「家系」と「二郎」。一般的には「家の系譜」を意味したり「次男に付けられることが多い名前」だったりする2文字だが、こってりラーメン好きにとってはそれらの意味合いは変わる。「家系ラーメン」と「二郎系ラーメン」は、どちらも堅固な支持層を抱えた人気流派だ。

そんな巨頭同士が組み合わさったラーメンが存在することを皆さんはご存知だろうか。個性の強い両者の奇跡のコラボとも言うべきそのラーメンの名前は、ストレートに「家系二郎」。果たして「混ぜるな危険」なのか、それとも「混ぜれば悦楽」なのか。

・「家系二郎」、その融合ぶり

あまりに未知すぎる化学反応を確かめるべく、実際に現地に足を運んでみることにした。

向かった先は六本木にある「ラーメン馬場壱家 智の陣」というお店である。

同店は家系ラーメン店なのだが、特別メニュー的に「 “智の陣” 流の二郎系」として「家系二郎」を提供しているようだ。西日暮里にある同系列店「馬場壱家 風の陣」でも食べられるとのこと。

家系も二郎系も好む筆者としては期待感しかない。さっそく店内に入り、「家系二郎ラーメン 並(830円)」のボタンを軽やかに押す。

ただ、どんなラーメンかは全く予想がつかない。今までに味わったことのないような味なのか、あるいは「こってり」と「こってり」が掛け合わされることによって天文学的な「こってり」が生まれるのか。

やがて到着したラーメンは、味についてばかり考えていた筆者の横っ面をはたいてくるようなビジュアルだった。

まず目を奪ったのが、背脂やもやしなどの具材。これらは紛れもなく二郎系ラーメンの特徴だ。

そして具材を浸すスープは茶色がかっていて、家系ラーメンの特徴が表れている。

上は二郎、下は家系。ぱっと見は「こってり界のケンタウロス」かと思うほど見事な融合ぶりだ。いざ目の当たりにしてみるとインパクトがある。しかし事態はさらに思わぬ展開を見せる。

この時の筆者の頭にあった「半分は二郎、半分は家系」という認識は、スープを口に含んだ瞬間に誤りであることが判明した。背脂の風味がガツンとやってきて、その奥から控えめに家系の豚骨醤油が続く。つまり二郎系の色合いの方が強く感じられたのだ。

加えて麺の方も、コシがありつつモチモチとした食感を通して二郎系の印象を与えてくる。丼全体における比率としては、二郎系対家系が6:4か7:3くらいではないかという体感だ。思えば「家系のお店が作る “二郎系” 」なのだから、二郎系が主体となるのは自然ではある。

今までに全く味わったことがない味でも、激しく濃い味でもない。すでに知っている二郎系の味がやんわりと家系ナイズされているような、適度にこってりとした味わいである。だが面白いのは、そういう丼だからこそ美味しさが成り立っているのだろうと感じられる点だ。

おそらく両者を均等の比率で混ぜ合わせたなら、相当な喧嘩が起きて、どっちつかずになっていたはずだ。どちらかがどちらかのサポートに回ることが融合の秘訣なのだろうと思える。

結果として、二郎系の濃厚さを堪能しつつ、後味に家系ならではの醤油感も楽しめる贅沢な一品に仕上がっている。このラーメンを完成させることは決して楽な挑戦ではなかっただろうが、果敢に挑んで成功させたお店の腕前には感服するばかりだ。


・無限大の可能性

強いて欠点を挙げるとすれば、家系の要素もガッツリ味わいたいという場合には不向きかもしれないということだ。しかしその代わりに、新たな二郎系を食べてみたい方や、二郎系をまだ食べたことのない方にもおすすめできるラーメンである。

逆に二郎系のお店が作る家系ラーメンもいずれは食べてみたいところだ。ラーメンが持つ無限の可能性について、「家系二郎」にこってりと教え込まれた気分である。

・今回紹介した店舗の情報

店名 ラーメン馬場壱家 智の陣
住所 東京都港区西麻布3-20-16
営業時間 11:00~23:00
定休日 無休

Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

▼奇跡のコラボ「家系二郎」

▼二郎系の味の奥に家系の味があるようなスープ

▼麺もしっかり二郎系寄り

▼二郎系が主体で家系はそのサポートという感じ

▼夏休みのため、営業は23日からとのことです〜!

日本、〒106-0031 東京都港区西麻布3丁目20−16