海外に行くと、自らの「生きる知恵」や「野性的な勘」を試さなければならない時がやって来る。日本とはかけ離れた環境の「当たり前」がヤバすぎた場合、頭で理解しようと思っても無理なので、最終的には勘に頼らざるを得なくなるのだ。

たとえばモロッコのサハラ砂漠で暮らしているベルベル人にとって、砂漠は庭みたいなものである。そんな彼らから教えてもらった「砂漠で迷わない方法」を実践して目的地を目指してみたら、やはり野性の勘をフルで活用するハメになってしまったのでお伝えしたい。

・ベルベル人の普通がヤバい

ここ数カ月間ベルベル人と共に生活をしていた筆者は、事あるごとに彼らの異常な能力の高さを目の当たりにしていた。たとえば彼らは、数百メートル離れた友人と雑談をするほど目が良い。遥か遠くにいる兄弟を紹介された時には「いや、米粒にしか見えないんですけど」と思ってしまうほどであった。

さらには、様々な言語を駆使して世界中から訪れる観光客をもてなすことができ、ラクダや羊とのコミュニケーションも見事である。一方で、彼らに弟子入りをした筆者は、英語さえまともに話せない上に、ラクダにも余裕で無視される始末……なんというか、ポジティブ要素がゼロすぎて逆に気分爽快なくらいであった。

・サハラ砂漠の歩き方

そして今回、ベルベル人から「砂漠で迷わない方法」を教わったのだが、そもそも上級者向けというか「隣町の砂漠から引っ越してきました」レベルの人に向けた内容だった。ざっくり説明すると、目的地の方角にある砂丘を覚えておけば迷わない……らしい。マジかよ。

実際に砂漠を歩いてみると、数キロ先の目的地まで、ポイントとなる目印が全て砂丘というのは、さすがにレベル高すぎな気がする。写真を撮って後で復習しようと思っても、どれが目印の砂丘なのか全く分からないのだ……圧倒的な絶景写真にただただ絶句するだけであった。

・約5キロ先のキャンプ地まで歩く

ちなみに筆者の目標は、拠点のホテルから約5キロ離れた場所にあるベルベル人のキャンプ地まで、観光客をラクダに乗せて1人で案内できるようになることである。途中休憩を含めて片道約2時間の道のりを、毎日ベルベル人と行ったり来たりして体に染み込ませていった。

そんなこんなで仮免試験の日。内容は、ラクダを引いてキャンプ地を目指す筆者の隣をベルベル人のモハメド先生とハッサン先生が歩き、明らかに方向を間違えた時だけ「ノー」と言ってくれるシンプルなもの。涼しくなった夕方に出発し、日が暮れる頃にゴールの予定だ。

いつからか相棒となったラクダも時々逃走はするものの、筆者のベルベル語に反応を示すようになり、心強い旅の仲間となっていた。時間はかかったが、砂丘の形を含めてルート全体の雰囲気はなんとなくつかんだ……ような気がする。というわけで、いざ出発ッ!

・30分で「ノー」

最初は怖かった砂漠に吹き荒れる風が、今は心地よく感じられる。サハラ砂漠に慣れたからなのか、いや、サハラ砂漠に受け入れられたのだ。とにかく先頭で歩くのは気持ちがイイ。出発して30分でサラッと「ノー」と言われたのは予想外だったが、気分は最高であった。

結果的にはその後、なんとか無事にキャンプ地にたどり着いたが、迷わなかった一番の理由は「大きな月が前日と同じ場所から上がって方角がわかったから」である。果てしなく広がる砂の海で迷うようなヤバい時、人間はあらゆる勘が働いて正しい道に導かれるのだ。

というわけで、ベルベル人のアドバイスはレベルが高すぎたために実践できなかったが、砂漠を知り尽くしている彼らは常に頼もしく、サハラ砂漠のように広い心の持ち主でもあった。また機会があれば、日常生活でも使えるサハラの知恵を皆さんに紹介したいと思う。

Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.

▼拠点のホテル

▼月の存在感がハンパじゃない

▼キャンプ地

▼ラクダ使いは観光客を砂漠の奥へ案内するのが仕事である