調味料と呼ばれるものは星の数ほどあるが、どこの家庭にも必ずあると言っていいのは「塩」だろう。あまりにも身近すぎて、塩の違いなんて深く考えたこともなかったが、先日、とんでもない個性を発揮している塩に出会ってしまった。

何の気なしに使ってみたところ、ダシも化学調味料も入れずして、コク深い料理ができてしまったのだ! 塩を変えるだけで、こんなに料理も変わってしまうなんて……おぬし、いったい何者だ!?

・能登の藻塩がウマすぎてビビった

衝撃的な塩の名は、『能登半島・珠洲(すず)の藻塩(もしお)』だ。“さいはての地” こと石川県珠洲市で生産されているもので、連続テレビ小説『まれ』の舞台になったあのあたりである。

もらったまま、しばらくしまいこんでいたのだが、ある日、何気な~く野菜炒めに入れてみた瞬間、革命が起こった! な、何これ!? 化学調味料も中華だしも入れていないのに……塩だけなのに、すっごいコクが出ているじゃないかーっ!!

・化学調味料いらず! 塩なのにダシのような深いコク

野菜炒めや卵焼きなど、シンプルな料理であればあるほど、ダシのような不思議な旨味を強く感じる。とくに「番茄炒雞蛋(トマトと卵炒め)」を作ったときなんて、メッチャ本場の味! 中国の鶏スープの素「鶏精(ジージン)」を入れたのかというくらいシッカリとした味がついていた。

これは、単なる塩化ナトリウムではないぞ! となると一体……ということで、製造会社「新海塩産業」のサイトを見てみたところ、

「古代の製塩に使われていた海藻・ホンダワラの旨み成分を盛り込み、炊き上げました。対馬海流と千島海流が交わる海に接する能登半島。その恵みのきれいな海水と海藻を使用。素材の味を引き出し、さまざまな料理におすすめです。」(新海塩産業サイトより引用)

とのこと。なるほど、この旨味は海藻によるものだったのか! 海藻と言えば、ミネラルと旨味の塊だ。どうりで味わい深いわけである。

・現代だから食べられる「伝統の塩」

新海塩産業では、「流下式塩田法」という製塩方法で塩を作っているそう。『まれ』にも登場した「揚げ浜式塩田法」を発展させたものだという。そして、公式サイトには豆知識として以下の記載がある。

「平成に入って、国の専売制度が廃止されたことに伴い、化学式製塩法以外の塩生産が再び出来るようになりました。

奥能登では、文化保存目的で揚げ浜式塩田法が残っていたこともあり、昔のような塩づくりが再開されるようになりました」

えー! この海藻を使った伝統的な塩って、いっとき消えていたってこと? しかも、わりと最近まで……。こんな感動的な塩が消えていたなんてもったいない。文化財として残っていてよかった……そしていまこの塩が買えるようになるなんて、現代に生きていてよかった! 

なお、『珠洲の藻塩』はそのまま舐めると、かなりしょっぱいので、おにぎりやゆで卵につけるにはトゥーマッチ。野菜など素材の味と、ほどよい水分と混じり合ってこそ、とんでもないパワーを発揮するように思える。

100グラム650円と、安くはないが、化学調味料やスープの素を使わずに済むので、その分お得かも! 料理にひとつまみ、コレがオススメだ!

参考リンク:新海塩産業「能登半島 珠洲の藻塩」、珠洲の塩の歴史塩業の整備及び近代化の促進に関する臨時措置法
Report:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.

▼能登半島 珠洲の藻塩!

▼茶色くて、しっとりしたお塩。やや粗い

▼原材料はとてもシンプル

▼そのまま舐めると……

▼しょっぱ!!!! というか味濃い!

▼料理に使うと、ダシを入れたかのようなコクがでるぞ

▼ネット販売、能登のお土産屋さんにはたいてい置いてあった。幻のコメ「神子原米」の神子の里にもあったよ