2017年、夏。増えすぎたセミの声で何も聞こえず、すべてが陽炎にゆらいで何も見えず、誰もいない駅でふと振り向き見たものは……立ちそば屋

長野県塩尻の空は高い。気が遠くなるほどに。そんな雄大な景色とは反対に、この駅には「日本一狭い」と言われる立ちそば屋がある。1人入るだけで満員のこのそば屋。しかし、そばからは雄大な大地の味がした

・日本一狭い?

ウマいそば屋を求めて色んな街を放浪する「立ちそば放浪記」。今回訪れたのは長野県の塩尻駅にある『桔梗(ききょう)』である。前述の通り、「日本一狭い」と言われるこの立ちそば屋。その噂を聞き、どれくらい狭いのか見てみたくなった。

・見つけられない

駅構内にあるらしいが、ホームをいくら探してもそれらしきものは見当たらない。そこで、駅員さんに聞いてみたところ、「あそこですね」と1、2番線の方向を指さした。その指の先には「そば処」という看板が。

だがおかしい。先ほどホームに降りた時はこの看板さえ目に入らなかったのだが、教えてもらった今でさえ看板はあれどもそば屋の姿はない。おそるおそる近づいてみると……

あ、あったーーーーー! エレベーターと壁の間のほんの数十センチの隙間に巣穴のような入り口があり、その向こうにカウンターがある!! 隠しステージかよッ!

・れっきとしたそば屋

ともかく入ってみると、店内は1人で満員、詰めたらギリ2人いけるくらいのスペース。だが、券売機にはそばだけでも12種類のメニューがあり、れっきとしたそば屋である。

「きのこそば(420円)」や「安曇野わさびそば(420円)」「野沢菜わさび昆布そば(390円)」など、長野らしさを感じさせるそばの数々。せっかくなので「安曇野わさびそば」を注文することに。そばはすぐにカウンターに置かれた。

・そばの味やいかに

濃いつゆに映える鮮やかな緑。わさび菜が食欲をそそる。不揃いの麺も手打ち感がありグッドだ。さっそく、そばを食べてみたところ……

口いっぱいに香ばしい風味が広がった。ほのかな甘みさえ感じるモチモチした食感のそばは、つゆと合わせるだけで十分なほどに味が強い

・雄大な味

そこに吹き込む一陣の風。これはわさび菜の味だ。「ツーン」としたみずみずしさが爽やかな後味を残す。そう、このそばは長野を吹き抜ける一陣の風の味! カウンターの向こうに安曇野の雄大な自然を見た!!

・これぞ隙間産業

なお、日本一狭いと言われる本店だが、逆側にあたる改札の外側の休憩室の中にもカウンターがある。そちらのカウンターでゆっくり食べている人も多かったぞ。

さらに、篠ノ井駅にある姉妹店『あんず』は、間口がもっと狭いという。マジかよ!? しかも系列ですか。だがしかし、そんな狭さにより東京まで知られるこの店。これぞまさしく隙間産業と言えるだろう。

・今回紹介した店舗の情報

店名 桔梗
住所 長野県塩尻市大門八番町9−1JR塩尻駅構内
営業時間 6:50~19:00
定休日 無休

Report:立ちそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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▼大地を吹き抜ける一陣の風!

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