世界中のメディアが大々的に取り上げた金正男氏の殺害事件。事件の真相はいまだ明らかになっていないが「スパイ映画さながらの暗殺劇」は、北朝鮮の指令による政治的暗殺という見方が強いようだ。

なんでも正男氏の暗殺は5年前から計画されていたとも言われているが、今回お伝えしたいのは、ちょうど5年前に、2泊3日の弾丸ツアーで北朝鮮に突撃していた私(筆者)の体験記である。

・年に一度の長期休暇

2012年5月、私は当時勤めていた会社の「年に1度の長期休暇」を利用して、1人で北朝鮮に行くことを決めた。理由はよく覚えていないが『カンボジアでバズーカを発射する旅』と悩んだ末の決断だったと思う。

旅行の手配は「一番安い」中国のツアー会社にお願いした。ただ、申し込んだ直後に届く「北朝鮮で絶対にやってはいけないこと」や「持込禁止品」といったメールをきちんと読んだおかげで「全然行きたくないです」というテンションで出発の日を迎えることに……。

ちなみに持込禁止品は、携帯電話やパソコン、雑誌、双眼鏡などであった。

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・高麗航空で平壌へ

いつもなら成田空港に到着しただけで、無意味にテンションが上がってしまう。おそらく空港内で死んだ表情をしているのは私だけだろう……。不安を抱いたまま飛行機に乗り、まず到着したのは北京首都国際空港。北京から平壌までは、北朝鮮国営の高麗航空で向かうことになる。

高麗航空といえば、世界に約600ある航空会社で唯一「1つ星」を獲得した、ネットでも超有名な航空会社だ。そもそも飛行機が苦手な私にとって「機種老朽化の程度」「乗客への気配り」「機内食」など、ほぼ全項目で最低評価をゲットした飛行機に乗ること自体ただの悪夢である。

緊張感MAXのまま噂の機体に乗り込み、神に無事を祈りながら離陸。フライト中は「軍人さんのカラオケ大会」的な番組を眺めながら、味のしないハンバーガーを食べるという全くリラックスできない時間を過ごした。さらに私はこの時、ある重大なミスを犯していることに気がついたのである……。

・携帯は出国まで没収

実は、緊張を和らげるために日本で購入した『プレイボーイ』が、カバンの中に入ったままなのだ。先述した通り、雑誌の持ち込みは禁止、前田敦子と渡辺麻友が白いビキニで表紙を飾るプレイボーイの存在がバレてしまったら……恥ずかしいだけでは済まないはず!

そんなこんなのうちに、幸か不幸か飛行機の揺れなど全く気にならないまま平壌国際空港に到着。無念の表情を浮かべたまま税関に向かったが……荷物検査はX線に通しただけで終わった……って、マジかよ!

なお、携帯電話は出国まで空港で預かるとのこと。預かり証を受け取り、無事北朝鮮に入国となった。

・指導員と合流

私を迎えてくれたのは、これまた国営の「朝鮮国際旅行社」から来たという、日本語ペラペラの指導員2名。北朝鮮滞在中は、どこへ行くにも彼ら2人と運転手が同伴するとのこと……どうやら平壌観光は、自動的にオッサン3人と私の思い出作りの旅になるようだ。

・平壌高麗ホテル

宿泊先は平壌駅の近くに位置する平壌高麗ホテルだった。平壌では最も高級な宿泊施設で、ホテル内にはプールや卓球場、美容室まである。ただ、受付のお姉さんに「髪を切りたい」と言ったら「絶対に無理」って感じで断られたので “誰もが利用できる施設” ではないのかもしれない。

ちなみに私の部屋は25階のツインルーム。トイレはTOTO製でテレビはSHARP製、清潔感のあるシンプルな部屋だった。何気なくテレビをつけると、朝鮮中央テレビのおばちゃんアナウンサーが声を震わせながらニュース原稿を読み上げている……初日の夜は退屈に過ぎていった。

そして2日目は、いよいよ平壌市内の観光ツアーである。そこにあった、日本では考えられない非日常的な風景の数々とは? 続きは2ページ目へ急げ!

Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.