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次期大統領にドナルド・トランプ氏が選ばれたことで、アメリカ社会は大きな変化を迎えることになると予想されている。なかでも人々が懸念しているのが、マイノリティに対する差別の加速だ。

しかし、懸念はすでに現実となっているようだ。なんとトランプ氏が大統領選で勝利した直後から、全米各地でイスラム教徒、黒人、ヒスパニック系、同性愛者などに対して、差別的な行為が相次いでいると報じられているのである。

・大学で罵声を飛ばしたトランプ支持者ら

ボストン郊外、ヒラリー・クリントン氏が通っていたことでも有名なウェルズリー大学でそれは起こった。「トランプ」の旗を掲げたピックアップトラックに乗った2人の男が大学にやって来て、大騒ぎしながらキャンパス内を車で走り回ったあと、黒人生徒が住む寮に向かって罵声を飛ばし始めたというのだ。

彼らに対して帰るように言った寮生に、男たちは唾を吐きかけたそうだ。ウェルズリー大学学生は「こんなのは私のアメリカではない。憎しみと偏屈に満ちたトランプのアメリカだ」という言葉と共に、男2人の様子を Facebook 上にアップしている。

・Twitter 上には、嫌がらせを受けた人々の体験談が多数

Twitter にも、人種差別的な嫌がらせを受けた人々からの体験談が次々と投稿されている。

多かったのは、「スカーフを身につけていたら、通りがかりの誰かから “あんたの時代も終わったね、カワイ子ちゃん” と言われた」「ガソリンスタンドにいたら、男のグループから “国に帰れ、アプー” と叫ばれた」(注:アプーとは、アニメ『ザ・シンプソンズ』のインド出身のキャラクター)など見知らぬ人から嫌な言葉を投げつけられたという体験談。

他にも「母親から “どうかヒジャブを身につけないで” とお願いされた」「今日、イスラム教徒の友人が、ヒジャブを着用せずに登校してきた」という人種差別的な嫌がらせを恐れるイスラム教徒の女性たちの姿も聞かれた。

またニューヨークでバスに乗っていた女性が、地元のカソリック系学校に通う女子生徒グループから「あなたバスの後ろに座るべきじゃないの? トランプが大統領なんだから」と言われたそうだ。

・嫌な目に遭う子供たち

子供たちも嫌な目に遭っている。ミネアポリスのメープル・グローブ高校では、トイレのドアに「トランプ」「白人専用」などの言葉と共に、大きく黒人への差別用語が書かれていたとのこと。この落書きを見た生徒は「落書きを見てショックを受けました。学校で泣きたい気持ちになったのは初めてです」とメディア『CBS Minnesota』に対して語っている。

『Fox13』によると、ユタ州の高校ではヒスパニック系生徒への嫌がらせが報告されている。カーンズ高校に通う生徒は、学内で「おい、お前はメキシコへ無料で帰れるんだぜ、喜ぶべきだな」「お前ら不法入国者は、メキシコに帰れ」といったヒスパニック系に対する罵声をいくつも耳にしたそうだ。

グラナイト学区の教育関係者は「幼稚園から高校まで多くの生徒が、差別的な発言を受けたと報告されています」と話しており、調査を進めているとのことだ。

・性的マイノリティに対する差別行為も

同性愛者など性的マイノリティに対する嫌がらせも、多数起こっているもよう。『NY Daily News』のライター、ショーン・キングさんがツイートしたところによると、ある車に「お前たちの “結婚” が、本物の大統領によってひっくり返されるのが待ちきれない」と書かれた脅迫メモが残されていたという。

他の性的マイノリティからも、「知らない人に追いかけられながら “お前はここに住めなくなるぞ!” と何度も叫ばれた」「学校でトランプ支持者の白人男子生徒に取り囲まれ、顔に唾を吐きかけられてホモと呼ばれた」などの体験談がネット上に投稿されている。

・被害のでっち上げ

一方で、被害のでっち上げも起こっている。ルイジアナ大学ラファイエット校の女子生徒が、「トランプの帽子をかぶった白人の男2人組にヒジャブをはぎ取られ、財布を盗まれた」と被害を主張していた。しかし警察が捜査を行ったところ、彼女の主張が噓であることが判明したと『KLFY』を始め複数のメディアが報じている。

トランプ氏は大統領選の勝利スピーチで「分裂を修復し団結するとき」だと述べていたが、社会では差別行為が激しくなっている。けれども選挙中のトランプ氏の発言を考えれば、この現実は何ら不思議なことではないのかもしれない。

参照元:QuartzTeen VogueCBS MinnesotaFox13KLFYVox(英語)、Twitter @ShaunKing
執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24.