声の魔術師・声優。本来、裏方の仕事だが、アニメが全盛期を迎えている現代において、アイドルのように表だった活動をしている人も少なくない。だが、そんな声優の本職であるアフレコ現場はいまいち謎に包まれている

以前の記事で『プリズン・ブレイク』の吹き替え現場に参加し、プロの世界を垣間見た私(中澤)。しかし、同じ声優でも内容が変わればやり方も変わるもの。というわけで、今回はレゴのアニメーション『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』に声優として参加してみたぞ!

・字幕版ではジャッキー・チェンも声優参加

世界中の子供に人気の組み立て式ブロック玩具・レゴ。『スターウォーズ』『インディ・ジョーンズ』『ハリー・ポッター』とのコラボなど、メディア展開も人気を博している。そんなレゴを題材にした作品の1つが『レゴ ニンジャゴー』だ。

レゴのニンジャ達が活躍するアニメーション作品である本作。今回、私が潜入したのは、2017年9月30日(土)に日本公開される劇場版『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』だ。ちなみに字幕版の声優の中には、ジャッキー・チェンもいる

・個性的なモブのオッサン

それはともかく、声を当てるのはダンス教室の講師。モブとは言え、前半と後半で2回登場するキャラだ。『プリズン・ブレイク』で演じたタクシー運転手より個性が立っているが、他キャラとの絡みがない分、合わせるのは楽かもしれない。

髭もボーボーのオッサンだし、恰幅も良いから声も低い方がいいか……? 『プリズン・ブレイク』のオッサンキャラを演じている時に「キャラの体重に合わせて声を重く」とアドバイスをもらったことを思い出す。イメージを膨らませて当日朝。

・くぎゅう

現場の録音スタジオに行くと、200ページくらいある正式な台本が用意されていた。声優陣は、山寺宏一さんに沢城みゆきさんなどそうそうたるメンツ。そんな豪華声優陣を見ていた時、脳天を衝撃が駆け抜けた。

釘宮理恵さんがいるゥゥゥウウウ! アニメ『ゼロの使い魔』のルイズからツンデレに目覚めた私。釘宮さんは私が声優に興味を持ち始めたキッカケの人物である。今日の録音は1人だが、共演できただけでくぎゅううううううううううううううううう

・作品の世界観によるオッサンの違い

しかし、今は自分の仕事に集中しないといけない。録音スタジオに入ると、マイクとの距離などを監督さんやエンジニアさんと調整。雑談程度にキャラについても聞いてみたところ「かなりシュールなキャラ」とのこと。

シュールってどんな声なんだ……? とりあえずイメージしてきたオッサンキャラで録音してみることに。まずは、瓦礫になった街での1コマ。モブが街の崩壊を嘆くシーンである。私のセリフは下記だ。

「あ~やれやれ、オレのダンス教室がめちゃくちゃだよ」


──イメージしてきた声で話してみたところ、「ちょっと絶望感が出すぎている」と監督さん。レゴの世界観と合っていないようだ。ヘコんではいるものの、どこかに「また建て直せばいいや」くらいの軽さがあるという。作品の世界観によって登場するオッサンも違うんだな

・キャラに寄せて変更されるセリフ

そこで、イメージしていたキャラを一旦捨てて「マジかよ!」というテンションで声を当ててみたところ、雰囲気にマッチした。何度かとり直すうちにセリフが以下のように変更。

「もうやだー! あたしのダンス教室がめちゃくちゃだわ!!」


──完全にオカマのオッサンだった。なお、ダンス教室の講師がもう1回登場するのは、ニンジャゴーに観衆が歓声をあげる1コマ。ネタバレになるため、このシーンのセリフは割愛させていただくが、録音の雰囲気は動画でご確認いただければ幸いである。

・モブ1人1人にも物語がある

なんだかんだ2シーンで計30分くらいかかってしまった。良い声を出す以前に「キャラを掴む」のがかなり難しい声優。名もなき1人1人にちゃんと設定とキャラがある。映画を観る際は、その辺りにも注目すると面白いかもしれないぞ。

参考リンク:レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.、©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. A LL RIGHTS RESERVED.

▼声優2作目!

▼モブ1人1人に物語がある

▼お笑い芸人・出川哲朗さんも声優参加している。アフレコに挑戦するまでの様子はYouTubeで垣間見ることができるぞ!