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もはやすっかり「引きこもり」という言葉は一般的になった。SNSではネタとして使う人もいるくらいだが、一方で本当に悩みを抱えている人が多いことも忘れてはならない。そんな引きこもりの少年が主人公のアニメが『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(以下、あの花)』である。

なんと、この作品の脚本家の岡田麿里さんが自伝『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』を発売するという。岡田さんいわく、主人公のじんたんの行動は引きこもっていた自分の経験とのこと。

・重いテーマを美しく描く

『あの花』は、引きこもりの少年・宿海 仁太(じんたん)と、かつての友達たちとの心の交流や成長を描いたアニメ。何度も葛藤しながらも一歩を踏み出していくじんたんの姿は、多くの人の心に突き刺さり、このアニメは実写映画化されるなどの大ヒットを記録した。

そんな『あの花』を書いたのが、脚本家の岡田麿里さん。2015年公開のアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。(ここさけ)』も好評を博したヒットメーカーである。そして今、岡田さんの自伝の発売情報が Amazon に掲載されているのだ。

・Amazonの発売情報

Amazon によると、発売は2017年4月12日で価格は1512円になる様子。前述の通り、タイトルは『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』となっており、引きこもりであった過去から現在までが書かれているようである。なお、内容紹介は、下記の通り。

・自伝の内容

プロローグ 心が叫びたがっていたんだ。
『心が叫びたがってるんだ。』は、私の故郷、秩父を舞台にしている。その秩父での先行上映会。機材トラブルで途中で上映が止まるというパニックの中、私は、あの頃と何も変わっていない自分に気がついた。

第一章 学校のなかの居場所
小さいころから思ったことが言えない子だった。小学校に入学すると、苛められた。いじめっ子の背景には夕暮れに黒々とうかびあがる秩父の山々があった。それはでっかい檻のように見えた。

第二章 誰に挨拶したらいいかわからない
陽子は私と同じ愚鈍なのに皆から好かれていた。宮沢賢治の詩のように無私だったのだ。そういうキャラにならなくては。そう努力していたある朝の教室で、私は誰に挨拶したらいいかわからなくなってしまった。

第三章 一日、一日が消えていく
学校に行けなくなった私は、食うか、寝るか、ゲームをするか、本を読むかの日々を過ごしていた。母親はそんな私を恥じた。志賀直哉の「暗夜行路」を読んでいると「消日」という言葉があった。私のことだ。

第四章 行事のための準備運動
アニメ『あの花』でずっと学校を休んでいたじんたんが外に出るシーンがある。ドア前で近所の人の声が聞こえ、躊躇する。これは、私が学校行事のために、久しぶりに外に出るXデーをモデルにしている。

第五章 お母さんだってひどいことをしてる
私の父親は、浮気がばれ、祖父に離婚させられた。一人になった母は、「秩父の浅野温子」と言われ、彼氏を次から次へとかえていった。時に修羅場があり、私はその彼の一人に「おっぱいの絵を書け!」と命令される。

第六章 緑の檻、秩父
学校は休んでいても、作文の宿題だけは提出していた。それが新聞社の賞をとった。「岡田さんは学校にこなくてもいいから、一緒に作文を書いて賞に応募しましょう」。優しい女性の国語教師は言ったのだが。

第七章 下谷先生とおじいちゃん
何とか高校には合格したものの、その高校もすぐに行けなくなってしまった。担任の下谷先生は、読書感想文の文通を求めてくれた。その添削に「麿里という少女の」という言葉があったことに衝撃をうける。

第八章 トンネルを抜けて東京へ
下谷先生の奥さんは、「生きづらい人が集まるコミューンがある、卒業後はそこに」と言った。「麿里さんは、社会に出たらもっと傷つく」。こんな言葉がとっさに出てきた。「私はやりたいことがある。ゲーム学校に行く」

第九章 シナリオライターになりたい
新しくできた友達と夜明けの渋谷の街を歩きながら「どうして私はここにいるんだろう」と感じた。日常のささいなことがずっと手の届かないと思っていた奇跡だった。その中で将来に対する夢が形づくられ始める。

第十章 Vシネからアニメへ
シナリオライターになりたいという一念で、Vシネの仕事をしているうちに、アニメの現場に参加することになった。「君、シナリオライターになりたいの? 書いてみれば」。体中の毛穴がぶあっと開いた。

第十一章 シナリオ「外の世界」
そう言った監督にまず言われたこと。君はどんな人なのかそれがわかる脚本を書いてみなさい。私自身のことを書くならば、秩父のあの部屋にひきこもっていた時代のことを書くべきだ。

第十二章 かくあれかしと思う母親を主人公にする
オリジナルを書いてみれば? 学校に通えなかったせいで昇華されていない思春期が、終わりどころを見失っていた三十歳の私は、かくあれかしという母親をモデルにして脚本を書く。『花咲くいろは』の誕生。

第十三章 あの日みた花の名前を僕たちはまだ知らない。
企画コンペにオリジナル作品を。そう言われて私はある決断をする。それは学校に行けなかった少年を主人公にした物語だ。アニメの美しさにほんのひと振りの現実。じんたんの登場する「あの花」が書かれる。

第十四章 心が叫びたがっているんだ。
私の声さようなら。私の声消えたことみんな喜んだ。『ここさけ』のクライマックスで、喋ることができなくなってしまったヒロイン成瀬順が歌う「私の声」。これは、いきづまった私の声でもあった。

エピローグ 出してみることで形になる何か
「ここさけ」の劇場上映があってしばらくして母親から連絡があった。「お母さんも昔、麿里ちゃんに似たようなこと言っちゃったわね」。順の母親の台詞のことだった。「そんなに私のことが憎い?」「もう疲れちゃった」

──概要を読んだだけでも、『あの花』『ここさけ』『花咲くいろは』などのシーンが、岡田さんの経験に基づくものであることが分かる。また、帯には岡田さん自身の言葉で「ひきこもりのじんたんが近所の目を気にするのは私の経験です」と書かれている。

・岡田さんが描く希望

『あの花』も『ここさけ』も、軽い表現や都合の良い展開もあるにはあるが、それらが逆に作者の込めた「希望」のように感じていた私(中澤)。そんな希望が多くの人の胸を打ったのは、リアルがあったからかもしれない。作品にしてくれてありがとうございます。

参照元:Amazon
執筆:中澤星児