家を出る時、絶対に忘れないようにしている物が誰にでもあるはず。私(あひるねこ)の場合は財布、家のカギ、そしてスマホだ。中でももっとも重要なのがスマホである。ハッキリ言って、スマホがないとまともに生活できる気がしない。

にもかかわらず、つい先日スマホを使用できなくなるという危機的な状況に追い込まれてしまった。正確に言うと、飲んだ帰りにタクシーの中に落としてしまったのだ。強制的にスマホが操作不能になるという掛け値なしの地獄……。その結果私は、わずか半日で限界を迎えることになる。

・飲み会の帰りに

ここ最近、新しいライターがドカッと増えた当編集部。そこで先日、大規模なロケット飲み会が新宿にて開催された。当日は20名以上もの関係者が集結し、会が大いに盛り上がったのは言うまでもない。

散々楽しんだ後、私は自宅までタクシーで帰ったのだが……事件はその時に起きる。いや、知らぬ間に起きていたと言うべきだろうか。家に着くなり、疲れと眠気ですぐに横になってしまう私。しかし、翌朝目が覚めると、何やら異変に気付く。あれ……?


iPhoneがない……。


・嫌な予感

テーブルの上にもリュックの中にも見当たらないぞ。ヤバイ、店に置いてきたか? と一瞬思ったが……いやいや、店を出た時は確かに持っていた。え~と、その後タクシーに乗ってぇ、降りてぇ、で今ここだからぁ……その途中で落とした? マジかよ、探しに行くの面倒くせーーーッ!


でも大丈夫。そんな時はパソコンから「iCloud」にログインすれば、iPhoneが今どこにあるのか調べることができるのだ。便利な世の中だよなぁ。てなわけで、さっそく検索開始! 愛しのiPhoneちゃんはどこ~~~~? ところが次の瞬間、画面に表示されたのは……。


大田区……だと?

・予想外の土地

まさかの事態にフリーズする私。iCloudよ、お前は一体何を言っているんだ? そう、この家の住所は東京都練馬区であり、大田区なんてほとんど行ったことがない。これはもしかしたら、システムの不具合かもしれ……はッ!

そうだ、タクシーだわ……。きっと降りる時にポケットから滑り落ちたんだ。で、たぶん床に転がったんだ。うわーー下手こいたァァァァアアア!

・打つ手なし

現在位置を見る限り、どうやらタクシーはもう走行していないらしい。じゃあ運ちゃんもその場にはいない? どんな状態かは不明だが、電話がないためタクシー会社に連絡することもできず。完全に詰んだでござる。

ただ、幸いタクシー会社の名前を覚えていたので(やたら印象的だったのだ)、とりあえずホームページから忘れ物の問い合わせをしておくことに。

・とにかく会社へ

さあ、ここから地獄のノースマホ生活の始まりである。ただ、家にいる時はまだいいんですよ。パソコンがありますからね。でもこれが外に出るとなると、話はまったく変わってくる。ドラクエで例えるなら、装備を全部外した状態で村の外に出るようなものだ。そう、気分は全裸である。

情報から完全に遮断されるため、電車の中ですることがないし、よく考えたら音楽を聴くことすらできない。もしこのタイミングで災害などが起きたら、一体どうなってしまうのだろう? 誰とも連絡が取れないんだが……。

・返信アリ

不安に怯えながらも、なんとか会社に着いたので一安心。パソコンがありゃあ何とかなるんや。なのでしばらく普通に仕事に励もう……とその時! なんとタクシー会社から返信のメールが届いたではないか!! うおおおおおおお! キ、キターーーーーー!! 気になる内容は以下の通り。


「お忘れ物のiPhoneの件ですが、本日営業所より蒲田警察署に忘れ物として引き渡させて頂きました」


か、蒲田警察署……! ってどこだよ……!! だが、そこに行けば確実に私のiPhoneはあるのだ。本当によかった……。しかし安心するのはまだ早い。私はこれから行ったこともない場所に、フル裸(ら)の状態で向かわねばならないのである。控えめに言ってクソ怖いでやんす。

・蒲田へ向かう

乗換案内なんて便利なアプリは見られないため、どこで降りて何線に乗ればいいのかを出発前にしっかり覚えておく必要がある。そうだ、警察署までの地図も印刷しておかないと! 撮影用に以前使っていたデジカメを引っ張りだして準備はOK。やれやれ、スマホがないとやることが多いな。

そして、手ぶらで電車に乗ってみて改めて思ったね。乗換案内はマジで神。出発地と目的地だけ入力すればいいとか、作った人天才だろ。しかしこれに慣れきってしまうと、本当にこの電車で合っているのかイマイチ確信が持てないため、どうも心が落ち着かない。ウトウトするなんてもってのほかだ。

・マジでつらい

こうして、どうにかこうにか蒲田駅に到着。たぶんこっちだよなぁ……と、とりあえず駅から歩き出してみるも、なんか違うような気がしてきた。そうだ、ちょっと地図で確認してみるか。事前に印刷してきた用紙をリュックから取り出す私。だがここで、自らが犯した致命的なミスに気付いた。


地図が広域すぎる。


いや駅ちっちゃ! 警察署もちっちゃ!! アバウトすぎるだろこの地図! あークソッ、指で拡大してえ……!!

・再会なるか?

そしてこの日もっともキツかったのが、どうやら線路を挟んで逆サイドに来てしまっていることに途中で気付いた時だ。ポンコツ地図のせいで、どこから線路を渡れるのかまったく分からないではないか(自業自得だが)。警察署の窓口が閉まる時間がビミョ~に近づきつつあるのに、だ。進むか戻るか……。今が運命の別れ道かもしれない。

と、そこへ! 蒲田駅の職員らしき男性が線路脇を歩いているのが目に入った。これは……絶対に聞いた方がいいだろ! すいませーん!! その結果、私は人に道を尋ねるという行為を、なんと数年ぶりに経験することになったのだ。マジでいつ以来だろうか……?

ありがたいことに男性は丁寧に道を教えてくれ、それは同時に人の温かさを再確認する時間でもあった。おかげで時間内に警察署に辿り着いた私は、iPhoneと約半日ぶりの再会を果たす。ありがとう……正直もう、限界寸前だったよ。ありがとう。皆さん本当にありがとう! ただ……。


こうも思うのだ。確かにスマホのない生活は不便だった。キツかった。しかし我々は、あまりにもスマホの利便性に依存しすぎていないか? SNS上における人々との繋がりは増えたが、果たして現実ではどうだろう? 道を尋ねることすらしなくなっているこの現状が、本当に人間のあるべき姿と言えるのだろうか?

よく考えたら、過去にはスマホどころかガラケーさえ持ち歩かない時代があったのだ。自分も子供の頃はそうやって生きてきたはず。でもあの時は、それを不便とは思わなかった。むしろおかしいのは、情報に完全に覆い尽くされてしまった現代の方ではないか? そんなことを考えながら、私は警察署を後にしたのだった。


とは言え……。


やっぱスマホがあるって最高ォォォォオオオ!


それとこれとは話が別ゥゥゥゥウウウウ!!





人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 来世はスマホになりたーーーい! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄


– 完 –

Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:iCloud

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