャンセルになったとのことです」


「うわぁぁぁ……。つまり、その便は飛ばないってことですよね?」


スタッフ「はい、そういうことになります」


「では代わりの便を手配してもらえるのでしょうか? その飛行機代金はすでにお支払いしているので……」


スタッフ「はい。航空会社が代替便を用意しているのですが……」


「ですが……?」


スタッフ「その便は予定よりも1日早くローマを発ち、一旦バルセロナへ向かいまして、翌日の早朝便でパレルモに向かうスケジュールになります」


「え? ローマからパレルモに行くのに、バルセロナ経由で行くんですか?」


スタッフ「はい……」


「う〜ん、ローマの滞在時間が短くなるのはイヤですし、空港で一夜を過ごすのも気が進まないので、それはちょっと……。他に代替便は無いんですか?」


スタッフ他に代替便はございません


「マジですか……。では、その便をキャンセルしたら全額返金してもらえるんでしょうか? 代替便はどうしても気が進まないので、返金してもらえたらこっちで探そうかなぁと。現時点ではそうするしかない……ですよね?」


スタッフ「大変申し訳ないのですが、まだ航空会社から正式な発表がないので全額返金に応じられるかどうかは明言できかねます。おそらく、全額返金になるかとは思うのですが、はっきりとは……」


「そうですか。それに、今から探しても見つからない可能性だってありますよね。じゃあ代替便にするしかないのかなぁ。そしたら追加料金はかからないですし。どうしよう……。ちなみに、その便がフライトキャンセルになった理由って何なんですか?」


スタッフ「正式発表がないので、フライトキャンセルの理由は不明です


──会話の流れはざっと感じ。ここでトラブルの要点を箇条書きでまとめておこう。


【トラブルの要点】

・航空券の代金を払ったにもかかわらず、予約したフライトが航空会社の都合でキャンセルされた

・キャンセルの通知はフライトの10日前

キャンセルの理由は不明

・航空会社は代替便を用意している

・しかしその代替便は時間のロスがハンパない

・代替便を拒否した場合、航空会社がチケット代金を全額返金してくれるかどうかは不明(Expediaスタッフによると「おそらく全額返金になるかと思うが明言はできない」とのこと)


・代替便の “無駄” 感

事情を知ったとき、私が一番納得いかなかったのは、航空会社が用意したという代替便があまりにもクソすぎたことだ。ローマからパレルモまでは約400km。表示された情報によると、フライト時間は1時間強で着く。

それが代替便になると、バルセロナ経由で行くことになる。「代替する気あんのか」とさえ思ってしまうルートだ。しかも、バルセロナの空港で宿泊して早朝便で発つなんて、意味が分からなさすぎる。例えるなら、東京から大阪へ行くのに一旦ソウルへ寄り、そこで一泊してから大阪へ向かうようなもの


・キレた

天候不順ならフライトキャンセルでも仕方がないし、他に理由があるにしても、それを教えてくれたら納得できるかもしれない。しかしキャンセルの理由を明かされず、返金に応じてくれるかも定かではなく、こんな代替便を提案されたら……結構な人が怒るのではないだろうか? 正直に言おう。私はキレた。

海外旅行に慣れた人なら、「まぁよくあること」で終わりなのかもしれないが、私には初めての体験だったこともあり、そんなクールには済ませられなかった。あのときの私の心理状態をありのままに書くと、こんな感じだ。


「俺がどれだけイタリアを楽しみにしてると思ってんねん! 中でもシチリアは自分的に一番のハイライトやねんぞ。そのシチリアに飛ばへん? ふざけんな! 限られたイタリア滞在時間を有効に使いたくて、めっちゃ奮発して飛行機にしたっていうのに……。

その飛行機代をちょっとでも安くするために、こっちは早めに予約しとんねん。「数千円でパレルモ行きの飛行機を押さえられてラッキー」と思ってた俺……アホみたいやんけ! その飛行機が飛ばへんなら、とりあえず理由を言えや! そしてもっと早く言えや!!

今からこっちで代替便を探したら見つかるかもやけど、高いチケットしか残っていない可能性大という状況をどうしてくれんねん! しかも、もし全額返金に応じてくれへんかったら大損やんけ! そもそも、10日前ってことを考えたらチケットが無い可能性だってあるやろが!!」


下品で申し訳ないが、本音を書くと上のような感じであった。そしてその “怒り” は諦めを呼び、心の中では……

「今からこちらで代わりの交通手段を探すのも面倒な上に、そもそも探してもあるか分からないから、向こうの代替便の提案を受けよう。それなら金額的な損もないだろう」という方向に傾いていたのだ。


・冷静な声

しかし一方で、心の中の冷静な部分は「流れに任せて『その代替便でお願いします』と言ったら後悔する可能性がある。とりあえず返事は保留して電話を切れ。それから後、自分で探して自分で考えろ」とも言っていた。

このように、私の心の中で “怒り” と ”冷静さ” が心の中で葛藤を繰り広げた結果、かろうじて冷静さが勝利。Expediaのスタッフには返事を保留して電話を切った。そしてすぐさまPCを開き、航空券を探すと……



パレルモ行きの飛行機めっちゃある\(^o^)/


航空会社が用意した代替便が他に無いだけであって、飛行機自体は結構ある〜\(^o^)/ しかも……



格安チケットを押さえられた〜\(^o^)/


諦めと怒りに任せて「代替便でお願いします」と言わなくて本当に良かった〜\(^o^)/


という状態に。つまるところ、怒りが一瞬で吹き飛んだのであった。おまけに、キャンセルになった便のチケットと値段的にほぼ変わらないものをゲットできたので、旅程を変更せずに済みそうである。

ここで懸念は、航空会社が全額返金に応じてくれなかった場合だが……万が一そうなったら、それはそれでまた記事にするつもりだ。なにより、一生使えるエピソードトークが増えたと考えればオイシイだろう。また、新たに取った便がまたフライトキャンセルになったら……こんなにオイシイことはない。

そう、トラブル = オイシイと考えれば、怒りが湧いてくることもなかったんだな。今まで何度も実感してきたことなのに、“怒り” というヤツが出てくるとつい見失いがち。逆に言うと、それさえ心に刻みつけていれば、何があってもどうってこと無いはずだ。

だからみなさんも、原因不明のフライトキャンセルなどにあって泣きたい気持ちになったときは思い出し欲しい。「トラブル=オイシイ」という大原則を。

参考リンク:Expediasky scanner
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.