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2016年に一躍時の人になったピコ太郎。『ペンパイナッポーアッポーペン(PEN・PINEAPPLE・APPLE・PEN)』の動画が注目を浴び、世界的なスターとなった。

彼を象徴するこの言葉、『ペンパイナッポーアッポーペン』が無関係と思われる他の企業によって商標登録されていたことについては、すでにお伝えした通りだ。これは法的に問題はないのだろうか? そもそも商標登録とは何なのだろうか? 法律の専門家に尋ねてみた。

・アディーレの吉岡弁護士

今回質問に答えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の吉岡一誠弁護士(東京弁護士会所属)だ。そもそも商標登録とは何なのか? また、今後ピコ太郎は「ペンパイナッポーアッポーペン」を自由に使えなくなるのか? そのあたりを質問した。

問1:商標登録とは、どういうものなのですか? 手続きはどのように行うのですか?

:「商標とは、自分の商品・役務と他人のそれとを識別するために用いる表示をいい、商標登録は、商標を使用する商品・役務の区分(政令で定められています)を指定して書面で特許庁に対して出願をします。

我が国では、先に出願した者に商標権を付与する先願主義が採られており、商標登録が認められれば、指定商品・役務についてその商標を独占的に使用することができます。願書が出されると、その方式を充たしているか、商標法4条1項等の定める登録の拒絶理由に該当しないかの審査がされます。拒絶理由に該当しない場合には、登録を認める査定がされます」

問2:関係のない企業が、商標登録をすることは法的には問題ないのですか?

:「商標法は、他の企業が採択した商標を無断で出願すること自体を拒絶理由とはしていないので、これが禁止されるわけではありません。

もっとも、『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』は、ピコ太郎が芸人としてギャグに用いているものであり、そもそも商品・役務の出所を表示して、他の商品・役務と識別するためのものではないので、ベストライセンス株式会社が商標登録の出願をしても、自他の商品・役務の識別力がないとされ、商標法3条1項6号の拒絶理由に該当すると判断される可能性があります。

仮に『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』が商品や役務を識別する機能があるとしても、既に日本国内及び国外で広く認識されたものであるので,この名声に便乗して、不正な利益を得ようとする目的で商標登録を受けようとすることは、商標法4条1項19号の拒絶理由に該当すると判断される可能性もあります」

問3:今回の「ペンパイナッポーアッポーペン」が商標登録された場合、ピコ太郎は自分の歌なのに自由に歌えなくなってしまうですか?

:「仮に、ベストライセンスの商標登録が認められたとしても、指定商品・役務についてこの商標を独占的に使用することができるだけであり、ピコ太郎がギャグとしてこれを用いることは、商品・役務を表示するために商標として使用するものではないので、ピコ太郎が歌を歌ったり芸を行うことが制限されることにはなりません」

問2にあるように、ピコ太郎の名声に乗じて、利益を得ようすると登録は、審査で拒絶される可能性が高いようだ。もし仮に審査が通っても、ピコ太郎が『ペンパイナッポーアッポーペン』を使うことに問題はないようである。

とりあえず、ひと安心。それにしても、この会社は何の目的で、基本的に自社とは無関係の商標登録を行っているのだろうか? ナゾである……。

協力:アディーレ法律事務所
執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24