2017年2月13日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男氏がマレーシアで殺害され、世界に衝撃を与えた。常識的な発言や穏やかな人柄などもあって、日本でも彼の死を悲しむ人が多かったのは記憶に新しいところだ。

かの有名な「ディズニーランド事件」も手伝ってか、日本好きだったことでも知られていた金正男氏。そんな彼が愛していた料理が、サラリーマンの聖地・新橋にあるのだとか。なんでも『お多幸』というおでんのお店がそうらしい。

・書籍で知ったおでんの有名店

そのことを私(筆者)が知ったのは、つい先日のこと。改めて金正男氏の人生を振り返ろうと、書店で『父・金正日と私 金正男独占告白(著・五味 洋治)』を手にとったことからだった。そして読み進めていると、金正男氏のお気に入り店が記されており、そのうちのひとつが『お多幸』だった訳だ。

お気に入りには、新宿や赤坂の高級店もズラリと並ぶ中、サラリーマンの街として知られる新橋で、まさか金正男氏がおでんに舌鼓を打っていたとは……。是が非でもその味を確かめたいと思い、実際に行ってみることにしたのだった。

・超がつくほどの老舗

まずお店のことを調べていて驚いたのが、『お多幸』は1932年(昭和7年)創業の超がつくほどの老舗だということ。2008年(平成20年)8月より、店舗を新橋1丁目から新橋3丁目へ移転したとのことだが、東京で長年の歴史を持つだけで期待せずにはいられない。

訪れた日は土曜日ということもあって、街には落ち着いた空気が流れていた。サラリーマン街のよくある週末の光景の中、JR新橋駅から数分歩けば街に溶け込むようにしてひっそりとたたずむ『お多幸』に到着した。

品のある扉を開けて店内に入ると、懐かしい雰囲気を残すために、旧店舗の設備をなるべくそのまま移設したというカウンターが目に入る。外観こそ高級な感じがしたが、実際に入ってみたら庶民的な雰囲気も漂っていて肩肘張らずに心地がいい。

・種類が豊富なメニュー

メニューに目を通し、さっそく注文。おでんだけでなく、刺身、焼き物、揚げ物など種類は豊富だ。私はおでんが12品入った盛り合わせ(2920円)、おすすめと書かれていた鶏だんご(380円)、わかめ(270円)、いんげん(220円)を注文した。季節に合わせ、おすすめが変化するのも好印象である。そしていざおでんと対面すると……

おでんの色合いがかなり黒い。出汁が染み込んでいると思われ、見た目から味の濃さまで伝わってくるようだ。ただ、圧倒的な黒さに反して思わぬ味を体験させてくれたのが、『お多幸』のおでんであった。

・味がしっかり染み込んだおでん

なぜなら、出汁(だし)は濃いようでアッサリさも残していて、食べやすい上においしい。一口、また一口と食べれば、おでんから関東風の醤油出汁が溢れ出し、しっかりかつ絶妙に煮込まれていることがよくわかる。これはビールだけでなく、日本酒にも抜群に合うのではないだろうか。

だいこん、たまご、とうふといった定番どころはもちろん、じゃがいも、がんも、あつあげなど、他のおでんも一級品。いい出汁を吸っていて最良の素材が活かされているのだから、長年愛されている人気店だということ、そして金正男氏が愛したのも納得だった。

・THE関東味

これが「関東味のおでん」か。目と舌でおでんを堪能した私は、東京を知っているつもりだったが、そうではないことに気づかされて店を出た。金正男氏が殺害されてからもうすぐ4カ月。彼が愛した『お多幸』のおでんは、これからも多くの人に幸を届けていくことだろう。

・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 新橋 お多幸
住所 東京都港区新橋3−7−9 カワベビルB1
時間 15:00~23:00(月~金)15:00~22:30(土)
休日 日祝(10月〜3月は祝日も営業)

Report:原田たかし
Photo:RocketNews24.

▼お店の外観

▼地下へ降りていくと……

▼おしゃれな扉が迎えてくれる